第27話 思惑
サキたち3人は、周りから浴びせられる生暖かい視線を避けるため、ギルド職員の権限で利用できる会議室へと移った。
ミスズとリリルカが隣りになって座り、リリルカの対面にサキが座ることになった。そして先ほどからの気まずい状況が続いており、会議室には沈黙が鎮座していた。
第一声を発したのは、リリルカだった。
「先ほどはすみません。調査が終わったと聞き、居ても立っても居られず……」
「いえ、大丈夫です! 気まずかっただけで、嬉しかったですよ!!」
「そ、そうなんですね」
サキの言葉に、リリルカは再び赤面してしまった。顔が赤くなるのと共に、声が小さくなっていく。そして折角言葉が生まれようとしていた会議室において、再び沈黙が覇権を握ることになった。
沈黙、本来話すべき立場の人たちが気まずいのは勿論のこと、その場にいる第三者たちが一番気まずい立場と言える。この会議室における第三者とは、リリルカただ1人である。
「……はぁ、2人とも話さないのであれば、私が話を進めますよ」
「「お願いします」」
「はぁ、ではサキさん、調査の結果を教えてください」
「はい、まず“北の平原”で――」
サキは“北の平原”でボロボロになっていたスピードスパイダーと、その原因と思われるオーガについて話した。
「“北の平原”でオーガが……」
「……」
サキの説明に、ミスズは目を丸くして驚き、リリルカは分かっていたかのように頷いていた。
そしてサキは2人のある程度の反応を見終えてから、話を続けた。
「その後は北の森でオーガの群れと接敵しました」
「群れ……確かに“北の森”にはオーガが生息していますが、群れを形成するほどの数は居ないと思っていましたが……」
「……“北の森”で私の隊が壊滅していますから、ありえない事ではないと思います」
「私の隊?」
「サキさんは知らなかったんですか? こちらのリリルカさんは、このファスター領主の私兵であり、治安維持を任されている部隊の隊長さんですよ」
ファスター、それはこのゲームを始めた際に湧く街であり、どんな性格のプレイヤーだろうと最初は入れてしまうため、治安悪化の可能性が高い街になっている。そのため治安維持部隊はかなり高レベルで揃えられている。
「……ということは、リリさんが怪我を負っていたのは」
「はい、オーガが増えていると報告を受けたので、間引くために遠征に行きましたが、突然強大な何かに奇襲を受けてしまい、治安部隊は壊滅、隊長である私も街へと戻るのがやっとの怪我を負ってしまいました。その後はサキさんもご存じの通り、怪我で意識を失っていました」
「……たぶん私も、その強大な何かと接敵して敗北しました。そしてそれが何なのかも分かります」
一瞬だけ、会議室に沈黙が訪れる。
そして再びサキの口を開かれる。
「その強大な何かは、頼光というUMだと思います」
「UM!?」
驚きの声を上げるミスズに対して、リリルカは冷静に言葉を並べていく。
「その種族は?」
「酒呑童子」
「――」
サキの吐いた言葉に、2人は息を呑んだ。酒吞童子という強大なモンスターが近くの森に棲んでいることと、オーガが酒呑童子へと進化し、頼光という名前を持つに至るまで、誰も気づけなかったという事実に驚き、言葉が出なかった。
「酒呑童子なんて大物がUMになるなんて……我々治安部隊だけでは手に負えない……一度領主様に確認をとって参りますので、報酬の方はそれからでも構わないですか?」
「大丈夫です! でも1つだけお願いがあります」
「サキさんは命の恩人でもありますから、私にできることであれば言ってください!」
「もし討伐が行われるのであれば、私も同行させてください」
「同行ですか……うーん、私たち治安部隊も動くのであれば、部隊の一員として連れて行くことができますけど、もし王都から派遣された騎士団のみで討伐を行うのだとすれば、同行は難しいと思います」
「そうですか……出来ればいいので、お願いします」
「もし我々が同行するのであれば、名簿に入れておきますね」
リリルカはそう言い残して、会議室を後にした。残されたミスズは椅子から立ち上がり、サキの横に座った。
「サキさん、同行したいって本当ですか!!」
「は、はい」
あまりに顔を近付けて言ってくるミスズに対して、サキは少し引き気味で答えた。しかし彼女もまた端正な顔立ちをしており、そんな顔をまじまじと見た結果、サキの顔は再び真っ赤に染まっていた。
「酒呑童子は最強クラスのモンスターですよ!! ギルドが付けているランク制度では、SSランクに位置する現代を生きるモンスターの中では最強格ですよ!!!」
「それでも、私は戦いたいです」
「……そこまで意志が固いのであれば、私は止めません。でも今の貴女では足手まといになります。なので討伐の日が来るまでに強くなってください。そうでないと、ギルド職員として貴女を止めます」
「ありがとう、ミスズさん」
と言ってサキも会議室を後にした。
残されたミスズは椅子に身体を投げ出し、楽な体勢をした。
「はぁ、頑固な娘だなぁ。それにしても酒呑童子と戦いたいと言うなんて思いもしなかった……もしもの時があるし、そろそろ潮時かなぁ」
tips
・モンスターのランク付け
下からE,D,C,B,A,S,SSとされている。
過去にはSSSと評されたモンスターが数体いたが、現在は絶滅している。
【例】
E スライム、ウルフ、スピードスパイダーなど
D ブラウンベアー、オーガ、酒乱のゴースト
C 酒乱の鬼人
B 不明
A 不明
S 不明
SS 酒呑童子
SSS 不明




