柳恵那―11
「なにか俺に言いたいことがあんだろ? こんな言い方したら、喋ろって言ってるみたいだな。無理に喋らなくてもいいから。で、何?」
うん。そうだ。私はその為にここに来たんだから。どうしよう。黙ってたら、泰午君に悪い。泰午君にばかり喋らせて。やっぱり、私も言葉で告白しないと駄目なんじゃ……
え。待って。どこ行くの?
これ、ついて行って良いのかな? もう泰午君、帰るつもりなんじゃ……私がさっさと伝えないから。どうなのかな?
私、無視されてる? さっきまで普通に話してたのに……
泰午君、まるで独りで歩いているみたい。でも、普段もこうかもしれないじゃない。何人かで一緒にいると、自然と誰かがグループの先頭になる。きっとみんな泰午君についていくと思う。泰午君は、私がついて来るって当り前の事のように考えているんだ。そういう目で見ると、泰午君は一度も振り返らないけど、私がついて来れるようにゆっくりぶらぶら歩いているし。もう直ぐに帰るとかどこかへ行こうとしているとか、目的を持った足取りじゃない。そう考えると、安心して泰午君の背中を追いかけていられる。それだけで何だか楽しい。今日はこれだけで良いかもって思ってしまう。
私はひとり恋人気分に浸って、この時間を楽しんでいるのであった。後に控える重大な告白に胸をどきどきさせながら……
泰午君はどこまで歩いていくつもりだろう。
こんなのできてたんだ。知らない内にできているビル。あんまりここら辺、来ないからなあ。だって、この辺りはカップルばっかりで独りで歩いてたら寂し過ぎ。泰午君、何を見ているんだろう。人がまばらな所でもカップルはいる。不意打ちみたいに目立たない階段の隅っこの方にひっついて座っていたり。
泰午君。
私が口を開くのを待っている? 喋ろとは言ってないんだけど。どこまで歩いていくのかな? と思っていた泰午君が、何もないというか自動販売機とカップルしかいないビルの裏手で立ち止まったのは、やっぱり私が用事を切り出すのを待ってくれているからだと思う。あまり人目につく所だと私が喋りにくいって思ってくれたのかも。嬉しい。
言わないと。
ああ、勇気をください。
取り敢えず、手紙。せっかく書いたこの手紙を渡そう。
目の前で読まれるなんて……考えてなかった。やばい。
何か言いたい。言いたくてたまらない。
「き――えっと……あ、あの……」
やばいどうしようもうこっち見てないし。焦る焦る。
「好きです! 好きです! 泰午君の言葉、とか……凄い好きで……えっと」
も……死にたい。目を合わせられない。




