第1章-16 異世界修行
ガンダーラ国、北西部スワート渓谷周辺。
慧は、スワート谷を下ると村に入った。
そして、歩き続けて村の外れにある林に入り、大きな木の下に立った。
(ここで過ごす)
(ここで過ごす? といいますと)
(立ったまま沈黙)
(へっ?)
(動くな、喋るな、立っていろ)
(、、、)
慧はヤナカの教えた通り、その場に立ち続けた。
アージーヴィカ行者の修行のひとつ"立行"である。
ーーー☆ーーー
日が沈んだ。
ここに来たのが、太陽が西に45度傾いたあたりだったから、ここに立ってからおよそ3時間の計算になる。
(ぐぐぐ、脚が攣りそうです)
(まだ)
北斗七星が地平線から柄杓の頭を出し始めた頃、ようやくヤナカの許しが出た。
(座れ)
慧は、そのままドスンと後ろに倒れた。
(バ、バ、バァ。バンテ)
(何だ)
(キツすぎ、ます)
(是式が?)
実際、日が暮れてから更に二時間くらい立たされたのだから無理もない。
いくら、日本人が行列待ちするのが好きだからといって、五時間も立たされれば骨身にしみる。なにせ、その間に一度も座れず、動くこともできないのだから。
(次、結痂)
(けけけ)
(結痂だ。両足を反対の太ももに乗せる)
(できませんよ。そんなのやったこと無い)
(愚人)
(へっ?)
(我が身だ)
(あっ!なるほど)
慧はその場で、右足を左の太ももに乗せ、左脚を右太ももに乗せた。
そして、一度前かがみ(前屈)になり、頭だけを起こすようにして座った。いわゆる坐禅の姿になったわけである。
(沈黙。平静を死守)
(はいっ!ガンバらせていただきます!)
夜風が林の中を抜けてゆく。枝の上ではツグミかなにかが低い声で囁くように鳴いている。
30秒、1分、、1分半と座って沈黙を守っている慧。
2分過ぎ、
(うう・・・・・腹減った)
(そういえば・・・・・・
アーロカのところで食べたロティ三本だけだよ今日の昼飯・・)
(なんかくいたいなぁ・・・・)
(この際なんでもいいけど・・できればガツンと牛丼の特盛汁ダクに玉子と味噌汁付き、紅生姜なんかこうドッサリ盛って、、、、、とかイイヨなぁ~)
(ああ、、ヨダレ、アアアア~)
(アアア~? そうだ!アーロカ! どうしてるかな・・・・)
-ガッツーン!-
「いててててぇ~!」
(沈黙)
(はい~ぃ)
(座って沈思。妄想の抑止)
(でも、そんなことやったことないし)
(俗世の塵垢。頭の中は常に外の世界)
(しかしバンテ、沈黙していると心が勝手に動いて、自然に妄想しますよ)
(妄想、外界への執着。断ち切るが沈黙の修練)
(!)
(ではバンテ、どうすりゃ妄想を止める事できるんすか?)
(いずれ教える)
(はぁ~ぁ、、べつに俺知らなくてもいいんすけど、、)
(何?)
(イエッ!)
(就寝)
(了解しまくらチヨコ~!)
慧は、その場にゴロリっと横になるとスグ、いびきをかいて深い眠りに落ちていった。
Ha ha, atthi kho ettha bahuṃ dassanīyaṃ.
[BGM]
"川の流れを抱いて眠りたい"
【脚注】
◯是式・これしき
たかがこの程度のこと。の意。
◯ [BGM]
物語を眼で追い、BGMを実際に耳で聴く事により、読書体験がより膨らむように選曲。
<利用例>
1. 最初に文章をエンドまで読み終える
2. 次に、BGM の QRコードを読み取り検索。または "(曲のタイトル)" をコピー、Youtube、Spotifyなどでコンテンツを検索
3. 曲を準備してもう一度最初から読む
4. BGM のところまで読んだら曲をプレイ
5. 続きの物語を読んでそのシーンの世界観を拡げる
検索結果が複数出た場合、オリジナルメディアの音源とライブなどバリエーションを聴き比べるのも楽しみ方の一つ。
尚、(川の流れを抱いて眠りたい)は第1章での慧のイメージソング。




