◇涙を流す君を見つけて
君が転校してきたのは過ごしやすくなった10月の中旬ぐらいだった
茶色混じりの黒髪を背中まで伸ばした君を見た時こんな可愛い子が転校してきたんだって驚いたのを覚えてる
君はホームルームが終わった後すぐにクラスの皆に質問攻めされてたね
それを僕は幼馴染みの親友と次の授業の準備しながら見ていた
そして僕が君と仲良くなったきっかけは11月に入ってすぐ君が転校してきて2週間ぐらいたった頃だった
帰宅中に教科書を忘れた僕は夕陽に赤く染まる教室で1人泣きながら掃除している君を見つけた
教室は綺麗に掃除されており埃の1つも落ちていない
でも君は涙を流しながら箒で床をはわいていた
僕が「どうしたの?どうして泣いてるの?」
そう尋ねても君は可愛らしい瞳から溢れる涙を隠そうともせずにただ泣いてた
どうすればいいか分からなくてでもどうにかしたくて無い知恵を振り絞って出た答えは君を抱き締める
そんな一歩間違えれば警察につき出されそうな事しか思い浮かばなかった
最初はびっくりしていた君だけどしばらくするとためらいがちに僕の背中に腕を回し胸に顔を埋めて泣き始めた
あのとき君は辛かったんだろうけど僕は君に頼られた事が嬉しくてぎゅっと君を抱き締めた
どのくらいそうしていたんだろう?
気付けば赤く染まっていた教室は薄暗くなりグラウンドから聴こえていた運動部の練習の声は聴こえなくなっていた
君の涙はもう止まっていたけどそれでもまだ僕の胸に顔を埋めたまま
このままでは埒があかないと思ってさっきと同じ質問をしてみた