第18話 天と地のモンスター
サキたちは、2時間近く残っているデスペナルティーの時間を、街をブラブラすることで暇を潰した。
「ようやくデスペナルティーが終わったよ」
「じゃあ“西の森”に行きますか?」
「うん、そうだね。今のまま“北の平原”に行ってもオーガに勝てないだろうし、武器を買うお金のためにハニービーの蜂蜜を手に入れよう!」
「おー!」
サキたちは雑貨屋の店主に“魔印の特製ポーション”のレシピを手に入れるため、“西の森”へと向かった。
“西の森”へ行くためには通らなければならない“西の平原”には、地面から奇襲を仕掛けてくるスモールワームと空を縦横無尽に飛び回りながら、魔法を撃ってくるマジッククロウが生息している。
「よーし、ほどほどに戦いながら、森を目指すよ」
「はい!」
「きゅう!」
門を潜ると、先に広がるのはゴツゴツとした岩場と、ぽつぽつと木が生えたマップだ。
「なるほど……土中からの奇襲だから、高い草は必要ないのか――っ」
サキは何かを感じ、飛び退いた。
刹那、人の脚ほどの大きさがあるミミズのような生物が、口を大きく開きながら、地面から飛び出してきた。
「あれがスモールワームかぁ」
スモールワームは、攻撃が空振りしたことが分かると、即座に土の中へと戻って行った。
「カウンターを狙わないと攻撃が当たらないなんて、厄介な相手だなぁ」
「でも、どうして来るのが分かったんですか?」
「うーん、説明が難しいけど、殺気を感じたから、なのかなぁ? なんか避けないとって思ったんだよね」
「なるほど……全然分からないです!」
「まあ幼いころから、刀を握ってきたおかげってことだと思うよ」
「すごいですね!」
「私なんて全然だよ」
サキはそう言いつつも、褒められて満更でもない様子であった。そして褒められたことで、彼女のテンションが上がる。刀に手を添え、抜刀術の構えをとる。
そしてその時がやって来た。
「“春風流・居合斬り”」
スモールワームはサキの脚に狙いをつけ、土をまき散らしながら土中から飛び出してきた。しかし彼女の脚を捉えることはない。スモールワームは、サキが立っているところから、一歩ズレたところに飛び出していた。つまり無防備な胴体をサキの目の前で晒している。
淀みない抜刀術は、一瞬にしてスモールワームの身体を細切れにした。
「ふぅ、案外簡単に倒せてよかった」
「やっぱりサキお姉さんは強いですね!」
「まあね」
サキはスモールワームのドロップを確認することなく、先へと進んで行く。目的である蜂蜜をドロップするハニービーは、“西の平原”の先にある“西の森”で出現するため、こんなところで油を売っている暇はない。
しかしスモールワームとのエンカウントが極端に多く、中々進むことができなかった。
「またかぁ」
サキたちは飛び退き、地面から飛び出したスモールワームの攻撃を避けた。ここまでは慣れたものだったが、今回は今までとは違う攻撃を受けた。
「痛っ!?」
サキは何かの急接近を感じ取り、咄嗟に腕で庇った。すると腕にかなりの衝撃を感じ、ダメージの発生源に目を向けた。そこにはこちらを見下しながら、滞空しているマジッククロウの姿があった。
「同時にエンカウント……一方は慣れたモンスター、一方は初遭遇のモンスター。慣れた敵の方から倒すのが定石だけど……私は初遭遇から倒すよ!」
サキは足を曲げる。そして一気に伸ばした。足の筋肉は小さな身体を空中へと送り出し、マジッククロウに肉薄する。彼女は、強靭な脚力によって発生した勢いを殺すことなく、抜刀する。そして刀を振り払った。
「やっぱり鳥に空中戦は勝てないかぁ」
あと一歩のところで刃が触れるというところで、マジッククロウは高度を上げてしまった。サキを空中へと押し上げた勢いは完全に死に絶え、ただ重力に任せて地面へと落下していく。
空中で体勢を立て直し、足の裏で着地しようと試みる。しかし体勢を整えられるほどの高度には至っておらず、地面に叩きつけられてしまった。
「――」
しかしここはゲームだ。現実ほどの痛みは受けていないため、即座にその場から退避した。すると元々いた場所に大量の水が降り注いだ。滝行よりも多い水量は、ゴツゴツとした岩場にクレーターを創り出した。
「【水魔法】かぁ。届かないところから魔法をバラまいてくるなんて、本当に厄介なモンスターだよ。それにスモールワームもちょっかい出してくるから、大変だ」
「いや、それは先に倒せばいいのでは?」
幽霊少女の冷静なツッコミが入る。しかしサキの耳に届くことはなかった。彼女は既に膝を曲げ、マジッククロウの下へと跳躍していた。しかしマジッククロウは避けない。ニタリと笑いながら、刃に触れないギリギリで高度を上げた。
マジッククロウの性格が悪いことは、1度目の攻撃を避けた際に見せたニタリ顔で分かっていた。そしてサキが無策で2度目の攻撃をするほど、甘い人間ではない。
「カグヤ!」
サキの懐に隠れていたカグヤは、地面の代わりにサキの身体を蹴って跳躍した。マジッククロウではその速度に対処できない
「きゅう!!」
カグヤはマジッククロウの喉笛に喰らいついた。
群れで虐められていた白兎はもういない。太陽のように明るい彼女の光を浴び、月のように輝き、夜を照らす光となる。
「きゅう!!」
――ステータス――
テイムモンスター
名前 カグヤ
種族 ルナラビットLv1
体力143/173
魔力420/500
スキル 月の波動Lv1 噛みつくLv5 足技Lv5 魔力増加Lv9
装備
アクセサリー
ルナラビット
ホワイトラビットが進化したモンスター。進化元のホワイトラビットが生き残ることは滅多になく、その存在について分かっていることは殆どない。満月の夜に現れたとの情報もあるが、確固たる証拠はないため、その生態は不明である。
tips
・モンスターの進化
モンスターによって進化のレベルは違う。そして進化先は1つだけとは限らない。
例:ホワイトラビットはLv15で進化する




