第7話 クエスト
『ログインしました』
「おー、ログアウトから1日も経っていないのに、久しぶりな気がするなぁ。特にやりたいことがあるわけでもないし、ミスズさんにでも会いに行こうかなぁ」
そんな独り言を呟きながらギルドにやってくると、幼い子供の懇願の声が聞こえてきた。
「すいません、誰か私のお姉ちゃんを助けてくれませんか!」
「おい! ギルドはガキが来る場所じゃねえんだよ! 邪魔だからどっか行け!」
「うわっ」
その小学生ほどにしか見えない少女は、ギルド内で必死に声掛けを行っていたが、そのことを迷惑がった冒険者が強くぶつかり、少女は転んでしまった。他の者たちも迷惑に思っていたのに違いはなかったが、流石にやり過ぎだと非難の視線を冒険者に浴びせていた。
「お、俺のせいじゃねえからな!」
ばつが悪くなった冒険者は、急ぎ早にギルドを後にした。
倒れた少女は涙を浮かべつつ、声掛けを再開していた。そんな様子を見ていたサキだったが、ハッとして、慌てて駆け寄った。
「倒されていたけど、大丈夫だった? “ヒール”」
「あっ、ありがとうございます、お姉さん」
淡い光が少女を包み込んだ。すると先ほど負った小さな傷がみるみるうちに良くなっていった。
少女の顔を正面から見たサキは「今は可愛らしい顔立ちだけど、成長したら美人さんになるんだろうなぁ」と思っていた。しかし口にも顔にも出すことはない。
「それで、お姉ちゃんを助けてって言っていたけど、君のお姉ちゃんに何があったの?」
「お姉ちゃんがね、怪我しちゃったの」
「怪我? どうして怪我しちゃったの?」
「私たちにはお母さんも、お父さんもいないから、お姉ちゃんが働いてくれているの。その働いている途中で怪我したのに、そこでは治せないって言われちゃったの」
「(この世界には労災がないってことかな?)私は聖女で神聖魔法が使えて治せるかもしれないから、家まで連れて行ってくれないかな?」
「うん」
その少女は浮かべた涙を擦り、サキに手を差し出した。そして2人は手を繋ぎながら、少女の家を目指して歩いて行く。
「君の名前はなんて言うの?」
「私はリカなの」
「リカちゃんって言うのかぁ……可愛らしい名前だね」
「そうなの。私は可愛らしいの」
その少女――リカは自信満々の表情で言った。
「(うーん、確かに可愛らしいけど、将来が心配になる自信の持ちようだなぁ……きっとお姉ちゃんが何とかするよね……大丈夫だよね)確かに可愛らしいよ」
「ありがとうなの。優しいお姉ちゃんはなんて名前なの?」
「私はサキって言うんだよ」
「サキ……まあまあ可愛らしいの」
サキは派手にズッコケた。
そんな様子をリカは冷めた目で見つめていた。
「サキ、恥ずかしいから止めて欲しいの」
「ご、ごめんね」
言葉だけではどちらが年上か分からなかった。
数分歩き、リカは歩みを止めた。
「ここなの」
「ここがお家なんだ」
サキは見上げて家の全貌を確認した。その建物はかなり大きく、姉妹が2人で暮らすにしてはかなり大きい建物だ。リカが両親はいないと言っていたことから、リカの姉は危険が伴う高給取りであることをある程度察した。
「お姉ちゃん、ただいま」
「お邪魔します」
家の中はお洒落な雰囲気に包まれていた。
「こっちなの」
「こっちにお姉ちゃんが居るんだね」
2人は家の中を進んで行く。
数秒歩き、とある部屋の前に辿り着いた。そしてリカがノックをすることなく扉を開けた。
「これは……」
そこには全身に包帯を巻いた女性がベッドに眠っている姿があった。
「お姉ちゃんは、この街の兵士で、隊長をやっているらしいの。でも、あのモンスターによって、この街の兵士の半分ほどが死んじゃって、4分の1が重傷を負ったらしいの。それでも抵抗して撃退には成功したってお姉ちゃんが言っていたの。でもお姉ちゃんは、その戦闘で負った怪我が原因で寝込んでしまったの。だから、お姉ちゃんを治してあげて欲しいの!! それとできれば……極力……絶対に頼光を倒して欲しいの!!」
「(最後は絶対になっちゃったよ……頼光がどんな敵か分からないけど、街の兵士がやられるくらいだし、強いんだろうなぁ……とりあえずは治してからだよね)分かったよ。“ヒール”」
ベッドに眠る女性を淡い光が包み込む。しかし“ヒール”では効き目が薄いのか、女性はうなされたままだった。
「やっぱり“ヒール”じゃ足りないよね……きっと私なら使えるはず! “エクストラヒール”」
眩い光が女性を包み込んだ。すると、みるみるうちに女性の顔は穏やかになっていき、包帯から露出していた傷跡もきれいに消えていった。
「はぁはぁ、これで大丈夫だと思うよ」
あまりの疲れに、サキは尻もちをついてしまう。
そして十数分の時が経ち、女性が瞼を開く。
「うっ」
「お姉ちゃーん!!」
姉が目を覚まして安心したリカは、ワンワンと涙を流して姉に抱き着いていた。そんな2人の姿を見て、サキは姉妹愛だねぇと感慨深くなっていた。
「リカ、そんなに泣いてどうしたの?」
「お姉ちゃんが帰って来て、すぐに寝ちゃってから、一度も起きなかったから、死んじゃったと思ったの!!」
「ごめんねぇ」
サキはその様子を無言で見守っている。すると女性がサキに気が付いた。
「あの、あなたは?」
「わた――」
「そのお姉さんは、お姉ちゃんを助けてくれた人なの!」
サキが答えるより前に、リカが食い気味で答えた。
「すいません、ありがとうございました」
「いえいえ、リカちゃんの頑張りを見ていたら、助けてあげたくなっただけです」
「リカ、私のために頑張ってくれたの?」
「そうなの! 毎日、ギルドで声掛けしていたの」
「ギルドで!? そんな野蛮なところに行くなんて、ダメに決まっているでしょ!!」
サキはギルドが野蛮ということを否定したかったが、先ほどギルドで見た光景を思い出し、否定することができなかった。
「でも、ギルドで声掛けしたから、サキお姉さんと会えたの。お姉ちゃんが元気になれたのも、私が頑張ったのに……お姉ちゃんなんて嫌いなの!!」
リカは家から飛び出してしまった。
「私が追いますので、病み上がりの――リカのお姉さんは安静にしておいてください」
「お願いします」
「はい、必ず見つけます!!」
ユニーククエスト発生
【家出したリカを探せ】
難易度4
成功条件
家出したリカを探し出し、家へと連れ戻す
失敗条件
リカの失踪
成功報酬
???
tips
・クエスト
クエストには3種類ある。
ギルドで受けるクエスト、突発的に発生するが何度も発生するエクストラクエスト、突発的に発生してその時にしか発生しないユニーククエスト
ユニーククエストはどんなに小さなものでも、バタフライエフェクトによって世界に大きな影響を及ぼす。




