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仮称 underdogs  作者: 青江兼次
ライフ・イズ・シット
5/8

トラック6 ヴァース

 トラック6


 これは別にお気に入りってわけじゃないんだけど、月一くらいで勝手にリプレイされる。


 高校に入って美咲は神様たる本領を発揮し始めたというか、覚醒したというか、なんというか。

 弄るところがないって断言できるほど完成されてしまった肉体。

 何考えてるんだか分からない表情と雰囲気。

 それらが混ざり合った結果、学び舎の生徒達の中では、


『神崎美咲はミステリアスクールビューティー』


 ってことになったらしい。

 何が言いたいかって?

 美咲は馬鹿みたいにモテたって話に決まってんでしょ。

 当然、男女両方からね。


 だけど告白する人は案外少なかった。

 当たり前だよね?

 だって、美咲は神様なんだから。

 私も、お前らも、おてての皺と皺合わせて拝んでりゃいいの。それで幸せでしょうが。


 けどさ、世の中には神様に触れようとする愚か者は一定数はいるんだよね。

 当たり前だけど蛮勇としか言えない者が大半を占めてた。

 それでも中には英雄と呼ぶに相応しい者もいた。

 つまり、蛮勇を犯す阿呆は直接告白してあっけなく散っていった。

 一方で、英雄は頭を使って『将を射んとする者は先ず馬を射よ』とばかりに私に近づいてきた。

 私は馬でもなければ番犬でもない。ただの美咲教の信者だよ。

 英雄は頭がいいし、周りにはそれをサポートできる仲間がいる。

 私は作る気もなかった知り合いが増えた。


 美咲は何も言わず、人の輪の中にいる私をただ眺めてた。

 時折ぶつかる視線に何の感情を込めているのか分からなかった。

 私は英雄に賢者のごとく言葉を授けた。

 あの神様はちょっと脳みそを天界に置き忘れて生まれ落ちちゃったみたいだから、口からぽろっとこぼれ落ちた言葉の解釈は信者である私達が一生懸命しましょうねって。

 言ってしまえば、なんのアドバイスにもなってない雑談をしてた。

 げらげら笑いながらクソどうでもいい話に興じていた。

 私は知ったかぶりの愚者だった。

 仕方ないでしょ。

 狂ってんだから美咲は。


 そこで苦渋の末に撤退をする者も出てきた。

 そうじゃない者は、せめてもの餞別が欲しかったのか、ラブレターを綴って私に託した。

 お返事待ってますって、私の目を見ながらさ。

 健気だね。

 でも宛名が書いてなかったり間違えてたりするのはやめてほしいよ迷惑だから。

 ちゃんと綺麗な字で『神崎美咲さんへ』って書け。

 恥ずかしがらずにさ。

 英雄らしい死に方をして。


 ラブレターを託された放課後の帰り道は、それを会話の最中に取り出して美咲に渡した。

 美咲の反応は日によって違くて、素直に受け取ってスクールバックに仕舞う時もあれば、封も開けずに丁寧に腰を折って下水溝に突っ込む時もあったし、その場で立ち止まって封を開けて中身をぶつぶつと呟く時もあった。

 いや頭おかしいよマジで。

 でも返事を欠かしたことはない……んだけど……ぶっちゃけると、美咲は最初ラブレターを無視しようとしてた。

 でもさ、それはあんまりじゃん?

 優しさの塊である私は、

『礼儀として返すべきでしょ!』

 って説得した。

 だから美咲はホントに返事を欠かしたことはないよ?


 ただ、ちょっと変っていうか何ていうか。

 ノートのきれっぱしにペン先折れるんじゃないかって力で『死ね』の一言を書き殴るときもあれば、キュートなキャラクターがプリントされてる便箋をロフトで買って、丁寧な字で『あなたの気持ちはとても嬉しいです。ですが付き合うことはできません』と書くときもあった。

 温度差エグ過ぎて普通にドン引きだった。

『死ね』の一言は流石にヤバいでしょ。どう考えたってラブレターの返事じゃないだろうが!


 一時停止。


 ちょっと早回ししていいかな。このトラックさ、私の高校生活まるまる記録してある気がしてきた。頭壊れてきてるかも。さっきの月一リプレイの話はこっからね。


 再生。



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