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NewLifeOnline  作者: Umi
第1章 酔いどれの鬼たち

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第34話 ファンタ鉱山

 サキたちはゴーレム戦でかなり消耗してしまったため、“ファンタ鉱山”の近くにあった村で休息することにした。

 その村には殆ど民家しかなく、できることはあまりなかったが、その村唯一の雑貨屋に採掘を有利に進めることができるツルハシが売ってあったため、購入してからファンタ鉱山へと向かった。


「ツルハシが売っていて良かったですね」


「そうだよね。買うのを忘れていたから、もし雑貨屋で売ってなかったら、一回ファスターに戻らないといけなかったからさ」


「きゅう!」


 比較的楽し気に話していたサキたちだったが、“ファンタ鉱山”の入口を前にすると、空気が程よく引き締まった。


「……じゃあ行くよ」


「はい」


「きゅう」


 “ファンタ鉱山”に足を踏み入れた。

 鼻をくすぐる土の臭い、そこに混じる水の臭いが嫌な感覚に陥らせてくる。


「……進もうか」


「……はい」


「……きゅう」


 嫌な臭いに顔を顰めながらも、進まないわけにもいかず、鉱石を手に入れるために足を進める。

 天井からパラパラと振ってくる砂埃が、いつ崩落してもおかしくない鉱山だと、不安感を煽ってくるが、ここはゲームのマップだから崩落することはないと思い込むことで、足を止めずに進むことができた。


「こんなところで戦おうものなら、すぐに崩落しそうな雰囲気だよね」


「そうですね、そこら中で砂埃が落ちていますからね」


「きゅう!」


 カグヤの警告を意味する鳴き声に、サキたちは気を引き締めた。

 道の奥から歩いてくる影が見える。全貌の殆どが地面と平行にあり、尻尾だけが上へと伸びているサソリ型のモンスター、アイアンスコーピオンが姿を見せた。


「鉄みたいな強度を持つサソリ……魔法を試すには最適な敵だね。“ホーリー”」


 サキが様子を見るために魔法を放つ。2度目ということもあり、ゴーレム戦ほど魔力を消費せずに“ホーリー”を使用することができた。

 モンスターを裁く断罪の光は、アイアンスコーピオンの鉄のように固い殻を突き破ってダメージを与えた。しかし一撃では倒し切るには至らず、アイアンスコーピオンの反撃を許すことになった。

 アイアンスコーピオンは尾の先をサキたちに向け、そこから魔法を放った。尾の先で創り出したのは、岩程度なら砕けるであろう先端の尖った土の塊だ。

 そんな土の塊が迫りくるのに対し、サキは居合の構えを取る。


「――ふっ」


 土の塊が身体に触れてしまう距離まで近付いた瞬間、目にも留まらぬ速さでの抜刀、淀みない振り抜きで頑丈な土の塊を真っ二つに切断した。

 魔法を使用した後隙、1秒にも満たない身体の硬直を狙って、一気に距離を詰める。


「“聖炎”」


 聖なる炎を纏った刃で狙うのは、強固な外骨格の隙間、すなわち関節だ。いくら聖なる炎を纏おうと、今の初心者の刀ではアイアンスコーピオンの外骨格を正面から破るほどの切れ味は出せない。そのため、曲げられるように外骨格が存在していない関節を狙う必要があった。

 アイアンスコーピオンは対抗するように鋏で刀を受け止めようとしたが、刃が鋏に触れる手前で止まった。

 そしてサキは鋏の付け根を狙って横向きに刀を振り抜いた。


「アリウム、カグヤ!」


「はい、“ポルターガイスト”!」


「きゅう!!」


 鉱山ということもあり、大きめな岩がゴロゴロ落ちており、その全てがアリウムの武器となる。彼女はその中でも大きな岩を持ち上げると、アイアンスコーピオンの頭上に持っていく。

 カグヤは一度距離を取り、一気に加速する。脱兎とは呼べぬ行動だが、その速度は脱兎を想像させるほどに速く、サキの目でも追うのがやっとなほどであり、当然アイアンスコーピオンの目では追うことすらもできない。

 

「落とすよ!」


 アリウムは岩を落とした。しかし落ちた場所は頭よりも奥で、アイアンスコーピオンの尾を踏みつけていた。岩が落下した衝撃で、アイアンスコーピオンの胴体が浮き上がり、本来地面と平行になっている腹部が露わになった。


「きゅう!!」


 そこに最高速度から放たれる飛び蹴りが炸裂した。尾が固定されていることで、後ろに飛び退いて威力を殺すということもできずに、飛び蹴りの威力全てをその身で受けた。

 当然その一撃が致命傷となり、アイアンスコーピオンはポリゴンとなって消えた。


「結構いい感じに勝てたね」


「はい、チームって感じの勝ち方です!!」


「きゅう!!」


 アイアンスコーピオンとの戦いで、チームという戦い方について手ごたえを感じたことをフィードバックしながら、再び採掘できる場所を探して鉱山の奥へと進んで行く。


 それから数分進むと、坑道の狭かった道から少し開けた場所に出た。そこには採掘できるであろう場所もあったのだが、複数のモンスターが陣取っていて、戦わずに採掘することは難しそうだった。


「戦わないと採掘できなそうですね」


「そうだね、ここにいるモンスターは採掘権を得るための試練的なモンスターかな?」


「きゅう」


 サキたちは複数のモンスターが居るということに臆することなく、開けた場所に足を踏み入れた。

 足を踏み入れた瞬間、それぞれ別の方向を見ていたモンスターたちが一斉にサキたちの方を見た。そして一斉に敵意を向けながら、動き出す。


「流石に強いと思うから、気を引き締めていくよ!」


「はい!」


「きゅう!」


 サキは抜刀し、アリウムは岩をポルターガイストで持ち上げ、カグヤは足で地面を蹴り付けて、いつでも戦闘に入れる体勢をとった。

 そして開戦の狼煙を上げたのは、サキたちが入ってくるまでは天井にぶら下がっていたバットというモンスターだ。バットは空中を縦横無尽に飛び回りながら、サキたちへ不可視の攻撃を放った。

 サキたちは突然襲ってきた頭痛に頭を押さえる。しかしモンスターたちは容赦なく襲い掛かってきた。


「――っあれは蝙蝠みたいだから……超音波!? みんな耳を塞いで!」


 サキの声に反応したカグヤとアリウムは急いで耳を塞ぐ。すると先ほどまでの痛みが嘘だったと思うほど、きれいさっぱり頭痛が止んだ。しかし耳から手を離せば、再び頭痛が戻ってきたため、両手が塞がったも同然だった。


「アリウム、ポルターガイストって掌をかざさなくても使える?」


「……分からないです。ずっと掌を向けて操って来たので……でもやってみます!」


 アリウムは目を瞑り、ポルターガイストに集中する。今までは掌を向けた先にポルターガイストを使うことで、その動きを安定させてきた。しかしポルターガイストは魔法ではなく、幽霊の身体から放たれる霊的な力であり、幽霊の身体の一部だと考えることもできる。つまりポルターガイストも手足を動かすように、頭だけで動かすことができる器官だ。


「アリウムの邪魔はさせないよ!」


 アリウムの集中を邪魔させないように、攻撃を仕掛けてくるモンスターに対して、足を使って妨害をしていく。蹴りだけではモンスターを倒すことはできないが、攻撃から守ることだけはできた。

 そしてその時がやってくる。


「ポルターガイスト!」


 ポルターガイストが近くの岩を掴んだ。当然手は耳を押さえたままで、バットの超音波の影響は受けていない。

 そして岩をバットへと投げつけた。空中に居ることと、超音波で耳を押さえていることに慢心して、油断していたバットが避けられるはずもなく、岩の下敷きになる。バットのような小さな身体では、岩の重さに耐えられるはずもなく、一撃でポリゴンへと変わった。

 

「“春風流・一閃”!」


 バットによる超音波が消えた瞬間、サキは重心を落として一閃の構えを取った。

 そしてモンスターの先頭に立つ鉱山ゴブリンの首を狙い、弾丸のように跳躍する。その勢いのまま、刀を振り抜き、ツルハシを持った鉱山ゴブリンの首を刎ねる。そのモンスターをポリゴンへと変えることはできたが、周りは敵だらけになってしまった。

 しかし彼女には仲間がいる。


「きゅう!」


 前脚と後脚を高速で動かし、最高速度になったカグヤが、サキにツルハシを振り下ろそうとしている鉱山ゴブリンに飛び蹴りをお見舞いした。鉱山ゴブリンは吹き飛び、ゴツゴツとした壁に激突する。

 残ったモンスターは3体の鉱山ゴブリンと4体のアイアンスライムだ。


「鉱山ゴブリンは私が倒すから、スライムの方は2人に任せていい?」


「もちろんです!」


「きゅう!」


 その返事を聞き、サキは姿を消す。そう錯覚してしまうほどに高速で、鉱山ゴブリンの目の前に移動した。アリウムたちが認識できないほどの速度を、鉱山ゴブリンが認識できるはずもなく、抵抗することなく1体の鉱山ゴブリンが首を刎ねられた。


「あと2匹!」


 完全にサキの姿を捉えた2体の鉱山ゴブリンは、ツルハシを構えて襲い掛かってくる。ツルハシが重く、鈍重な動きしかできない相手は、素早い動きを主に使用する春風流の恰好の的であり、サキにとって自分を高めるための獲物でしかなかった。

 彼女は一度刀を鞘に仕舞う。そして腰を下げて、重心を落とす。抜刀術の構えを取った刹那、そこに彼女の姿はなく、鉱山ゴブリンの背後にその姿はあった。

 鉱山ゴブリンは、目の前から敵がいなくなったことに驚いて、慌てて辺りを見渡そうとしたが、既に身体に自由はなかった。首が刎ねられたことを認識した頃には、既に身体がポリゴンになっていた。


「ふぅ、カグヤたちはどうかな?」


 サキの視線の先では、カグヤ、アリウムが4体のアイアンスライムと激闘を演じていた。

 アイアンスライムの鉄のように固い流体の身体に対して、飛び蹴りを放とうと、岩を落とそうと、致命傷になり得るダメージを与えることができなかった。


「全然ダメージが与えられない……」


「きゅう……」


 アリウムたちはアイアンスライムの特殊な防御力に苦戦し、テンションが下がり気味だった。しかし戦闘を楽しむサキを見習って、最後まで勝ちを諦めるという選択を採ることはない。


「“アクアボール”!」


 アリウムはポルターガイストでダメージを与えることを諦め、あまり使って来なかった青魔法でダメージを与えられないかを試みる。水の塊(アクアボール)がアイアンスライムに着弾する。するとアイアンスライムが痛がっているような素振りを見せた。


「魔法は効きますよ!!」


「きゅう!」


 カグヤは魔法が効くと聞いて、喜びの鳴き声を出したが、自身は攻撃魔法を持っていないことを思い出して、再びテンションが低い状態へと戻ってしまう。そのためカグヤはアリウムの援護にまわることを選ぶ。

 アイアンスライムたちはアイアンスコーピオンと同じように、土の塊を生み出し、それをアリウムに狙いを付けて放っていた。しかしカグヤの飛び蹴りによって拒まれるため、アリウムはダメージを受けずに済んでいた。

 そしてアクアボールは炸裂、土の塊は不発、それが何度も繰り返されていく内に、アイアンスライム3体、2体、1体と数を減らしていって、十数分の攻防の後、アリウムの完全勝利で戦闘が終了した。


「2人とも良いチームワークだったよ!!」


 サキは勝利したアリウムとカグヤのことを抱き寄せた。そして数分の間頭を撫で続ける。アリウムとカグヤが満足そうな顔を浮かべているのを確認した後、撫でを中断した。

 ナデナデを止めたサキは、元々の目的である採掘を始める。鉱脈と思わしき場所にツルハシを振り下ろし、出て来た石を確認する。


――インベントリ――


クズ石 レア度1 品質E

多少金属も含有しているが、取り出すことは難しい。


――インベントリ――


「クズ石……まあ、根気よくやれば、出てくるよね!」


 サキはドンドンツルハシを振り下ろしていく。することがないアリウムとカグヤは、周りを警戒しながら、サキの応援をしていた。


――インベントリ――


クズ石

クズ石

クズ石

クズ石

クズ石

クズ石

クズ鉄鉱石

クズ石

クズ石

クズ石

クズ石

クズ石

クズ石

クズ石

クズ石

クズ石

クズ石

クズ石

クズ石

クズ石


――インベントリ――


 20回ほど採掘したが、欲していた鉄鉱石は1つしか出てこなかった。出てきた物も、クズという枕詞が付く超低品質の物であり、1つだけではどうにもならないと、鍛冶未経験のサキですら分かっていた。


「……もっと奥に行かないと、良い鉄鉱石は手に入らないのかな?」


「多分そうだと思います」


「じゃあ進もうか」


「はい!」


「きゅう!」


 サキたちは深部を目指して進んで行く。



 tips

・クズ鉄鉱石 レア度2 品質E

クズ石よりも鉄を含有しているが、その鉄は微量で低品質。



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