小寒編、初候
【1月5日頃 二十四節気 小寒 寒さが厳しくなる寒の入り 七十二候 芹乃栄 七草の一つ、芹が生え始める季節】
芹が咲く道に、氷の塊が集まったようなドレスに氷の塊のような冠姿の紫色の髪の女性が立っている。
其の女性のもとへと、青が基調のアイドル衣装を来た水色の髪の少女が走って来る。
水色の髪の少女「しょう!かん!さぁーーーん!」
水色の髪のアイドル少女の名は冬至。
12月下旬から1月上旬にかけての季節に意思が宿り、人の姿で実体化した存在である。
紫髪の氷のドレスの女性の名は小寒。
1月上旬から1月下旬までの季節に意思が宿り、
人の姿で実体化した存在である。
此のように、最近の日本では、季節に意思の宿った季節の精霊のような存在が24人出現していた。
其の24人は、一部の界隈の人間から二十四節気と呼ばれていた。
冬至「小寒さん!バトンタッチですよー!」
冬至は自分の担当の季節が終わったので次の季節を担当する小寒にバトンタッチの宣言をしに来たのだ。
尚、担当の季節を終えた二十四節気には幾つかのルールが有る。
*オフシーズンモードとして現世にとどまる事が出来る
*季節の狭間と言う世界に帰る事も出来るが、帰った場合、次に実体化出来るのは翌年の自分の担当の季節
*二十四節気の中には不思議な特殊能力を持つ者も居るが、オフシーズンモードの時には能力が5割以下に制限される
冬至の能力は気温が低い時限定で空を飛べる事だが、今日からオフシーズンなので空は飛べなくなってしまった。
小寒の能力は冷気を放出する事。
オフシーズンの時には溶けかけたアイスを再び凍らせる程度の冷気だが、
今は小寒の担当の季節で能力に制限がかかっておらず、
氷のオブジェや氷の建造物を作り出せる程強力な冷気を出せる。
小寒の事を知る近所の人間達は小寒の事を天然の冷蔵庫と呼ぶ事も有る。
尚、冷気の制御が難しく、要らぬ場面で冷気を放出してしまう事も有るのが本人の悩みである。
小寒「…………そう………だね。私の…………担当の…………季節だね。」
冬至のバトンタッチ宣言に応える小寒だが、此のように小寒の特徴は物凄く無口な事である。
冬至「あっはは!相変わらず小寒さんは無口だなぁ!
そうそう、小寒さんは『七十二候くじ』って引きました?」
そう言ってくじの入った箱を見せる冬至。
『七十二候くじ』とは72種類の運勢の書かれたくじである。
小寒「今年は………まだ、引いてない………。」
冬至「そっかぁ、私、今回は東風解凍でしたよ!
物事を始めるのに適した時期なんだって!」
小寒「おめでとう………良い運勢で………良かった。」
冬至「小寒さんも引いてみて下さいよ。」
冬至に促され、小寒もくじを引く。
ただし、手を直接箱の中に入れるとうっかり冷気でくじを凍らせてしまう危険が有るので、トングを使ってくじを取り出す。
魚上氷、氷のような悩みを打ち破り、解決の方向へ。
冬至「何か良さげな運勢じゃないですか!
小寒さんの悩みが解決すると良いですね!」
冬至と小寒がそんなやり取りをした数時間後。
「わぁーー、すごーーーい!」
「芸術だーーー!」
公園ではしゃぐ人間達。
公園の真ん中には巨大な鏡餅が置かれている。
ただし、普通の鏡餅ではない。
氷だ。
氷で出来た鏡餅の彫像なのだ。
「此れ、小寒が作ったの?天才じゃない?」
そう、突如として公園に現れた氷の鏡餅のオブジェは、小寒が冷気を放出して作った物だったのだ。
こんな感じで、担当の季節には小寒が氷の芸術作品を作るので、近所の人間達からちょっとした人気者となるのだ。
「小寒さん、公民館開いてるから寝泊まりに使ってね。」
二十四節気達にも、実体化してる間は住む場所が必要である。
公民館を借りて住みついてる者、
何らかの方法で宿泊費を稼いでる者、
巨大な花壇庭園や、古代の遺跡を拠点代わりに使ってる者、
また、4月下旬の二十四節気である穀雨が管理する謎のお屋敷に入らせて貰う者も居る。
小寒は公民館で、ある事に挑戦しようとしていた。
今は七草の一つ、芹が咲く季節である。
小寒は七草粥を作ってみようとしていたのだ。
しかし小寒は、冷気放出能力でうっかり食材を凍らせてしまう悩みに直面していた。
小寒「………また………凍った。」
翌日、場面は変わる。
「ふぅーー、すぅーーーっ。
基礎体温アップの呼吸で寒い冬を乗り切る。
ふぅーー、すぅーーーっ。」
燃えるような赤い髪に緑の騎士甲冑の女性が呼吸、瞑想、ヨガに没頭していた。
5月上旬の二十四節気、立夏である。
立夏「おや?」
小寒「………はぁ、上手く……作れない……。」
たまたま公民館から気を落としながら出て来た小寒を発見する立夏。
立夏「悩みを抱えてる呼吸だね?」
小寒「立夏!?…………わか………るの?」
立夏「うん、呼吸法を研究してると呼吸で人の感情を読めるようになってね。」
小寒「料理………したいけど………食材、凍らせちゃう。」
立夏「あー!
二十四節気特有の能力暴走の悩みだね。
小寒、こうやってああやってこう、呼吸してみて。」
立夏は小寒に変わった呼吸法を伝授した。
小寒「ふぅお〜〜〜、………すぅ~………。」
小寒の手から出る冷気が止まり、手が少し温かくなった。
小寒「!?」
立夏「ほらね?此れが能力制御の呼吸だよ。
此れで小寒も普通に料理が出来るはずだよ。」
小寒「……有難う………。」
公民館の中に入り、再び七草粥作りを再開してみる小寒。
そして数十分後。
小寒「……出来た、七草粥………。」
くじ引きの結果、氷のような悩みを打ち破り、解決の方向へ。
本当になった瞬間だった。
小寒の初候、72有る日本の季節の一つが、こんな感じで過ぎて行くのだった。
『小寒編、次候』へ続く。




