始まりの反乱
初オリジナルです。
これは4000年前の出来事・・・・・・・
まだ人類が確かな文明などを持っていなかった時代で『神』と『天使』が人に知恵とお告げを与えていた頃、天使の住まう世界で本来とは違う出来事が起きてしまう
『天界』
そこは天使が集うといわれる神聖な世界。
どこまでも続く雲に浮かぶ神殿からは眩い光が漏れているがその中では・・・・・
「まったく、悪人を裁くのは天使としてはキツイものですね」
純白の羽をもった体中に目玉や口を付けた天使、アズライルは神殿の中で巨大な石板に裁いた人間の数路掘っていた。彼は天使にしては醜い姿のためこうして他の天使がし難い人の裁きを務めている。
「他の四大天使たちは私にこの仕事を押し付けるのを遠慮していますが・・・・彼らがやったら全員天国行きにしそうですし・・・・おや?」
石板を片付けようとすると書庫に入ったアズライルはあるものを見つける。
それは石板と石板の間に挟まっている黒い布きれ・・・・・・傍から見ればただのボロ布だがその時、アズライルには何とも言えないオーラを放っているように見えた。
「なんですかね?なんかものすごく古臭そうに見えますが・・・・・・」
不審に思い手にすると・・・・・布が腕を掴んできた。それは言葉通りに布だったのにまるで人の腕のような形になりアズライルの腕を掴んだのだ。突然の事に動揺するがその間も布は徐々に人の形に変わってゆく。
「これは!・・・まさか、伝書にあった・・・・」
『・・・・ヨク二シズメ』
飲み込まれるような声を最後にアズライルの純白の羽が一枚、落ちて行った。
ところ変わって巨大な中央神殿には二人の男女の天使が優雅に雑談していた。
「もうそろそろ人たちには『秩序』を作り出せますわね」
「そうだな。これで悪の道に走る人間も減ってくれるかもしれないな」
「そうしたらアズライルさんの仕事も減りますわね♪」
女性の天使は嬉しそうに微笑む。彼女は同じ天使であるアズライルに気の重い仕事をさせるのをよく思っていないからだ。
「ああ、これからはまた四人で・・・」
「四人でなんですか?」
声とともに神殿の一部に穴が開き、そこから稲妻が降り注いだ。
稲妻はまっすぐに女性天使の足元に直撃する。その風圧により女性天使の羽をまき散らし場がら吹き飛ばす。
「きゃああああああああっ!!」
「くっ・・・・・ガブリエル!」
六枚の羽をもつ女性天使が悲鳴を上げながら倒れてゆく。それを助けようと男性の天使が駆けつけるがその前に光の矢が降り注ぎ進行を妨げる。
「おまえ・・・・・!」
「驚いた顔して・・・・そんなにこの鎧が似合いませんか」
天使が見つめる先には黒い鎧を身に着けた天使・・・・・
しかしその翼は漆黒に染まっておりその右手には赤い電流を流す剣を携えている。
「アズライル・・・いや、それよりお前のその鎧は・・まさか」
「そうですか。伝書を読まないあなたでも・・・・恐れていませんか?ミカエル」
アズライルと呼ばれた黒羽の天使は持っている剣を天に掲げる。それに応えてか剣に宿っている赤い雷がガブリエルと呼ばれた女性天使を貫いた。
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「ガブリエルっ!!・・・・キサマ、同じ熾天使を裁くなど許されるとおもっているのか!!」
「するされるとは思っておりませんよ。もっとも・・・逆に裁かれるのもいやですから・・・」
今度はミカエルに剣を向けるアズライル。だが雷が彼を貫く前にどこからともなく天秤を取り出し、雷を打ち消した。
「・・・やはり『裁きの雷』ではその天器『命量る天秤』に通じませんか」
「・・・キサマの罪は重い。四大天使ミカエルの名により、アズライルの罪を図りたまえ!」
アズライルの胸から赤い光が放出される。
すると天秤の片方に自らの羽を一枚置き、アズライルの右胸から出てきた赤い光がもう片方に乗せられる。
罪人の魂と真実の羽の重さを比べ羽より重いならそのまま魂に裁きを与える天器が・・・・
「なっ!?・・・・」
傾いたのは・・・・真実の羽の方だった。しかも羽は徐々に黒く変色し始めアズライルの魂はそのまま戻っていき天秤は粉々に砕けてしまった。
それだけではない・・・砕けた破片がアズライルの左腕に集まり、黒い天秤へと再構成されたのだ。
「どういうことだ・・・・その鎧はまさか!?」
「その通りですよ。この鎧はすべての神器を総べようとした最初の堕天使が所持していた天器・・・・ですよ」
「なら・・・・・俺自身で裁く!」
腰に携えていた剣を構え、六枚の羽を展開しアズライルの上を取ろうとする。しかし、それを読んでか剣を上に掲げて雷を放ちミカエルを打ち落とす。
それに対してミカエルも雷を放つが剣が勝手に粉々に砕けたのだ。
「なに・・・・・」
「無駄ですよ。今のあなたでは神より授かった力は使えません。なぜなら怒りで本来の使い道を誤れば剣は砕けますから」
「・・・何をたくらんでいる。四大天使でありながら堕天するなど・・・」
「そんなの簡単ですよ。理由はともかく自分がどんな天使かわかっているでしょ?」
「ああ・・・死の天使!だがそれは罪人を裁くだけのはずだ!!」
「そうです!だから今度は真面目な天使を狩りとってみたかったんですよっ!!」
叫びと同時に剣から大量の雷が大放出され、神殿ごとミカエルを貫いた。その一撃でミカエルは黒こげになり神殿は崩壊する。そんな神殿からアズライルは外に飛び出した。
「さて・・・・これで二人ですか。お次はイスラフィルですが・・・・たしか神界に出張でしたね。いやはや・・・呼び戻すのがいいですね」
先ほどまでのミカエルとの戦いに何も感じていないのかすぐに次の事に切り替えると黒くなった『命量る天秤』を掲げる。黒く輝くと一筋の赤い光が空に向かって突き進んでいく・・・・・
神界
本来は神だけが存在する世界で他の世界とは完全に拒絶されているが神の許可がありれば一部の天使が入界を許されるのだ。
そんな世界で三人の神々の前で笛を吹きながら踊っている天使の姿があった。
「♪~♪♪♪」
「ふむ・・・やはりイスラフィルの音色は和む」
「おじさん臭いぜ。見た目は青年なのによ~」
「・・・・」
その音色を聴いているのは神々の中でも頂点に立つ神々の王オーディーン・巨神トール・虚神ロキ
普段の仕事の疲れを癒すために300年に1度、このようにイスラフィルの笛を聞いているのだ。そのうちの二人、ロキとトールは人の姿に変えており普通の人間にはあきらかに大きすぎる腰掛けに座っている。オーディーンは普段の姿で座っており軽く目を閉じて眠っているようだ。
「・・・・なあ、今ならラクガキしていいかもしれねえぞ」
「バカか、後で半殺しだ・・・特に髭をいじると」
「必殺!『刹那の悪戯』!!」
ここで説明しておくが神々には神器を持たずに自らの神力と呼ばれるもので力を発揮できる。ロキが持つ固有神力の一つがこの『刹那の悪戯』である。これは一秒よりさらに早い時間、刹那の間に対象にラクガキするという目くらまし技である。しかし・・・・・
「・・・・・むん!」
「ぎゃあああああっ!」
オーディーンの神力『予知の眼』の前では先読みされるのでいつも返り討ちにあう。今のはハエを叩き落とす要領でロキを打ち落とし、さらに巨大な平手打ちを食らわせた。
それなのにオーディーンは目を開けようともせず静かに音色を聴いている。
「てめえ・・・・もっと思いを込めてから叩けよ!虫みたいな気分じゃねえか!!」
「実際にお前は虫みたいにうざいだろ」
「トールもかよ!だったら今度は本気の本気でラクガキを・・・・」
「きょあああああああああああああっ!!」
「「「!!」」」
突然の悲鳴。先ほどまで笛を吹いていたイスラフィルの首筋に一筋の赤い光が突き刺さり徐々に下へと引きずられていく。その瞬間オーディーンが目を開き、すかさず地面に向かって右手を突っ込んだ。
「トール、天界への門を開くのだ!」
「あいよ・・・・ミョルニル!!」
トールはどこからともなく歪な相槌を取り出し、地面に向かって振り下ろす。すると地面に亀裂が走り、巨大な門が出現したのである。
「ロキ、天界に存在する者を探しだすんじゃ」
「言われなくとも!」
人の姿のまま、ロキは門を通り天界へ向かった。それを見計らいオーディーンは突っ込んでいた右手を引き抜く・・・・・・
その手には先ほどまでイスラフィルが吹いていた笛が握られていた。
「・・・・天界で何が起きている・・・・・」
天界へと降り立ったロキが見たのは神殿が破壊され、天使たちの死体が転がっている光景だった。
さすがの悪戯の神もこの光景には吐き気を催すがそれどころではなかった。四大天使が居た神殿あたりに目をやると黒い翼の天使らしき者に白い羽の天使、イスラフィルが首を絞められていた。
「が・・・がはっ!?」
「・・・・さあ、死んでみてください。華麗に!!」
絞めている首を離すと一瞬で赤い雷を宿した剣を天に掲げ、稲妻を落とした。それによりイスラフィルは無残にも黒こげになってしまう。それを見てロキは怒りで顔を歪めた。
「き、キサマああああああああああああっ!!」
「ん?・・・・誰ですか」
普段の姿ではなく人の姿のロキを神と認識できなかったアズライルは何の躊躇いもなく、剣を突きつけるがそれは軽く砕けてしまう。
「なんです・・・って」
「神に刃を向ければどうなるか・・・それぐらいわかってんだろ!」
困惑しているアズライルをよそにロキは右ブローを決め、さらに空中かかと落としを浴びせる。その衝撃は凄まじく、ギリギリ崩れなかった神殿がすべて崩れ去ってゆき黒い鎧にも亀裂が走った。
「・・・・なるほどですか。あなたは神なのですか・・・・・・それでしたら興味がわきます。あなたはどんな風に朽ちていくんでしょうね」
「知るか・・・・俺は今、500年ぶりに怒り心頭してんだ」
瓦礫にめり込んでいるアズライルに向かって近くの瓦礫を投げつける。それに対して命中する前にその場から離れるが翼を広げる前にロキが懐に入り、膝蹴りを決める。それで耐久力を超えたのか鎧の胴部分に巨大な亀裂が走り粉々に砕けてゆく。
「がはっ!!・・・・」
「他の天使も惨殺したのなら・・・・お前の罪は死より恐ろしいものに落としてやる・・・
虚神、ロキの名により
永遠の屈辱と憎悪に焼かれ
生きてゆくがいい
『大罪の断罪』 」
ロキの言葉によってアズライルは一瞬で黒炎に包まれる。しかし、どんなに焼かれても火傷の一つもなくただただ熱さと痛みだけが走るのみ・・・・
「これ・・・が・・・・永遠の苦し・・・みで・・・」
「・・・残念ながら俺にできんのはこうしてオーディーンが来るまでの時間稼ぎしかできねぇ。 そろそろ来るだろー」
「そうです・・・か・・・・・なら・・・待つと・・・しましょう・・・・ですが・・・もはやこの体は必要ないですね・・・・」
「はっ?」
何を言っているのか理解できずに呪いに対して気を緩めてしまう。その隙を逃さず、アズライルはまだ原型を留めている右手の甲冑でロキの首を掴みとる。
黒炎は腕を伝いロキにも燃え移ってゆくがそれ以前に手甲が布と化しロキに巻きついてきた。
「てめぇ~もうしばらくおとなしくしとけよ・・・」
「申し訳ないですね。ですが、神が相手となればこうするしかありませんので」
「その鎧・・・・どうやら自分の意識を載せて相手に取りつくことができるようだが・・・・こうすればどうかな!」
ロキが取り出したのは・・・・・筆。
先端に赤い絵の具のようなものがついている筆であった。それでロキは首に巻きついている布に何かをラクガキした。書き終わると筆を仕舞いながらアズライルを蹴り上げる。
「ぐっ・・・・何を・・・」
「・・・はっ!こうしちまえばただの防具だな」
ロキの右手には先ほど布に変わっていた甲冑が元の状態で装着されていた。色合いは赤くなっており邪気も宿していなかった。
「なぜです!神には邪気が何より毒のはず・・・」
「ああ、だから俺色に染めたわけよ。俺は『悪戯の天才』だぜ?それよりも・・・もう一度、苦しみながら待っていな」
完全に自分の色に染め上げた手甲を見つめながら、ロキは再び呪文を唱えようとする。その前に天界の灰色の空から眩い光が差し込んでくる。それとともに巨大な老人が雲の切れ目から降り立ってきた。
「遅いぜ・・・・足止め1分で充分だと思ったのによ~2分掛かっているぜ」
「これでも最速じゃ・・・・さて、本題に入ろう」
オーディーンはアズライルに目を向けると右手を掲げる。すると天からの光が手に集い、一本の槍へと姿を変える。それこそはオーディーンの持つ最強の神器『オーディーンの槍』であり地味人に裁きを与えるものでもある。
「天使アズライルよ。天界の天使、総計1000万人を滅しさらに四大天使を殺害した理由を述べるんじゃ」
「・・・・殺してみたかっただけです。それが僕の・・・・・・・欲ですね」
「なら・・・この場で裁きを言い渡す。・・・・冥府の監獄で己の罪を考えるがよい!」
槍先をアズライルに向け放つ。その巨大すぎる槍をよけることはできず、アズライルの腹部を貫いた。槍は地面をも貫きすでに半分ほど下界の空から露見できるほどである。
しかし、貫かれた本人は顔色一つ変えずに・・・・ただオーディーンを見つめていた。
「・・・・・なんじゃ」
「あ・・・・あはははははははははは!ぬるいですよ!。もっと残酷にもっと卑劣にもっと冷酷にやるべきです・・・・・そうじゃなければ私がやりましょう!!」
むき出しの右手で槍を掴み渾身の力を込めるアズライル。彼の意図に気付いたのかロキはいまだ人間状態のまま跳躍して飛び膝蹴りを決めようとする。
「ちっ・・・・させるかよ!!」
「来世で・・・殺しあいましょう」
ロキの攻撃も虚しく、『オーディーンの槍』がアズライルの力によって折れてしまう。それにより発生する高圧エネルギーが神々もろとも天界を包み込んだ。
こうして天界と三人の神が消滅し・・・・・時だけが過ぎて行った。
そしてこの出来事により、人類の文明は本来とは違う別の方向へと進んでいった・・・・・
時代は戻り、再び神は集う・・・・・・・・・・
ロストです。初オリジナル投稿なのでかなり焦ってます。
感想など書いてくれたらうれしいです・・・・・ちなみに次回からは近未来風です。