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ようこそ。異世界へ! 吸血鬼になれるの?

昭和に行きつけない。小説中の進行で三日くらい待って下さい。仕事の関係で時間がとれなく時間が空きました。御免なさい。

翌朝、屋敷の居間で朝食を兼ねての会議でのこと。

「おはよう。クリスちゃん」

「おはようございます。ヴィクトリーヌさん」

「今日は、レイラさんはお休みなの?」

「ええ、昨日の一件で準備を早めなければ。と研究棟に引きこもっています。あんなのを見せられて免疫がないのにショックだったのでしょう」

口元は笑っているが目が真剣だ。

クリスは、顔の色艶は良い。ヴィクトリーヌと裕也と、昨日、二度に良質の“気”を得たからだ。一方のヴィクトリーヌも血を吸い、血を与えることを繰り返したことで疲労はしていたが、こちらも血色は良い。

「昨日は、淫らなことになってしまって失礼しました」

最後でブラジャーを外されピンクの突起部分をユウヤの舌で弄ばれ、乳房で吸血行為をされた時の感覚が残っている。

「いいえ、気にしないで下さい。それで同属化は?」

「同属化は出来ていますよ。能力は移し終えていますが使用できる状態ではありません。ユウヤさんは寝ていますね。そう簡単に起きられないでしょう。上位の固有能力を与えたのですから体の負担の大きいのですから意識が朦朧となっているでしょう」

ヴィクトリーヌは生まれて初めての経験をした。上位に位置する吸血鬼には屈服ということはない。ここの固体が完璧に独立した存在だから。まして最高位に属する彼女は如何なる時もあるじであり続けなければならない。それが短い時間であっても行動が制限されたのだ。

「ええ、真弓からの報告では心身と異常はなく眠っているとのことです。ヴィクトリーヌさんも昨晩は十分に寝たでしょう?」

ヴィクトリーヌにとって昨晩は悲惨だった。体が“芯”から熱を持ち、裕也に噛まれた乳房と太ももにその感触が消えなかった。

「ええ、少し疲れましたけどベッドに横になると疲れも取れて普段どおりです」

「そう。それは良かったわね」

クリスはヴィクトリーヌの口調から、ヴィクトリーヌはクリスの口調から、それぞれ違和感を覚えたが、そのことを無視した。

「それでユウヤ伯爵に固有能力を定着させないとならないし、その使い方を覚えさせたいの。」

ヴィクトリーヌの顔が赤い。

「良いですよ。固有能力を上手く使わなければならないでしょうから。協力するわ」

「協力なんて迷惑でしょうから。それより“忌まわしき出来事”の対応が大事です」

「ああ、それね。男爵からの定例報告があり、新たな被害は無いそうよ。安心して」

「そう、被害は収まったのね。よかった。それじゃ、時間遡及の準備に専念できますね。早急に練習を始めた方が良いでしょう」

「そうね。昨日、レイラが報告する予定だった計画も裕也伯爵を交えての話し合いもあることだし。能力の定着が先でしょう。その結果、練習内容を決めましょう」

「わかったわ。じゃあ、決まりね。それにしてもユウヤ伯爵って何者なの。自分で言うのもおかしいけど、最高位に属する私が同属化に手間取るし、それ以前の眷属化も完璧に出来なかったわ。最大限の力を使ってしまったわ」

クリスも同じ事を思っていた。昨夜のように淫らな状況にも関わらず、二人からあふれ出てくる“気”は純粋でお互いが相手を喜ばせようと気持ちが感じられ、自己の欲望を満たす“邪気”は全く無かった。

「裕也さんには伯爵としての“竜神”の加護を超えた力があるかも」

「そうね。加護を受けているのは間違いないのよ。だから、クリスちゃんの力でも心の中を見ることが出来ないのだから」

「そうなのよ。私が知っている限り加護があるなら許可無く心の中に入り込めないのよね。裕也さんも当然、心に入り込めないわ」

「でも、“気”は感じられるのでしょ」

「ええ、そうよ。裕也さんの場合は漏れ出ているのよ。不思議ね」



昨夜のこと。

「食事はいらんよ。お腹はヴィクトリーヌのおかげで一杯やから」

部屋に戻るなりアンナに真っ赤な顔でベッドに私服のままで倒れこんだ。

「アンナちゃん。ごめんや、靴とズボンを脱がせてくれへんか」

アンナにとって初めて聞く言葉使いだがおよそ意味が理解できる。ただ、状況が理解できない。男爵であった獣人と市井で生活していたエルフを父母とするアンナの固有能力は普通の水準だ。だが父母のそれぞれの特性を有している。獣人の特性の瞬発力と嗅覚がある。普段は裕也から父親のような安心感を与えてくれる匂いに混じってメスの匂いがある。その匂いの正体はすぐにヴィクトリーヌとわかった。

「ご主人さま。少し酔っていますね」

「酔ってへんで。とにかく、早いとこお願いや。」

「はい。申し訳ございませんがベッドに腰を掛けて下さい」

「こうか?これでええんか?」

「はい、では失礼します」

ヴィクトリーヌとの吸血行為のやり取りで汗を含んだ靴とズボンを脱がし終える。

 ご主人様の様子が明らかに違う。いまだ状況が飲み込めないが世話係りとして仕えるだけなら支障は無い。侍女や使用人は命令に服従するだけで良いからだ。しかし、このユウヤ伯爵は今までの貴族とは違う価値観を有している。その価値観に自らを賭けてみようと考えていた。身も心も。

「上も汗で濡れています。お取替えします」

「ええよ、お願いや」

 アンナは『お取替えします』と言ったものの今の位置では脱がせられない。

「申し訳ございませんがお立ち下さいませんと出来ないのですが」

「んぅー。無理!無理や。やりたいようにしたら、ええよ」

裕也はベッドに寝転び、その状況にアンナは困惑し、オロオロとなる。

「起きてください。お願いします」

「無理。アンナちゃん、言ってるやろ。自由にしてかめへんから」

 アンナは『構わない』という意味を『噛まない』と訳してしまった。アンナは、ヴィクトリーヌと裕也伯爵との間で“契約”が交わされ裕也伯爵が吸血鬼となっていたら。と思うと背筋が寒くなった。だが、目の前で汗まみれでいる裕也を無視することは出来なかった。

「自由にさせていただきます。『かめへん』という言葉を信じますよ」

「おぅ、信じてや」

「はい、失礼します」

アンナは裕也の手を引っ張って体を起こすと体を入れ替えお姫様だっこで浴室の運び、全ての着衣を取り払った。片手で裕也を支えシャワーのコックをひねると温度を低めであるのを確かめ、裕也と一緒にお湯を浴びる。服を通して下着も濡れるが気にしてはいない。

 裕也は徐々に意識がはっきりしていく自覚がある。アンナとのやり取りや自分より小さな体のアンナに抱っこされたことの記憶が戻ってくるとともに全裸のままの裕也は濡れた着衣のままのアンナによってシャワーを浴びさせてもらっている状況が理解できた。

「ありがとう。アンナさん。迷惑をかけたな。もう、大丈夫だから支えはいらない」

ここで、あわてて前を隠すとか恥ずかしがるとアンナがそれ以上に羞恥心を持つだろう。まずは当然の行いをしたことで褒めるべきだ。

「いえ、ユウヤさまのお許しがあって、自由にさせていただきました」

「それで良い。気分も多少だが良くなった」

それにしてもアンナの全身が酷いことになっている。薄い生地のワンピースは濡れて下着を浮き上がらせている。

「アンナ。そのままでは風邪をひくぞ」

「いえ、大丈夫でございます。奴婢の時は冬でも井戸水で体を清めていましたし、獣人の血を持つ身です。風邪などは……」

「そうか、わかった。仕方がない」

「はい、風邪などはひきませんのでご安心ください」

「決して動くな。命令だ」

裕也はアンナの後ろに回り背中の止め具を外すとワンピースが水の重みでストンと落ちた。キョトンとし固まるが、そのまま、シャワーの温度を少し上げアンナの頭から浴びせる。すると、彼女の体に一見では気が付かない小さな傷が幾つか浮き上がった。それを無視してシャンプーをかけると優しく髪を絡ませないように洗った。

アンナは裕也がおかしな行為に及ぶことはないと信じようとしている。しかし、過去の様々な経験から男の汚い一面も知っていた。当然、裕也が娼館に入り、やるべきことを行ったことも。それでも、近い将来に裕也の愛妾に加わることを期待している。

「ご主人さま。お手を汚します。わたしのような下賎なものを」

「下賎?奴隷出身だから」

「そうです。奴隷出身もありますし、お世話係りという身分も理由です」

「奴隷だから俺が穢れるんか?ほなら、娼館で娼婦と肌を重ねてきたんやけど俺は穢れているんかいな」

「公娼の方々は領主様から庇護を受けている立派な職業です。しかし、身分では奴隷、またはそれに近い人々です。私も、職業としての世話係りです。だから、ご主人様に触れることができますが、ご主人様が使用人ましてや奴婢を気遣うことはあっても世話することはありえません。」

「そんなら、アンナは仕事やから俺をしょうがなく世話しているんか」

「ユウヤ伯爵様にお仕えすることは光栄の極みです。それゆえ誠心誠意尽くしています」

「だろ。ほんなら、その誠心誠意に対し虚心坦懐に応えるんが主人とちゃうんか。世話人として主人を慮るなら、その逆もあってええで。もっとも髪は女の命とも言うやろ、こんなオッサンに触られるのが嫌なら言うてや。ほんまやったら下着も取って体も洗ってあげたいけどな。ハハハ」

「ご主人様に……あら、洗って、ほ、欲しいです。体を洗って下さいますか」

小声でアンナは言う。

「えっと」

「失礼しました。今の言葉は身の程を弁えていませんでした」

「いや、洗って欲しいんか。遠慮はいらへん」

「いえ、お手を煩わすなど」

「ええよ。さすがに下着は自分で取ってくれへん」

「恥ずかしいですぅ……」

上目使いで裕也を見る。その目が怪訝な表情に変化した。

「ご主人様、誰かお客様です。ノックしています。ちょっと失礼します」

アンナは、唖然とする裕也に一礼すると素早く濡れた下着を脱ぎ棚から予備のバスローブを引っ掛け出て行った。


 アンナは浴室から出るとワンピースだけを着て扉に前に進んだ。

「はい、どちらさまでしょうか」

可能な限り事務的に声をだす。

「見習い医療士の真弓でございます。クリス様の指示により伯爵様のお加減を診るようにお伺いいたしました」

「分かりました。しかし、伯爵は入浴中の為、暫らくお待ち頂くことになります。暫らくして来られること良いかと……」

「それなら、風呂上りに脈を取らせていただきたいので、このまま待ちます」

「伯爵に今の趣旨を伝えたいので、そのままお待ちください」

 

 真弓は暫らく待つと扉が開きアンナの姿が見えた。髪の毛が濡れ、薄いワンピースは明らかに下着を着けていないことを主張している。一瞬の戸惑いがあったが冷静に対処できた。

「どうぞこちらへ」

アンナのいかにも使用人であるという声に従って部屋に入りソファに勧められるまま座った。当のアンナは「主人の世話があります」といなくなった。真弓は仕方なく部屋を観察すると絨毯に濡れた足跡が使用人の控え室まで残っていた。ベッドのシーツは乱れてはいないし、ソファも使用した様子は無い。アンナの濡れた髪、下着をつけていない状況などから想像しようとした時に浴室から声が漏れてきた。

「ご主人様。右手は他人ですか?そういうことは私を使ってください。その様なことも私の役目ですから何でもいたします。先程の続きもです」

暫らくして扉が開きバスローブ姿の裕也が現れた。

「いらっしゃい。真弓さん、内容は理解していますよ」

真弓とは一度だけ脈を取ってもらったことがありお互いの顔は覚えている。

「はい。では、脈を診させていただきます」

右手首に指を当てる。

「風呂上りですから脈は早いですね。熱もその関係で高そうです。あとで、もう一度お願いします」

裕也はせいぜい中学生程度の女の子の医療行為であったが不安は無く“お医者さんごっこ”が、また始まったような気持ちだった。

「お口をあけてください」

言われたとおり口をあける裕也に百円ショップの懐中電灯を当てる。

「吸血用の牙はありません。口蓋こうがいにも異常はありません。続いて目の検査です」

 やがて真弓は、聴力と嗅覚の検査も終える。

「伯爵様、明日にヴィクトリーヌ様より最後の儀式が行われます。それにより吸血鬼としての能力が覚醒いたします。可能な限り過激な振る舞いは自重するようにお願いします。沈静効果がある飲み物を処方しますので今すぐにお飲みください」

 裕也がそれを飲み終えベッドで横になり、眠りにつくのをアンナと真弓が確認すると、二人は両手を握り合い振り回すように握手をした。

「わあ、元気そうですね。アンナお姉さま。突然、高級貴族に下賜かしされたって聞いて心配していたのですぅ」

「本当は一時的に伯爵の世話をするのだったけど、偶然にユウヤ伯爵に所有権が移ってね。運が良かっただけよ」

「じゃあ、奴婢から平民になったのね」

「ううん、戸籍上は奴隷に戻ってしまった状態なの。『忌まわしき出来事』の為に戸籍の書き換えができないもん」

「奴隷って、“神の庇護”を利用して慰み者にする貴族も多いって聞くけど、まさか、さっきの裸は……」

「ああ、大丈夫よ。あれは入浴の世話で偶然よ。裕也伯爵は、私のことを娘みたいに考えているみたい。奴隷なんて思っていないの」

「へえ、地上の人ってかわっているぅ」

「こっちの法律には疎いって言ったし、地上の慣習で行動するから、間違っていたら教えてくれ。とも言ってたわ。」

「奴婢から教えてもらうって変なの」

「伯爵の考え方は、多分、こちらの法や慣習には従うのが当然なのでしょう。その上で、地上の法律と比べて按配あんばいの良いところを探しているみたいなの」

「ああ、わかります。クリス様が言ってました。伯爵様は、真面目で人が良いし悪意を持っての行動はしないので安心して脈を診るように。って」

「うんうん、もの凄く安心感を与えてくれるのよ。不思議ね


 そうこうしていると真弓が伯爵の脈を診る時間になった。

「脈拍は早めで、熱が下がっていませんが想定内です。心配は要りません。アンナ姉さま。出来れば明日の朝まで伯爵に付き添って良いですか。クリス様からのお願いでもありますので」

「良いわよ。眠たくなったら、私の控え室で寝てね。本当に大丈夫なの?」

「はい、安心してください。明日、提出する伯爵の報告書を書かないと」

不安そうにアンナが裕也を見つめる。




読んでくださってありがとうございます。

感想は当然ですが、誤字などの指摘、ご意見があればお願いします。

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