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バインドスキルで生き抜くファンタジー世界生活  作者: アブラゼミ
第4章「動き出す運命」

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第97話「兄弟」

「オイユイト、こっから先はお前1人でやれよ」

「ズ、ズルいよ兄ちゃん。父さんに2人でやれって言われただろ」

「いいからやれよ。じゃないとブン殴るぞ」

「わ、分かったよ……! もう、クレト兄ちゃんは乱暴なんだから……」


 畑の草刈りを、ボクは1人でやる。

その間兄ちゃんは、積んである藁の上に寝そべってひなたぼっこだ。

3歳年上のクレト兄ちゃん。

村の子供達の中で一番の暴れ者で、ケンカっ早く、腕っ節も強い。


「農作業なんてやってられっかよ、どうせ継がせてもらえねえし、学校卒業したら奉公に出されるし」

「それは……、次男坊三男坊はどこもそうでしょ?」

「生まれた順番で家を継げるか継げないかなんて不公平だろ。ま、オレは農家を継ぐなんて真っ平ゴメンだけどな」


 3人兄弟の真ん中で、次男のクレト兄ちゃんはいつもこの話をしている。

いつも農家の仕事はサボるし手伝いだってしないし、ボクに押しつけてくるしでイヤな奴だけど、ボクが川で溺れた時やいじめられた時は助けてくれたし、たまにお菓子をくれるしでいい奴でもある。


「ユイト、オレは決めたぜ。金を貯めたら奉公先なんて抜け出して冒険者になってやる。つまらねえ仕事なんて、装備を用意する金を貯めるまでのガマンだ」

「冒険者?」

「そうさ、冒険者だ。世界のあちこちを冒険して、モンスターを倒して金を稼いで、ゆくゆくは魔王だってオレが倒してやるんだ」

「へえ……! カッコいいなあ……! ボクも冒険者になろうかなあ……!」

「やめとけやめとけ、弱っちいお前が冒険者になんてなっても、すぐ死ぬだけだ。大人しくどっかでつまんねえ人生送っとけよ」

「いいじゃん夢くらい見たって。それに鍛えたら強くなれるかもしれないだろ?」

「ムダムダ。お前なんかが強くなってもたかが知れてんだろ。ゴブリンにも殺されるようなクソ雑魚冒険者にしかなれねえよ」

「それはそうかもだけどさあ……」


 ちょっとくらい夢を見たっていいじゃないか、兄ちゃんのイジワル。

そう思うボクの前で、クレトがへへんと笑う。


「オレが鍛えてやってもいいぜ? ていうか今だって鍛えてやってるようなもんだろ? 農作業でトレーニングだ」

「ただ押しつけてるだけでしょ? ったく、調子いいんだから」


 最近、クレト兄ちゃんの口調が移ってきてる気がする。

兄ちゃんはケンカっ早くて乱暴者だけど、頼りになるしボクの憧れの存在だ。

兄ちゃんが冒険者になるなら……ボクも冒険者になってみてもいいかもしれない。


「兄ちゃんはどんな冒険者になりたいの?」

「そりゃあ『鉄拳のブシン』みたいな格闘家かな。剣や魔法は使える気しねえし、拳で悪いモンスターや魔王をぶちのめすぜ」


 クレト兄ちゃんが、上半身を起こしシュッシュッと拳を振るう。

兄ちゃんはケンカに強いし、モンクに向いているかもしれない。

ボクが冒険者になるんだったら……


「ボクは剣か魔法使ってみたいな! 魔法剣士とかに、なってみたい!」

「ムリムリ、お前じゃ剣も魔法も使えねえよ」

「やってみなくちゃ分かんないじゃないか、兄ちゃんのイジワル!」

「ハッハッハ! 見る前から分かるぜ。お前はどうせしょっぱいスキルしか使えねえよ」


 イジワルして笑うクレト兄ちゃん。

見てろよ、いつか絶対魔法を使ってあっと言わせてやるんだから。

そんな決意を固めるボクの前で、兄ちゃんが口の端に笑みを浮かべる。


「まあお前なんかじゃ大した冒険者になれねえだろうし、向いてねえと思うけどよ」

「けど……?」

「もしお前が冒険者になったら、オレがお前を最高の冒険の旅に付き合わせてやるよ」

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