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10.淫魔VS.色魔

風呂に入り終え、髪をワシワシと拭きながら


「お待たせ。話の続きするか。」


「ふむ、手短にな。」


なんだか意味深に言葉を切ったオッド。


「あの女を堕天させちまったから、今後どうなるんだ?」


「む、何も変わらんぞ。」


「変わらんって。喧嘩売ったことにはならんのか?お仲間を堕としたことになるだろ。」


ドライヤーで髪を乾かしながら続ける。なんだか疲れてるので、早くベッドに入りたい。


「変わらんものは変わらん。」


オッドの言い草に腹が立った俺はドライヤーをオッドに向ける。


「ぬ!主、よせ!」


「ちゃんと理由説明しろよ?じゃないとヒゲチリにするぞ?」


俺は黒い笑みを浮かべる。本気でやる気は全くない。脅しである。


「やはり主、才能があるぞ?」


クククと笑ってオッドは続ける。


「其奴らの主人(あるじ)は気まぐれだ。其奴らは機嫌を損ねぬようにしているだけで、たまたま其奴は我らに気がついただけであろう。他のが我らを気に止めねば何も起きぬ。」


オッドは俺の周りにいるであろう羽虫扱いのヤツを目で追っている。俺には見えない。オッドの目の動きでどこにいるのか辛うじてわかるが。…猫が何かを一点に見つめてる時って…もしかしらこう言うことなのかなとか思ったりして。

髪を乾かし終わったのでベッドにバスンと倒れ込んだ。


「じゃあ今迄通りってことでいいのか?」


「ふむ。そういえば心の声は役立った様だが、どうする?」


「いや、あれはいいや…。そういえばアイツ付いて来ちゃってるから、オッドとの約束を破ったことになるけど?」


俺はごろりと天井を仰いで、伸びをしながら言う。オッドはベッドに上がって俺のそばで丸くなった。


「今後会うものに使うなという約束か。あぁ、あれはな、昔、主と同じ様に心の声を聞きたいと言ったものがいたので、できる様にしてやった。その後、友人に裏切られたと言って、自らの心を壊してしまったのだ。主にもそうなってもらっては困るからな。別に構わぬ。付いて来ているのも主の意思ではないしな。」


なんだ、そういう訳。つまり、俺の為か。どっかの元天使が天使だった時よりコイツの方が優しく気がする。俺はオッドを抱き寄せてモフモフした。柔らかい。


「主、発情したのか?」


俺はツッコむ元気もなく、オッドを抱いたまま眠りに落ちたのだった。






「…さん?」


俺は暗闇に居た。声がする方を見るとゆうちゃんがいた。そしてゆうちゃんが急に抱きついて来てキスをする。そのキスはどんどん激しさを増す。昂ってしまった俺は手をゆうちゃんの胸元へ伸ばそうとした時、突然声が聞こえた。


「ねぇ?その子誰?」


背後にはゆーちゃんが居た。血の気が引いて行く。


「いや、その、えっと…あの…」


上手く言葉が出てこない。


「私も聞きたいぞ?」


ユウちゃんが仁王立ちで立っていた。あぁもう無理。オートモードに頼ろうと思っても、発動しない。なんでだ?どうして?あぁ、俺は終わった…。ん?終わった?でも、俺は誰とも付き合ってない…しかし、ゆーちゃん達に見損なわれるのは間違いない訳で…あぁぁぁあ!どうしよう!


俺が立ち尽くしていると、3人は消え、くすくすと笑い声が響く。そこには女が立っていた。


「あんたみたいなフツメンにはハーレムなんて無理よ〜♪」


実態のない顔が笑う。羽虫扱いのアイツだ。


「おめーかよ。なんで俺に見える様になってるんだ?」


かなりイラついた俺は吐き捨てるように言う。なんかコイツにはこういう喋りになってしまう。


「あぁ、ここはあんたの夢の中よ。」


「夢?」


「そ。それで、私はどうやら…」


女の姿は俺が好きなグラビアタレントの姿に変わり、俺に深くキスをする。さっき肝の冷える思いをしたので反応は宜しくない…というより…。


「おまえ、ヘタクソだな。」


なんというか、乱暴なのだ。情緒も何もないというか、エロくない。


「な!せっかく淫魔になったのに!タツキとこれでイチャラブする予定だったのに!」


「へぇ。淫魔になったのか。」


「好みの相手になってお相手するのが淫魔だけど…アレ?テクニックは伴わないのかしら?」


「あぁ、そっか。堕ちたばっかだから分からないのか。…ぷっ。」


俺がニヤニヤして見遣ると、変化を解いて悔しそうに俺を睨む女。実態のない顔の癖にコロコロと変わる表情。


「なんつーか、アレだな。表情があればそれなりに可愛く見えるもんなんだな。」


しみじみと顔見ながらいうと、急に赤面しだした。


「な…何を!フツメンの癖に!」


おや…?これはもしかして?俺は薄く微笑んで羽虫、改め、淫魔をみる。


「ちょっとさ、場所を俺の部屋にしてくれよ。それとも残念淫魔にはできないか?」


「それくらい!できるわ!」


淫魔はむくれた顔でひょいっと手を返すと景色は俺の部屋になった。


「はい、よくできました。ご褒美やるよ。」


そういうと乱暴にベッドに押し倒す。どうやらオートモードはきっちり仕事をしていたようだ。もう俺の意識なのかオートモードなのかもはっきりしなくなってきてるのかも。


「淫魔なら淫魔らしく。分かるよな?」


俺はねっとりとキスをして、この淫魔を頂くことにしたのだった。







「今言われたことをすれば、タツキも喜んでくれるかしら?」


淫魔はツヤツヤしながら言う。


「さーなー?タツキさん、謎多いしなー。」


俺はベッドに大の字になってダルそうに答えた。正直タツキさんの好みなどどうでもいい。俺には関係ないもの。


「そうでもないわ?タツキの趣味に勤しむ姿は真剣で素敵なのよ。好きなタイプは賢くて胸が大きい子でね…?」


頰を染めて話はじめた。そんだけ見てて好きなタイプまで調べて…堕天しない方がおかしい。思わずため息を吐く。


「でも、フツメンの割にあんたも悪くないと思ったわ。時々なら相手してやってもいいわよ?」


チラチラこちらを見ながら言う。これってツンデレの一種?


「エロいキスもできない淫魔はいらねぇな。」


俺は何をいうべきか迷ったのだが、冷たく返していた。コイツにはこれくらいの塩対応がいいらしい。いらねぇと言われて傷ついたのか、


「しばらくあんたで練習することに決めたわ!」


むくれ顔でそう言うと俺にキスをする。


「…40点。恥じらうならちゃんと恥じらえよ。中途半端。淫魔だからしょうがねぇのかもしれないけどな。」


「っ〜〜〜!またリベンジしにくるから!」


そう吐き捨てるように言って淫魔は消えて行った。俺は夢の中の俺の部屋で大の字のまま、目を瞑る。


「夢で寝るとどうなるんだ?」


そう呟くと意識が遠くなった。






「主、朝だぞ。」


オッドがふみふみ、ぺろぺろしてくる。


「うぅ。あ゛ーー。めちゃくちゃだりぃ…。」


「ふむ。しょうがなかろう。声を聞く能力はなかなか力を使う上に、どうせあの羽虫と遊んでおったのだろう?主の満足に役立つのなら、あの羽虫もなかなか悪くない。」


オッドは俺の胸の上におすわりして俺を見ていた。心の声を聞くのは力を使うのか。昨日話に聞いたヤツが心を壊したのってそれもあるんじゃないと思いつつ。


「堕天したものすら雌として見るとは、やはり主は面白いな。主の欲望が熟すのが楽しみだ。」


オッドはぺろりと舌舐めずりをしながら、目を妖しく光らせた。なぜ夢で起こったことを知っているのか、それに褒めてねぇよ。重たい身体をなんとか起き上がらせ、ベッドから降りるとオッドは続けた。


「主、まずは我の飯と水だ。風呂はその後にしろ。」


「風呂?」


俺はオッドの視線の先を見る……視線の先には淫魔の相手をした証。うわぁ…。俺は思わず両手で顔を覆いたくなった。なんだかちょー恥ずい。先に風呂に向かおうとする俺の足にオッドはまとわりつきながら、


「我の飯と水が先だ。」


そう喚いていたのだが、


「乾ききる前に先に風呂だ!」


そうまとわりつくオッドをぽいっと投げて、俺は風呂場へ向かったのだった。


今日は金曜日。今日行けば休み。仕事行きたくないけど、いかないと。シャワーは浴びたが、ダルい身体のまま、オッドの餌と水を用意する。猫の癖に行儀よくおすわりをして待っているオッドの姿に思わず、眉間のシワが解ける。しゃがみこみ、餌を食むオッドをぼんやり見つめると思わず笑みすら溢れる。最初にも思ったが、美猫(びびょう)だよな。きっと猫としてモテるんだよな…そういやオッドの身体はメスか。………。


「オッド。大事な話がある。」


「む?なんだ?催淫の練習をするのか?」


「そうだな…って、そうじゃなくて。おまえの器、猫の身体の話だ。」


「どうかしたのか?」


「ベースは普通の猫なんだよな?おまえには性別はないが、器には性別あるよな?猫としてはモテるよな?」


「ふむ。そうであるな。」


餌を食べ終わって、毛づくろいをはじめたオッドはぺろぺろしながら答える。俺は眉間に手を当てて考え込む。どうすべきか。意志疎通できるから伝えるべき内容なのか。いや、でもこのままだと猫ハーレムになってしまうかもしれない。それに、本当は俺のためには器は消滅するのが早い方がいいのかもしれないが、俺はこの1週間ちょっとでこの猫にちょっと…いや、かなり愛着がある。長く生きて欲しい。そう思っていたから。


「そのままだとおまえをここに置くのが無理になる。医者に診てもらって、その…身体のチェックをしてもらう。今日は早く帰って、おまえの病院に行く。わかったな。」


「この器のことは主の方が知っているようだから、主に任せよう。」


俺は飼い主の義務を果たすことにした。いや、大事なことはだいぶ伏せたけど。多分注射とか色々されるんだけど。オッドも痛がったり、嫌がったりするんだろうか?想像するとなんだか苦笑いしか出ない。時計を見るとそろそろ出る時間だった。


「やっべ!!」


俺はバタバタと支度をして、


「うっし!オッド、行ってくる!」


「むっ。」


ワシャワシャとちょっと乱暴にオッドを撫でると、家を出発したのだった。俺は身体がダルかったことなどすっかり忘れていた。

読んでくださってありがとうございます!次回オッドさん、病院に行く、です。15話で終わらせる気?もちろんありますよ?4000字の感覚が掴めてないだけで。

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