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仮称 underdogs  作者: 青江兼次
ライフ・イズ・シット
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トラック1

 トラック1


 神崎美咲(かんざきみさき)という女を初めて認識したのは、中学校に入って背の順を決めるときだった。

 私の一つ前だった。

 ファーストコンタクトはお互いに無言。

 美咲とは小学校が違った。もっと言えば、クラスメイト全員を私は知らなかった。

 この中学校は合併校で色んな学区の小学生が集結してた、らしい。私はそれを後で知った。

 兎に角、私は美咲の後ろ姿から目が離せなかった。キラキラと輝く毛先がキュートだったから。


 美咲はなんていうか……最初から既に頭の螺子が飛んでた。

 入学してすぐの学力把握テストを赤鉛筆で書き始めて、書き損じて、消しゴムで消せなくて、諦めたのか残りの時間はぼーっと教室の天井を眺めてた。私はそれを嘲笑って、楽勝でしょこんなのって呟きながら満点を取っていた。


 私は負けず嫌いで一番が好きだった。

 そんなクソな性格だったから、美咲は私より下だと決めつけていた。

 でも、体育の授業が始まってそれは違うと知った。

 美咲はギフトを与えられて生まれてきた存在だということを、周りに暴力的なまでに叩きつけた。

 そう、めっちゃ足が速かった。

 誰も美咲に五十メートルで勝てなかった。

 男子はちっぽけなプライドが粉々に砕け散っていた。

 女子は性別詐称してるだろって感じでドン引きしてた。

 私は女子中学生特有の足が速いヤツに惚れる病気を発症した。

 体力測定の五十メートル走で私はガチガチのビアンにされた。

 走る姿に一目惚れした。

 女なのに女の子に恋してしまった。

 好きだった一番がどうでもよくなった。

 美咲が、美咲だけが……好きになってしまった。


 その日の夜は大変だった。

 帰宅して体操着を洗濯機に突っ込んだ時、私は泣いた。

 号泣した。

 頭がおかしくなったと思った。

 急いで部屋に戻ってベッドに倒れ込んだ。枕が目から溢れる滴を音もなく吸い取っていった。

 掌は胸を押さえていて、バクバクしてる心臓をマジで止めてやりたかった。

 風になびく髪が網膜に焼き付いて、目を瞑っても消えてくれなかった。生まれて初めて徹夜した。

 ラブコメの負けヒロインってこんな感じなのかなって思った。


 それが初めての恋の始まり。


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