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事象存在から観測する異世界  作者: 生ハム


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1/3

事象の旅立ち

無数の糸たちが輝き、消え、そして新たに生まれてくる空。


時間も空間も溶け合い、まるで万華鏡の様な場所。


まだ誰も観測したことのない空間に2つの存在が居た。




一つは巨大な蛇のような姿をしていた。


もう一つは詰襟の学生服の少年の姿をしていた。








目の前の巨大な蛇の瞳と視線がぶつかる。




「見事なり、特異点。新たな世界の王、守護者となるに相応しき強きものよ。」




目の前の大蛇(サタン)が語り掛けてくる。




「受け取れ。」




目の前に光が集まってくる。


やがてそれは一つの塊になり、林檎のような形になった。




「さあ、知恵の実を喰らい、王座を継ぐのだ。然すれば汝の思うがままに


 世界を改変する事が叶うであろう。」




目の前の知恵の実を手に取り、見つめる。




「喰らえ、新たなる王よ。」




手の中にある実を口に近づけていく。


今までの旅路が脳裏に走馬灯のように駆け抜けていく。




知恵の実を齧り、飲み込む。


徐々に体が暖かみを帯びてくる。






「……ッ!」




突然、すべて理解した。


そして知覚した。こちらを観ている存在が居るのも。




「感じたか。新たなる王よ。」




そう問うてくる大蛇に首肯する。




「あれらは世界に唯一の存在、特異点を通じて


 世界を観測し、干渉し、改変し、弄ぶ者ども。


 名前は知らぬが、我は‘’上位者’’と呼んでいる。」




上位者。今までも認識していなかっただけでずっと見られていたのだろうか。


いや見られていたのだろう。これまでの旅路も、戦いも。




「今までの我の行いも、特異点である汝の行いも総て、上位者どもの干渉、改変が


あったのであろう。そしてこれからも。」




許せなかった。今まで積み重ねてきた時間も、これからの時間も上位者の掌で転がされているという事実に。




「案ずるな、特異点であった汝が事象の存在へと為れば上位者どもも迂闊には


 手を出せなくなる。我がそうであったように。」




心の中でその事実に安堵する。




「王よ、今なら上位者どもはこちらを観ているだけだ。新たなる世界を作るのだ。」




そう大蛇に言われ、目的を思い出す。


新たな世界を創るために、自分はここまでやって来たのだ。








願う。新たな世界の創造を。




願う。新たな世界の法則を。




願う。超常の存在が居ない世界を。








「新たな王は、超常の存在が居ない世界を望むか。


 だが良いのか。王座に就いた汝だけが次の世界でも変わらずに有り続ける。


 新たな世界に事象となった汝の存在は認識されなくなるであろう。」




それでもよかった。


今までの悲しみを、苦しみを、誰もが幸せになれる方法はこれしかない。




「新たなる王の選択であるのならばそれに従おう。」


 


頭の中に鐘の様な音が数度鳴り響き、そして止む。




世界の改変が終わったことを知覚した。




「新たな王が生まれ、旧き王は消え去るのみ。


 新たな世界は生まれ、育まれていくであろう。


 だが油断はするな。内側の火種は消えたが、


 外側からの火種は燻り続けている。


 新たな世界を守護するのも王座に就いた者の務め。


 異なる世界の者たち、そして上位者の行いに目を光らせるのだ。」




大蛇の話に首肯で返した。


新たな世界を、ようやく平穏を取り戻した世界を


外なる者どもに邪魔されてなるものか。




この世界を守り続ける。その感情だけが今の自分を動かすものであった。




「ではさらばだ。新たな王よ。事象の少年よ。」




目の前の大蛇が砂のように消えていく。




もうそこには大蛇がいた形跡すらなかった。


万華鏡の様な世界に一つの存在だけがあった。




目を瞑り考える。


世界を維持するためにはどうすれば良いのか。


事象と為り、この世界の総ての情報を身に付けたとしても答えが出ない。


自分はこの世界の知恵しか知らない。ならば異なる世界のことを知ればよいのではないか。


知らないのであれば知ればいい。上位者から今の世界を守るためには上位者を知ることから始めなければ。


そう結論付けた。




知恵の実を喰らったことで多くの情報を知ることができた。


世界は無数に存在する。今この時も生まれ、育ち、消えていく。


世界の形は1本の糸の様なものだった。




幸いにもここは糸と糸の隙間。世界と世界の狭間に存在する空間であった。


異なる世界に向かうには都合が良い。




足を動かし歩み出す。世界を守護するため、上位者を知るため。


再び永き旅が始まろうとしていた。



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