第35話 鉄を求めて
“ファンタ鉱山”を進むサキたち、奥に進めば進むほどエンカウントするモンスターの数が増えていくが、先ほどの開けた場所以上の群れとエンカウントすることはなかったため、特に苦戦することなく勝利することができていた。
「やっぱりバットが厄介過ぎるよね」
「何か対策があればいいんですが」
「耳栓とか、耐性系のスキルがあれば大丈夫なんだけど……」
そんなことを話しながら、“ファンタ鉱山”を進んでいたが、彼女たちは再び開けた場所に出た。先ほどと同程度の広さだったが、モンスターは1体しかおらず、これ以上深部に進むための道がなかったため、目の前にいるモンスターが、“ファンタ鉱山”のボスだと想像できた。
「……アイアンゴーレム」
「“南の森”のゴーレムよりも確実に強いですよね」
「きゅう」
「強そうだね」
サキたちは苦戦することが容易に想像できる相手に、少し恐れを抱きつつも、楽しめそうな強敵に笑みを隠せていなかった。
戦闘を始めるために開けた場所に足を踏み入れる。するとエンジンが入ったかのように、アイアンゴーレムの目が赤く光り、動き出した。
「行くよ!!」
「はい!」
「きゅう!」
サキの掛け声に合わせて、アリウムとカグヤが散開した。サキはアイアンゴーレムの正面に立ち、アリウムとカグヤはアイアンゴーレムの側面に立つ。三方向を囲まれたアイアンゴーレムは、正面に立っているサキに狙いを決めて、動き出した。
その動き自体は鈍いが、ドスンドスンと鳴らしながら歩いていることで、かなりの威圧感を感じる。
「様子見で“ホーリー”」
断罪の光がアイアンゴーレムの身体を貫いた。しかしその攻撃でアイアンゴーレムの歩みを止めることはできず、サキの目の前まで来てしまう。そして腕を振り上げ、高速で振り下ろした。
サキは横に転がって、アイアンゴーレムの拳を避ける。元々立っていた場所にはクレーターが出来上がり、その攻撃が高威力であることを物語っていた。
「一撃で体力を持っていかれそう……アリウム、カグヤ!」
「“アクアボール”!」
「きゅう!」
重たい身体から放たれる拳は高威力だが、その分後隙も大きい。そんな後隙を狙い、アリウムとカグヤが攻撃を仕掛ける。
アリウムは“アクアボール”をアイアンゴーレムの頭部を狙って放つ。動きが鈍いアイアンゴーレムは避けることができずに、“アクアボール”は頭部に着弾した。しかし受けたダメージは少なかったようで、少し頭が揺らいだだけで、これといった反応は示さない。
しかしサキ側の攻撃はまだ続く。カグヤの加速は最高潮に至り、そこから放たれる飛び蹴りは、岩をも容易に砕く威力だ。そんな飛び蹴りがアイアンゴーレムの脇腹に着弾した。その攻撃によってアイアンゴーレムは横に倒れる。砂埃を上げて地面に倒れたアイアンゴーレム、それが大きな隙を晒したことを頭が理解した瞬間、サキたちはさらなる追撃に移る。
「“ホーリー”!!」
「“アクアボール”!!」
「きゅう!!」
仰向けで倒れているアイアンゴーレムの胸を断罪の光が貫く。そして光によって作り出された傷跡に塩を塗り込むように、水の塊が再生を阻害しに掛かる。
そして無防備な頭部へと、月兎の踵落としが炸裂する。
「……まあそう簡単には倒れてくれないよね」
アイアンゴーレムが腕を振り回しながら立ち上がったため、サキたちは距離を取らざるを得なかった。そしてアイアンゴーレムが攻撃を再開する。
拳を振り上げ、そのまま振り下ろす。それ一辺倒の攻撃だが、地面を砕いて行くため、段々とサキたちの機動力が下がってしまう。
「デコボコしすぎて動きにくいなぁ」
「私が前衛をします!」
アリウムは、アイアンゴーレムの攻撃によってできた大きな岩を持ち上げて、頭部に狙いを定めて射出する。だがアイアンゴーレムが頭部を横に傾けたため、岩は空を切った。
しかしその攻撃はアイアンゴーレムのヘイトを買い、アイアンゴーレムの狙いがサキからアリウムへと移った。
「おっと――」
アイアンゴーレムはアリウムの下へと移動し、拳を振り下ろす。彼女は華麗に拳を避けると、“アクアボール”で微量のダメージを与える。
アリウムは猛攻を避け続け、“アクアボール”でダメージを蓄積させていく。攻撃が一度も当たらないことに対して、アイアンゴーレムも苛立ち、ドンドン攻撃が大振りになっていく。
そして大振りで拳が振り抜かれた。その勢いに身体が耐えきれず、アイアンゴーレムはバランスを崩す。地面に倒れることはなかったが、身体が揺らぎ、既に重心は浮いていた。
「ラストスパートだよ!」
「はい!」
「きゅう!!」
トドメを刺すために、サキたちは一斉攻撃を始める。
サキは“ホーリー”、アリウムは“アクアボール”、カグヤは飛び蹴りを放った。一か所に集中して攻撃を受けたアイアンゴーレムは、地面に倒れる。倒れたアイアンゴーレムに対して、容赦なく集中攻撃を行った。
今度の集中攻撃はアイアンゴーレムの体力を削り切り、ドロップアイテムを残して、ポリゴンとなった。
「勝てたぁ」
「危なかったですね」
「きゅう」
アイアンゴーレムとの戦いで、疲労が溜まったサキたちは、地面に腰を下ろし、安堵の言葉を漏らしていた。
「休んだし、採掘を始めようか」
「では私たちは見張りと応援を頑張ります!!」
「きゅう!!」
サキは採掘できる場所にツルハシを振り下ろした。
――インベントリ――
クズ鉄鉱石 レア度2 品質E
クズ石よりも鉄を含有しているが、その鉄は微量で低品質。
――インベントリ――
「おっ、いきなりクズ鉄鉱石が出た。これは期待できるかな」
サキは体力が続く限り、ツルハシを振り下ろした。
――インベントリ――
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
クズ鉄鉱石
――インベントリ――
30回ほど採掘を行った結果、欲していた鉄鉱石を手に入れることができたが、刀を作るためにはあと2つほど必要なため、インベントリを確認してから、再び鉄鉱石を振り下ろそうと思っていた。
「あれ? 鉄鉱石が3つある。採掘で出たのは1つだけだったと思ったんだけどなぁ……」
「アイアンゴーレムのドロップアイテムとかですかね?」
「確かにそれだ!」
鉄鉱石を3つ手に入れることができたため、ツルハシを振り下ろす必要はなくなったが、「掘るぞー」という気持ちを落ち着かせるために、一度だけツルハシを振り下ろすことにした。
――インベントリ――
上質な鉄鉱石 レア度3 品質D
鉄鉱石よりも鉄の純度が高く、品質も高い
――インベントリ――
「えっ、今来るの?」
彼女は3つ揃った時点でドロップした上質な鉄鉱石に対して、出てくるのが遅いよという思いを込めて、愚痴を漏らしたが、鉄鉱石はあって困る物ではないため、テンションは上がっていた。
『スキル 【採掘】を獲得した』
「はぁ、もっと早く出てよ」
追い打ちをかけるように採掘に補正が掛かるスキル【採掘】を手に入れたというアナウンスに対して、愚痴を漏らして、テンションが下がった。
tips
・鉄鉱石 レア度2 品質E
クズ鉄鉱石よりも鉄の純度が高く、品質も高い




