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【新春お年玉スペシャル!5日間連続投稿】第1章-11 出発準備

ガンダーラ国、首都タクシラ

(現在のパキスタン、イスラマバード付近)


ギルド会館の前には、荷物を満載した数十という牛車、馬、ラクダで犇めいていた。


数日前に終わったギルドとキャラバンの会議により、今回の隊商が積んでゆく荷物の搬入がすでに始まっている。


キャラバン隊商が積み込む商材・荷物は大きく分けると次のようになる。


• 事前受注品 約7割

• 裁量積載品 約3割


殆どが、他国の商人からの受注品であり、キャラバン自体が各地を転々と回って行商をするわけではない。

つまり、その旅程の主目的は「納品」である。


また、裁量積載の商材は、キャラバン隊長が荷車の余白と、ラクダや牛の過重量枠によって、利益の高いもの(例えば、薬草、宝石、あるいは途中の村で買い付けた珍しいもの)を独自に買い付けて積み込む。


積荷の集荷方法は次のようになる。


    村の生産者・職人

        ↓ (搬入・仲買人が運ぶ)

   ギルド会館(検品部署)

        ↓ (重量・品質・印章で管理)

    ギルド倉庫(保管)


生産者から仲買人が集めた商材をギルド会館に搬入する理由は、検品部署で”ギルド印章(lakṣaṇa)/生産地紋章/重量刻印” を受ける必要があったからである。これは、現代の輸出入の際に必要となる原産地証明書に相当する。


また、ギルドの検品の際、当然のようだが規格外の産物ははじかれた。

検品を無事通過した荷物は、ギルドの倉庫に保管されキャラバンの出発を待つ。


倉庫に入り切らない荷物に関しては、会館の周囲にあるいわゆる”貸し倉庫”で厳重に保管される。


この倉庫業というものが巨額の富を生むことは、古代インドのリッチャヴィ国・首都ヴェサーリーの大倉庫王 Ugga-Mahāsāla/ウッガ・マハーサーラが実在していたことからも窺い知ることができる。



āḷikaṃ(おーい), sīghaṃ (早くして)karoh(くれよ)i!”




yathā (そんなこと)vuttaṃ,(言ったって) purato saṅ(先がつかえて)kiliṭṭha(るんだ!)ṃ; kiṃ kar(どうしようもねえ)issāmi?”




“bahu-bhaṇit(ゴタクはいい)aṃ alaṃ; sīg(さっさと行け)haṃ gaccha(っていうの).”




“hasanīyaṃ(おもしれぇ) kho, tvaṃ(このサンピン).”




荷受けの検品作業は厳密であったため、それなりの時間がかかる。


夜明け前には到着している荷車もあるから、この昼時になれば腹も減って、荷受けの順番待ちをする荷役人夫たちは、みな苛立ちを隠せずにいた。


すべての荷受けが完了したのは夜になってからだった。


挿絵(By みてみん)

最終的な積荷の目録が完成し、それぞれのキャラバン隊長に手渡され、隊長はキャラバン随行員の経理・会計係を伴ってその目録に書かれた荷物を検品に行き、そして貸借帳簿にもれなく記載した。





また、隊員募集・技能者の選定は公募によって行い、使役家畜(牛・馬・ラクダ)の確保・点検も並行して進む。


ギルドとキャラバン隊長との間で契約書作成・誓約等々が交わされて、出発前の準備が全て整う。


• 「キャラバン契約書(saṃvidhāna-patta)」の作成


◦ 賠償規定

◦ 分益比率

◦ 山賊遭遇時の指揮権

◦ 加盟者の義務


• 隊長・長老・商人代表が署名(印章を押す)

• 参加者全員が「誓言(saccakiriyā)」に署名

• 不正・密輸の疑いがある者がこの段階で排除


出発前のキャラバン最終整備として、荷車隊列の位置決め、 護衛班(傭兵)の配置(前衛・側面・後衛人数というような具体的な配置)、 夜間に火の管理をする「火番」の割当、最終荷重調整、そして食料(乾燥麦粥、豆、塩肉、水袋)を積む。


[BGM]

"Sting - Fields Of Gold"

挿絵(By みてみん)


この日、 隊長同士の最終確認のあと、ジャティラ隊長は天候占い、雲見・風向き・月齢をフューメに()てもらった。


“nikkhamanaṃ pa(出発は、、)na…”



“amāvassiy(新月の)ā dve div(2日後)ase pacchā; puṇṇamaṃ p(満月までに)atvā nagar(次の都に)aṃ pāpu(入れば)ṇimhā, idaṃ satth(このキャラバン)aṃ safalaṃ(はうまくいく) bhavissati.”



sādhu(わかった). amāvassiy(新月の)ā dve d(2日後に)ivase(出発) nikkhamissāma; puṇṇamāya(満月までに) Madra-des(マドラ国)e Sākala-(シャーカラに)nagaraṃ p(到着する)āpuṇissā(としよう)ma.”



占い師の家をあとにして、ジャティラは自宅に戻り、二人の子どもたちと話をした。



“mātaraṃ anug(母を助け)gahassu; ge(留守の間)he ca samm(しっかり家)a rakkhā k(を守るよう)ātabbā.”



二人の子供は、まだ幼い眼差しが残る青い瞳で、父にその意志を示した。










◯目録の訳


積荷目録

Jatiila(キャラバン隊長)・jatilaに引き渡し、記録する。

1. サーリー種の精米

 五容器。各容器は 25 パラ(重量)

 合計 500 パラ

2. 緑豆および小豆

  各1つの箱に計 300 パラ

3. 綿布製の布類

  帯布が 1000 巻 ギルド印で封緘済み

4. 香料類

 上質な香油と白檀粉末

  各20 箱で計 40 パラ

5. 象牙製の器物

125点 精巧に仕上げられている

6. 金属工品

 剣の刃 200本、鍬 300本 各 100パラ


以上のすべての積荷は、

ギルドよりジャティラに渡され、

行路は「タクシラ ― ラージャガハ路」と記す。

受領のまま・計算どおりであることを、ギルド長老プックサが封印した。

積荷目録、ここに完了


◯※ [BGM]について

物語を眼で追い、BGMを実際に耳で聴く事により、読書体験がより膨らむように選曲。


<利用例>

1. 最初に文章をエンドまで読み終える

2. 次に、BGM の QRコードを読み取り検索。または "(曲のタイトル)" をコピー、Youtube、Spotifyなどでコンテンツを検索

3. 曲を準備してもう一度最初から読む

4. BGM のところまで読んだら曲をプレイ

5. 続きの物語を読んでそのシーンの世界観を拡げる


検索結果が複数出た場合、オリジナルメディアの音源とライブなどバリエーションを聴き比べるのも楽しみ方の一つ。

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