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華琳1話

これは俺が華琳の元に世話になってから1月経った時の話だ。


−頓丘自室


異世界からこの三国志に良く似た世界に飛ばされて、

華琳−何とあの曹操が女の子なんだ!しかも真名と言うこの世界独特の大切な名前まで許された−に拾われた。


腕を見初められて将軍として雇われたけど、

色々あって文官としても働かされていた。


そんな俺の初めてのまともな休みが今日だ!


一応この前も休みはあったんだがこの世界の常識が無い俺は進んで休みも仕事をしていた−お陰で常識は大体身に付いたと思う−。


身嗜みを整え、

俺の部屋には不似合いな鏡台で自らの姿を確認する。


顔は悪くはないが良くもない百人顔、

一応日本人なので髪と目は共に黒、

背は170と平均的、

その体を丈夫な木綿で作った上下で包んでいる。


こうやって見ると自分がどんだけ無個性かがわかる。


(本業の時は助かったけどな…)


元の世界にいた時は暗殺者なんて職業をしていたが、

この世界では戦闘力があるだけで特に暗殺術を使うつもりは無いから関係無い。


そんな事を感じながら鏡台を見ていると、


ドドドド!キキ〜!


何か−もう慣れたが−が俺の部屋の前まで走って来て急ブレーキをかける。


そしてお次は、


バキーン!


扉が吹っ飛ぶ!


「隼人入るぞ!」


入室の挨拶というよりは命令口調です。


「おういたいた!

しかしなんとも奇怪な風習だな。

のっく?とか言ったか?

来意を扉を吹き飛ばして知らせるなど…」


扉を吹き飛ばして入ってきたのは、

黙っていれば美女と言って間違いないキューティクルでロングな黒髪を無造作に垂らし、

黒曜石のような瞳には少年のような光−少女では無いのがミソ−、

背は俺と同じ位で女性としては大柄な方だが、

スタイルはボンキュッボンのナイスバデー。


「春蘭…前にも言ったが、

ノックは軽く扉を小突くだけで良いんだよ。

間違っても扉を吹き飛ばす物では無い」


「………」


「……先週も言ったはずだけど?」


「……う、うむ!」


御紹介致しましょう、

彼女が魏武の大剣と言われるようになる夏侯惇です。


そうこの世界では三国志の有名武将が女性−てか美女!−なのだ。


「わかっている!」


「なら頼むから扉を壊すな。

ただでさえ華琳の部屋の扉の修理代でかなりの出費が嵩んでんだから…」


「わかっていると言うに!」


この春蘭が可愛いくて仕方ない。


一言で言うなら馬鹿なんだが、

その馬鹿が良い馬鹿なんだ。


口では文句を言っているけど本心では、


(まったく春蘭はしょーがねーな♪)


とか考えてます。


「まあそんなら良いけど…。

そんで?

春蘭は何か急いでいたようだが何かあったのか?」


吹き飛んだ扉を持ち上げながら質問する。


「そうだ!隼人!」


「なんだよいきなり大声で?」


「華琳さまがお待ちだ!

すぐに行くぞ!」


「ちょい待てって…、

せめて扉を立てかけさせ…わ〜!」


話が終わる前に手を引かれ鯉のぼりのようにはためきながら連れられて行く俺。


−頓丘謁見の間


「早かったわね?」


この娘が華琳だ。


背は俺の頭1つ分低くて髪は眩い位の金髪、

その髪をサイドでクルリと巻き髪にして垂らしている。


ボディーラインは…年相応の控えめなバスト!

抱き締めたら折ってしまいそうなウエスト!

手にすっぽりはまって触り心地が良さそうなヒップ!

と素晴らしいです。


「何か邪な気配がするのだけれど?」


そして勘も鋭い。


「何ですって!

何処からかわかりますでしょうか?

わかれば私が討ち取ってきますが!」


「姉者落ち着け…。

華琳さまの一流の冗談だ。

な〜隼人?」


夏侯惇を姉と呼ぶのはかの有名な神弓夏侯淵、

この世界の夏侯淵は武だけでなく文にも秀でていて、

行政の方でも華琳の片腕として辣腕ぶりを発揮している。


「トウゼンジャナイデスカ!」


「ほら隼人もこう言っているだろう?」


「う〜む…隼人はともかく秋蘭が言うならそうなのだろう」


ちなみに秋蘭はほぼ春蘭と同じようなボディーラインだが、

髪の色が淡い蒼で短髪、

そして一番違うのは目だろう。


深い知性と内に秘めた激しい物を感じさせる瞳、

実は内面は春蘭と同じだが姉者の補佐をする為に控えているとは本人の言だ。


「まあ良いわ…。

隼人これを見なさい」


「…ふんふん…。

俺が挙げた街の警備関係の草案だな。

幾つか添削されているが納得出来る範囲だ。

これが?」


「問題無いようならあなたに任せようと思うのだけど?」


重要過ぎる事をさらっと言われた気がする。


「任せるって…警備隊の事か?」


「それ以外に今それを見せる意味はあるのかしら?」


俺の驚いた顔を満足げに見ながら宣言する。


「良いのか?

そんなに重要な役職任されちゃって?」


「元々あなたの出した案で強化される部隊よ。

何かと問題視する輩は居るけど、

あなたの功績は認めざるえないでしょうよ」


会議の場面が想像出来る。


恐らく反対したのは、

華琳が頓丘の刺史に赴任する前から役職に着いている文官連中だろう。


俺が献策した時も混乱がどうとか言って反対していた、

正直に賄賂が減るからと言えば良いのに。


「そういう事なら、

ありがたくその任承ります」


かなり軽く請け負ったが任せられた以上出来るだけ頑張らせてもらう。


「ならば手続きを済ませなさい。

秋蘭頼んだわよ」


「は!

隼人こちらに…」


俺は秋蘭に連れられて諸々の手続きを済ませる。


「これで手続きは終了だ。

既に警備隊詰め所には連絡を入れておいた。

明日にでも顔を見せてやれ」


「ありがと秋蘭。

しかしまさか俺が警備隊隊長になるとはな」


しみじみと運命の悪戯に感じ入る。


「隼人は何の役職も直属の部下も無いからな。

華琳さまも気を利かせたのだろう」


「…感謝の極みだね。

だけど仕事を押し付けられた気も…」


「ふふふ…そういった側面もあるだろうな」


「やっぱりか」


何とも抜け目ない主様だよ。


「まあそれでも俺は俺の出来る事をするだけだしな!」


明日からの隊長としての仕事に対して気合いを込めたら、

大袈裟過ぎただろうか秋蘭に含み笑いをされてしまった。


「なんだよ秋蘭〜。

俺が気合いを入れたのがそんなに可笑しいか?」


ひとしきり笑ってからやっと秋蘭が答えてくれる。


「い、いや、隼人の気合いの入れ方が可笑しいのではなくてな…。

実は姉者も同じような気合いの入れ方をした事があって、

そっくりだと思ったら可笑しくなってな」


「あらら〜単細胞な春蘭と同じか…。

染まったかな?」


口ではおどけているが、

いつもはクールな秋蘭の笑顔が見られたから丸儲けだ。


「ああ染まったんだろう。

我々の…いや華琳さまの色に…」


最初に将軍の位をいただいた時には感じられなかった安心感が今ある。


「かもしれないな…。

さあ明日から忙しくなるぞ!

秋蘭、今日他にやる事はあるか?」


「いや特に無い筈だ」


「なら明日の為に数字上の警備状況を確認させてくれ」


「わかった。

ならば書物室まで一緒に来てくれ」


俺からの突然と言えば突然の申し出にも優しく対応してくれる。


「ありがとう…」


目の前の秋蘭だけでなく、

華琳、春蘭も含めたみんなに万感の思いを込めて感謝する。


こうして俺は街の警備隊隊長としての一歩を踏み出したのだった。

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