表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/11

色々あったらしいよ。

感想、ご指摘ありがとうございます。

いくつか家電製品についてのご質問がありますが…。エンバコ、あれ確かにオーブンだよな、だがしかし、再度温めるって電子レンジの機能だよな…?多分。

…、エンバコは高機能電子レンジ(オーブンも出来るやつ)、現在開発中のあれは冷凍庫にします。これ以上はもう無理です…。(´・ω・`)

ご指摘くださった方々、ありがとうございましたm(_ _)m


(感想拝読後)


オーブンレンジ…だと…(・_・;

…。

再度修正入れます(^-^;)

…もうないよな…。(´・ω・`)


あ、あとラストのセリフご指摘により変更しました。

 私のわかりやすいあてこすりに再度宰相子息は何か言いたげに口を開閉したが、結局何も出てこなかった。陸に上がった死にかけの魚みたいに無様だった。


 対して王子は冷静だった。

 全ての罪を認めた粛々とした態度は殉教者のような、ある種の清々しさを感じさせた。


「全くだな。・・・そなたを追放した後、私はほぼ直後にクレア嬢にプロポーズした。これで彼女を妻にできる下地ができたものも同然だと思った。彼女は喜んで承諾し、あの場にいた者たちも表面上は祝福し、彼女が王子妃になれるよう根回ししてくれた。

 ・・・今の彼女は伯爵家の養女ということになっている。あの場にいた、ラーグ伯爵の三男が、家人を説得してそうさせたのだ」


 そうだ。確かにそれは正式に発表されたことだから私も知っている。

 ラーグ伯爵家は何を考えたのだろう。

 大方、王族の縁戚になれるという目の前の御馳走に逆らえなかったのだろう。


「そうして彼女は私の正式な婚約者になり、後宮で母上に妃教育を師事させていただくことになった。・・・しかし」


 王子はすっと自身の側近に目を向けた。

 彼の口からも語れと言うことなのだろう。


 宰相子息――リチャード・シアーズは躊躇いながらも重い口を開いた。


「・・・クレア嬢が正式に殿下の婚約者になり、私もいくらか現実を見るようになりました。・・・彼女と結ばれることは叶わなかった。それでも、生涯お仕えすると決めていた王子殿下なら仕方ないと、むしろ真に忠実な臣下を名乗るならば、喜ぶべきだと。

 そして私は宰相を任じられた侯爵家の者としての責務をこなし、その一環として婚約者を迎え入れることになりました」


「あなたはそれに納得したのですか?」


 口をはさむべきでないとはわかっていた。それでもどうしても聞きたかった。本気の恋を知った後に、政略結婚を受け入れられたのかと。

 宰相子息は初めて笑みを見せた。

 自嘲と、寂しさを含んだ笑みだった。


「私は確かに一人の男として彼女を慕った。しかし民草のために尽くすという貴族本来の義務を自覚させてくれたのも彼女だった。恋が破れた今、せめて彼女に教わったことを生かすのが、私なりのけじめだったんだ」


 私はリチャード・シアーズのストーリーを思い出した。

 幼いころから厳しい家の中で抑圧され、常に優秀な兄と比べられ、いつしか両親から与えられる評価がすべてで、何を目指して生きていけばいいのかわからず、枯れた心を持って生きていた宰相子息。

 しかしそれをヒロインが解きほぐすのだ。真に大切なのは両親から与えられる数値化された評価ではない。自分にできることで、どれだけ貴族として領民を――国民を幸せにできるたかということだと。


 私は何といえばいいのかわからなかった。前世ではそれなりにしんみりと同情して、ヒロインだけに見せるようになった子供のように無邪気な微笑みに歓声を上げるだけだった。

 けれどこうしてリアルに存在し、今まさに等身大の彼の姿を見せつけられると、何とも言えず切ない気持ちになったのも確かなのだ。

 同時に私はそんな気持ちになれることに・・・存外自分に余裕があることに気付いた。


 やっぱり、隣に仲間がいてくれてよかった。仲間として認められる自分になれてよかった。


「他の皆もそうだった。クレアは私たちの心に在ったわだかまりを失くしてくれた。せめてその献身に見合う働きをするのが、自分たちのすべきことだと前向きになれた」


 私を追い詰めて生贄にしながら自分たちは前向きに未来を歩み始めていたんですね、それは献身じゃなくて逆ハーレムルート完遂のための利己的な行動だったんですよ、という気持ちもあった。けれど今は言わなかった。

 今言っても意味がないし、いちいち突っかかるような姿をアーネストさんとデュークさんに見られたくなかった。


「しかし、クレア嬢は納得しなかった」


 王子は目を細める。何もない闇を見ているような、暗い瞳だった。


 今更だが私は王子が自分の婚約者をクレア嬢、という他人行儀な呼び方をしていることに気付いた。


「彼女は彼らがそれぞれの人生を歩み始めることに納得しなかった。それぞれ婚約者があてがわれ、結婚の日取りが決まった者もいる。・・・あれはセルヴァス子爵の長男の、結婚式の日取りが発表された時のことだった。彼女はいきなり血相を変えて叫んだ。なぜ、私を愛していると言ったのに、と」


「あの方は・・・クレア嬢は真に王子殿下を愛していたわけでは無かった。私たちの中のだれも愛していなかった。ただちやほやしてくれる男たちが欲しくて、その男の価値が高ければ高いほど良いという理由だけで我々に近づいたに過ぎなかった」


 宰相子息が言葉を継いだ。それは王子にとって最も悲しいことを本人に言わせないがための配慮だったのかもしれない。

 私にはわからない。自分で言うのと、他人に言われるのと、どちらがよりつらいか。


「・・・それからクレア嬢はおかしくなっていった。妃教育もそっちのけで必死にあの時のメンバーとコンタクトを取ろうとした。皆、最初は次期王子妃の思し召しということで従っていたが、彼女に会うたびに自分を愛していたのでは、と問いつめられて流石に距離を置くようになった。しかし・・・」


 王子は何か耐え難いものを堪えるように片手で目元を覆った。

 深く息を吐き、その手を外すと、重苦しい声で言った。


「・・・ジョーンズ男爵家の長男が婚約破棄をしたのだ」


「・・・おいおい」


 合いの手を入れたのは驚いたことにデュークさんだった。そういえば、と私はこの人が大貴族の生まれであったことを思い出した。


 婚約――しかも嫡子の。それを破棄した。


「勘当されても文句は言えませんね」


 そう冷静に分析したのはアーネストさん。相変わらず翡翠色の瞳に皮肉気な表情を浮かべている。

 その言葉は恐ろしく正確に的を射ていた。


「ああ。実際、そうなりかけたらしい」


「なりかけた?」


「これは王子妃の御意向だ、とかなんとか言って、家族の方も事情がうまくつかめなかったようでな。下手に追い出すよりはしばらく手元に置いて様子見することにしたらしい。・・・王子妃などとは気の早いことだが。それは置いておくにしても、長男とクレア嬢は密にコンタクトを交わしていたのは確かだ。

 ・・・その中で、何をしていたか。詳しくはまだわからんが、私の婚約者としてあるまじきことであるとだけは、わかる」


 王子はひんやりとした微笑を浮かべた。どことなく自棄になっているようにも見える。


「私はこうなってようやくわかった。あの時学院の皆が言っていたことこそ真実だと。私は――私たちは愚かな道化だったと。嫌、道化以下だな。愚かということすら理解せずに、ただ踊らされていた」


 ここで一区切りついたらしく、王子は冷え切った紅茶を口に含んだ。私も口の中が乾いているのを感じた。


 私の感想としてはやはり、今更というのと、なるほどというものだった。

 逆ハーレム。乙女の夢のイケメンパラダイス。

 そんな都合のいいもの、あるわけがないのだ。

 既にクレア嬢は一人の人間の婚約者。人妻になることが決定している身だ。しかも王族の。

 そんな人間に手を出してみろ。

 死刑台に直行だ。

 これが、現実に無理やり乙女ゲームのバカげたルートを再現させた、当然の結末。


「それで、我々にどうしろと?」


 温度を感じさせない、けれどやはりどこか強張った口調でアーネストさんが今回の核心を突いた。


 王子は恐いぐらいの真顔で言った。


「リチャードに不貞行為の疑いがかかっている。それを晴らしたい」


王子どもの登場する回は鬱っぽいです。

でもまだ続くよ(´・ω・`)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ