婚約破棄をしたら滅亡した国の話
『婚約破棄だ!愛すべき義妹を虐めたな』
『しておりませんわ』
『言い訳をするな。国外追放だ!ライナー・ジアス!この女を国境につれていけ!』
『畏まりました』
私は公爵令嬢、殿下から婚約破棄をされて、国外追放になりましたの。
『馬車に乗れ。悪女め!』
馬車に押し込まれた。私は王都を出たことがなかった。
窓から景色を見る。
山を越え。川を越え。地理の書物でしか知らない主要都市を見る。
国外追放の身ながら、ワクワクしている自分に気がついたわ。
王都から1000キロ離れている辺境都市グワンに着いた。
追放を受けたのが午前中だったけど、日はまだ落ちていない。
『さあ、ここから歩いて行け!』
『はい。ジアス伯爵令息様、有難うございます。旅を満喫しましたわ』
『何だと?』
さあ、私の冒険の始りだわ。
『夕方には自由都市グランカに行かなければ・・・』
足取りは軽かったわ。
「サパタ王国題名不肖、巷間小説類型集【悪役令嬢群】より抜粋」
☆☆☆現在、自由都市グランカ
「ヒヒヒ~ン!」
「あら、ロバーツ、おやつの欲しいの?」
「ヒン!」
「差し上げますわ」
私は馬借のサジア、山奥の村々に物資を運んでいる。
こう見えても・・・
「おい!サジア、お客様が来ているぜ!」
「まあ、商会長、荷主様ですね。どなたですか?」
「サパタ王国の騎士と役人だぁ!お前何者だよ!」
私は伯爵令嬢だった。
☆☆☆回想
「ライカ・ジアスとの婚約を破棄する!」
陛下と王妃殿下が玉座に並び。殿下は前に立っている。
呼び出されて大勢の貴族がいる間に到着しカーテシーもそこそこに開口一番殿下に言われたわ。
王子との婚約は義務だったけど。
「ライカは全く役に立たない。見ろ。聖女殿はもう魔王軍の四天王の1人を倒したと報告が来た。なのにお前は全く役に立たない」
目の前が真っ暗になったわ。今回の魔王討伐に我が伯爵家は貢献している。
思わず殿下に反論した。
「お、お待ち下さい。私の家門は補給を担当しています。聖女様達の快進撃をお支えしました」
「それがどうした?飯を運ぶだけだろ?聖女様の戦いと同等の功績だと?」
「そうは申しておりません。兵站は大事だと申し上げているのです」
聖女キミコ様はとにかく前に進む。補給が追いつかない。
それを何とかしていたのが私達だと自負していた。
この男、話を曲解する性癖があるわ・・・
「ゴホン!」
陛下が咳払いをして会話を遮ったわ。王の発言の合図だわ。
「ダミアンはその人脈を生かして聖なる古代遺物を集め王国を富ませ聖女殿を支えている。妃は各国を飛び回り。我が王国を喧伝し各国の王族から尊敬を集めておる。
兵站とはこう言う事をいうのだ」
「ですが、物資を・・・」
「それは馬子でも出来る」
「ですが・・・我が家門こそが古代遺物そのものなのです」
周りから失笑がもれた。
「どこまで恐れ知らずな女なのだ」
「頭の病気か・・・」
「どこまでも不遜な」
王妃殿下からは・・・
「ライカ、自分のドレスを見なさい。プゥ、まるで村娘よ。王妃にはキミコ殿を推します。馬糞臭い貴女には王妃は無理ですわ」
「王妃殿下、わ、私はきちんと湯浴みをしています」
プゥ~クスクスクスクス~~と王妃殿下は腹を抱えて笑い出した・・・
「王妃殿下はそのことを言っていないのだよな」
「品位がない。婚約破棄は妥当だな」
陛下が裁定を下したわ。
「ジアス家は、歴代の王の好意を良いことに王国の膨大な土地を占拠している。しかし、王国に少しも貢献していない」
「お、お待ち下さい。土地は道路です。その管理を代々受け持っていました。古代の街道です!それに畑は飼料用です。お馬さん達を維持するにはどの国も広大な農地が必要です」
「街道の両脇に塀を作り民も通さないとは本末転倒!」
「ですから、高速で移動するから危険なのです・・・」
【もう良い。以上の理由でジアス家の爵位と財産を王国に返還することを命じる!】
ヒィ、心の中で悲鳴をあげた。
と言う事は、既に知れ渡っていること・・・
「陛下、失礼します」
私は礼もそこそこに・・・
「「「プゥ~クスクスクスクス~~」」」
「貴族の誇りはないのか?最後くらい王国に感謝して優雅に退室出来ないのか?」
「まるで泥棒猫のように逃げだしたな」
嘲笑と嘲りを背にして退室した・・・
・・・・・・・・・
商会の応接室に王宮の役人と騎士達達がいた。
「失礼します・・・」
使者は私を見るなり慇懃無礼に言い放った。
「ライカ・ジアス、王国への復帰を認める!」
この王国の役人は人の気持を逆なでするのが得意のようだ。
「これは異な事を、私は平民です。ジアス家はございません。人違いではありませんか?」
「喜べ。陛下はライカを憐れみ王宮に馬子省を設置し。ジアス家の者を長にすることにした。王命である」
馬子省?ズレている。
当然、断ることにしたわ。
「使者様、私は王国籍を剥奪されました。ここは自由都市グランカの領域ですわ。王命は届かない地です」
「・・・・王妃殿下がドレスと宝石を下賜すると仰せだ」
「いりません」
「後悔するぞ!」
「ええ、何故、あの王国に献身したか後悔しておりますわ」
役人は去ったが、騎士の1人が私に耳打ちをする。
「・・・・お気持ちは分かりますが・・・どうか、お戻り下さい。騎士団長の密書です」
「まあ、貴方たち騎士団が何をしたかお忘れですか?」
思わず声を荒げた。
☆☆☆回想
家門断絶の報を受けて急いで屋敷に戻った。
屋敷に近づくと御者が叫んだわ。
「お、お嬢様、屋敷には暴徒が押し寄せております!」
「何ですって!」
「危険です!」
民が家財道具を運び出している。いわゆる没落貴族狩りだわ。
騎士達が警備をしていたが止める様子がない。
「騎士様!止めて!」
「「「・・・・・・」」」
彼らは沈黙を貫いた。
「お母様!使用人たち・・・」
お父様とお兄様は補給で国外に出ている・・・
屋敷にはお母様と使用人達がいる・・・
「ハンス!その馬車とお馬さんは差し上げるわ。これで生計を立てて下さい!」
「お嬢様・・・」
「この子たちは普通の馬よ」
「お嬢様、どうか、ご無事で」
私は決心して屋敷に飛び込んだ。
この屋敷には古代馬が一頭残っていた。ロバーツだわ。
すでに手綱を握られて連れ去られそうになっていた。
古代馬、その血統と魔道人参で高速移動が出来る。古代の大帝国の物流を支えた馬の一族の末裔だわ。
【ヒ、ヒヒヒヒ~ン!】
「うわ、何だ!」
「お、抑えろ!」
連れ去ろうとした暴徒を蹴散らし私の所に来てくれたわ。
「ロバーツ!お母様のところに行くわ!」
「ヒン!」
暴徒を蹴散らし屋敷の中を馬で疾走する。
屋敷の大広間にお母様と使用人達は籠もっていた。
「お母様!」
「ライカ!」
「「「お嬢様!」」」
「さあ、お母様は私の後ろに乗って下さい。暴徒を蹴散らすから私の後に続いて下さい」
「「「はい」」」
屋敷を突破し外に出た。
「フウ、助かったわ・・・」
振り向いて屋敷を見ると火が上がっていた・・・
その後、お母様は持ち出した金貨を使用人達に配りお別れをした。
「今までご苦労様でした」
「「「奥様とお嬢様、お世話になりました」」」
お母様は・・・
「私は実家に戻りますわ。平民の家ですがライカも一緒に来なさい」
お母様はお父様が仕事中に知り合った村娘だった。
「いいえ。お母様、仕事が残っています。ロバーツを元の馬に戻しますわ」
こうして、私は自由都市グランカに向かった。
・・・・・・・・・・・・・
「ライカ殿、どうか騎士団長の密書を受け取って下さい」
「いりません」
「・・・聖女キミコ様の快進撃は止り。無謀な突撃をし続け護衛騎士団は飢えに苦しんでいます。キミコ様は湯浴みも出来ない状態でふてくされています・・・」
「知りません」
そう言えば、バスタブまで運ばされたわね・・・
「どうか、ロバーツ号だけでもお貸し下さい!」
「無理よ。古代馬は整備された街道か平原、魔道人参なければ力を発揮出来ません。
街道と魔道人参畑を潰したのは騎士団でしょう?」
「それは命令で仕方なく、騎士団が責任を持って整備します」
「あれは、古代帝国から受け継いだ遺産よ。一日一夜で出来るものではないわ!」
騎士は肩を落して退室したわ。
使者は度々やってきた。
「ライカ殿、ドレスと宝石でございます」
「いりません」
「ライカ殿、ダミアン殿下がまた婚約を結んでも良いと・・」
「結びません」
騎士から情報を聞いた。
「魔王討伐は失敗、聖女キミコ様はお隠れになりました・・・」
「隠れた?」
「殿下が渡した古代遺物を使って元いた世界にお戻りになったようで・・・そして、護衛騎士団ですが・・・」
敗残兵の姿で帰った姿を見て・・・陛下は訓示をされました。
『補給がないから敗北した?お前らがだらしないからだ!食べ物がないから勝手に撤退しただと。
それが騎士か?魔王軍と戦う聖軍か?!聖軍は食料がなくても戦わなければならない!』
と痩せ細った騎士達を三時間立たせて説教をしました。
「・・・それは私には関係のないことよ」
「どうか、お力をお貸し下さい!」
騎士に懇願されていたが・・・
断った。
それから使者は来ない。王国で内乱の噂話が聞こえて来るが私には関係のない話だ。
お母様・・・を呼び戻せないかしら。
お父様、お兄様の行方も分からない。心配だわ・・・
また、来客の報があった。今度は賢者様だわ。
「ライカ、お客様が来ているぜ。賢者様だ」
「賢者様が?」
珍しいわね。
ローブを羽織った老人だわ。
「ザルツ帝国に居を構えるグレーと申します。古代帝国アルタイの研究をしておる者でございます」
謙虚な方だわ。古代帝国、大陸は一つの国家だったそうだわ。高度な魔法文明で栄えていた・・・。
「ライカでございます」
「実はライカ殿の祖国サパタ王国のことでお聞きしたいことがあって参りました」
「はい?私に分かる事なら・・・」
賢者様の質問は。
サパタ王国の書物には不自然な記述がある。巷間の読み物、公文書にも書かれている。
『国境まで馬車で一日の距離』
『辺境から王都まで夕方で着くから明日の夕方まで何とか帰って来るぜ・・・』
公文書まで書かれている。もしかして、アルタイ帝国と関係あるのではないか?と疑問に思われていたそうだわ。
私は答えた。
「賢者様、私の一族は先祖代々、輸送を担当していました。
古代馬を使い。頑丈な馬車で専用の街道を使い物資や書簡を運んで参りました」
「ほお、速さはどれくらいですか?」
「はい、時速200キロでございます。途中でお休みもしますが、一日で国境まで行けました。その後、平原を通り魔王討伐軍に物資を運んでおりました」
「その馬を見たい・・」
「はい、今は私の相棒一頭しかおりません」
ロバーツ君を見せた。
「ヒン?」
「オオオ・・・・大きい。足首が太い。今でも走れるのか?」
「いいえ。もう、魔道人参を栽培する畑は接収されました。徐々に魔道人参を抜いて普通の馬に戻しているところです」
「な、何ともったいない・・これこそ古代遺物だ!」
「今のロバーツ君は山道を歩けますから、村々に物資を運べますから素晴らしいことだと思います。もったいないとは思えません」
「なるほど、チートではなく最適解か・・・これも真理、しかし、古代帝国の残滓が小国に残ったとは・・・この話の対価を払いたい」
「そうですね。父と兄の行方を知りたいですわ」
「分かった。承ろう」
その後、お父様とお兄様が会いに来てくれた。
「「ライカ!」」
「お父様、お兄様!」
2人は何とか逃げだし聖都に身を隠していた。
「すまない。王国側から兵が来たのだ」
「無事なら良いのですよ」
その後、賢者様の紹介でザルツ帝国に仕官することが出来た。
私達はお母様を呼び寄せ家族で暮らすことが出来た。
私の帝国での役職は輜重隊だわ。
「ライカ、サパタ王国で内乱だ。帝国は慰撫目的で出兵する」
「はい、騎士団長殿、了解ですわ」
私は一部隊の長として向かうことになった。
「・・・でだ。輜重分隊長殿、どこまで行ける?」
「はい、今のところ、本隊から10キロ後方を維持できています」
「うむ」
この国は輜重隊が軽んじられることはない。
やがて、王都を攻略し・・・
「ここが王宮か、見るカゲがないな」
「誰もいない。略奪の後だ」
王宮は略奪された後だった。
しかし、王宮内には人がいた。
「おい、人がいたぞ!」
痩せ襲った3人がいた。親子かしら。
「ウウ・・・・パンを」
「食事を・・・」
「ラ、ライカ!来てくれたのか?遅いぞ!飯を持ってこいよ」
私を呼び捨て・・・まさか。
「ダミアン殿下?」
抱きついてきたが。
「何をするか!?我が帝国軍の女将校を侮辱するな!我の婚約者だぞ!」
フランク騎士団長殿に蹴飛ばされたわ。
行軍中に婚約を申し込まれたわ。
「・・・フランク騎士団長殿、候補ですわ。それよりも職務を邁進して下さいませ」
「うむ!」
フランク騎士団長は3人の前に立ち叱責をしたわ。
【貴様らの無能無策が国を滅ぼし近隣諸国に難民を輩出し治安を悪化させたのだ!】
ダミアン様は泣き崩れしばらく嗚咽が響いた。
「ラ、ライカ、婚約してくれ」
「そうよ。私達を養いなさい。王族よ。箔が付くわ」
「うむ。うむ・・・」
陛下はこの手の平返しを止めるどころか頷くだけだ。
拒否するしかない。
「断ります」
「婚約をしてくれないのなら、死ぬよ。良いの?私が死んでも!」
ダミアン様がそういう。
「・・・殿下には事情聴取の役目がございます。死ぬと言うのなら当職の職責につき止めなければなりません。しかし、死ぬ死ぬと言って死んだ試しがございません」
「ライカ・・・」
「死ぬと言うのなら死んで下さいませ。今回の内乱の責任はそれだけの重さはあります。サパタ王族の責任の取り方。これも一つの答えです。男子の本懐、しかと見届けさせて頂きます。誰も止めませんわ」
「ウ、ウワワワワワーーーーー!」
「もう良い。つれて行け」
もう、これで古代帝国の運送を受け持っていた一族の名はなくなったわね。
古代帝国ではサパタ家が輸送を受け持っていたと賢者様から教わったわ。
「ライカ・・・」
フランク様から手を握られた。
「婚約をお受けしますわ・・・」
「おお」
彼は私が痛くないように控えめに力を強く手を握って感謝の意を伝えてくれた。
最後までお読み頂き有難うございました。




