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NewLifeOnline  作者: Umi
第1章 酔いどれの鬼たち

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第24話 浴びるように呑む

 サキは駆け出した。


「“春風流・一閃”」


 目のも留まらぬ速さでオーガとの距離を詰めると、首を狙って斬撃を放つ。狙われた個体は、金棒で防御しようとしたが、斬撃の速度に追いつくことができず、首を切られてしまった。


「1体目!」


 残り4体となったオーガは、舐め腐っていたサキのことを認め、だらりと引き摺っていた金棒を構えた。そして接近してくるサキへと金棒を振るう。


「おっと」


 サキは金棒が触れるギリギリで避け、一気に懐へと入った。刀を振り上げて腹から胸元辺りまでを斬りつけた。致命傷にはなっていないが、痛みでふらつかせることができた。

 そのままトドメを刺そうとしたが、別の個体が邪魔に入った。


「オーガにも仲間意識はあるのかな?」


「グラァァァァァ!!」


 オーガは脇腹を狙って金棒を振るったが、サキが地面に伏せたことで避けられてしまう。金棒が頭上を通り過ぎると、即座に立ち上がり、刀を横に振り抜いた。斬撃はあっさりオーガの強靭な筋肉を打ち破り、首を斬り落とすことに成功する。


「残り3体!」


 オーガは数を減らすにつれて攻撃が熾烈になっていく。金棒のスイング速度は速くなり、そもそもの身体能力も高まっているように感じていた。


「……仲間が死ぬにつれて能力が上がるスキルでも持っているのかな? まあ強い相手は大歓迎だよ!!」


 サキは笑った。

 そして一度刀を鞘に仕舞った。


「グラァァァァァ!!」


 オーガたちは勝機と思い、突撃を行う。金棒を振り上げ、持てる力全てを投じたフルスイングがサキを襲う。3体のオーガが、同時に別方向から放った攻撃は、サキから逃げ道を奪う。


「“春風流・居合花吹雪”」


 彼女の最高速度は金棒を置き去りにして、オーガの下へと到達させる。

 急接近からの抜刀。目にも留まらぬ速度で鞘から抜かれた刃、その軌道はオーガの首を捉えていた。既にフルスイングを始めていたオーガにその刃から首を守る手段は存在せず、ただ自身の首を斬られる光景を見ているしかなかった。

 1体の首が斬られる。そのまま流れるように斬撃が放たれる。舞うように刀を振るう彼女の姿は、狂気的だがどこか儚く、美しかった。

 そしてオーガは全滅した。


「……ふぅ、多少は楽しめたよ」


「無事でよかったです……」


「きゅう……」


 気まずい空気が流れる。


「あれ? オーガがやられているじゃん」


 気まずかった空気が一気に引き締まる。

 森の奥から姿を現したのは、人間としか思えない見た目をした存在だ。

 刀を持ったその男は腰に掛けた酒を浴びるように呑みながら、サキたちのことを嘗め回すように観察している。


『酒乱の鬼人』


 NLOのシステムは、目の前の男のことをモンスターと判断していた。


「うっ……あぁぁぁ!!! お前が私を――!?」


 その男を目にした瞬間、幽霊少女が悲鳴を上げ、そして怒鳴り声を上げる。今までフワフワした話し方だっただけに、怒鳴り声を上げた際のギャップで、サキは驚きが隠せなかったが、すぐに状況を理解し、“酒乱の鬼人”というモンスターに刀を向ける。


「なんだ? 俺とやるのかヒック」


「貴方がこの子を死なせたってことでしょ」


「この子って幻覚でも見てるのか? まあいいや。殺気を向けるってことは、やられる覚悟があるってことだよな」


 鬼人の姿が消えた。そう錯覚してしまうほどの速度で移動した。移動先はサキの背後で、移動と同時に刀を振り抜いた。

 サキは殺気に感じたことで、攻撃を受け止めることはできたが、鬼人の脅威的な移動自体は目で追うことができなかった。


「ほう、目で追えないのに止めるかヒック。ずいぶんと研ぎ澄まされた感覚を持っていやがる」


「褒めても何も出ないよ!」


 サキは競り合いでは膂力の差で勝てないと感じ、全力で刀を弾いてから距離を取った。

 彼女は追撃を警戒しながら距離を取ったが、鬼人がその場から動くことはなく、徒労に終わった。


「……どうして追撃しなかったの?」


「追撃なんて面白くねえだろヒック」


 そんな会話中にも鬼人は酒を浴びるように呑む。その顔は段々と赤くなっていたが、サキは特に気にしていなかった。

 再び2人は刀を合わせる。今度は正面からの斬り合い、膂力ではなく技術がモノを言う勝負だが、鬼人は、春風道場の師範であるサキに全く遅れを取っていない。それどころか、ガタイの良い体格を駆使した大振りの斬撃は、サキを追い詰めているようにも見えた。


「どうした、もう終わりか!? 俺はまだまだ楽しめてねえぞ!!」


「くっ――楽しませてあげるよ!!!」


 サキは刀を弾く勢いを使い、宙を1回転しながら距離を取る。そして駆け出した。鬼人からすれば全く同じ攻撃にしか見えない。ついにため息をついてしまった。


「はぁ、久々にツマミになる相手かと思ったが、結局殺戮以上のツマミにはならないか」


 鬼人は酒を一口呑み、向かってくるサキへと刀を振るった。



 tips

・鬼人

亜人種の1つ。森人(エルフ)土人(ドワーフ)などと同じで人間の近縁種。本来モンスターと分類されることはない。


・酒乱の鬼人

とある酒で狂った鬼人。とある酒に身体を侵されたことで、モンスターへと変貌してしまった。



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