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バインドスキルで生き抜くファンタジー世界生活  作者: アブラゼミ
第4章「動き出す運命」

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第96話「サレン様祭り 2日目午後」

「いいんですよ? 別にいいんですよ? サレン様のお願いを、(しもべ)であるわたしが叶えるのは当然の事です。ですがわたしもお祭りを回るの楽しみにしてましたし、ユイトさんと色々食べたりしたかったです」


 ご機嫌斜めなアスミちゃんが、珍しくサレン様への愚痴をこぼしている。


「じゃあ今から何か食べれば」

「おなかいっぱいです」


 どうやらサレン様に身体を借りられている間に食べた物は、アスミちゃんに受け継がれているらしい。

アスミちゃんは、唇を尖らせ眉根を寄せた。


「それだけではありません。ユイトさん、随分楽しそうでしたね」

「え?」

「ユイトさんの顔、ずっとデレデレしてました」

「そりゃあ、サレン様だし。女神だし。デレデレしちゃうのは無理ないっていうか」

「じゃあわたしとサレン様、どっちが可愛いですか?」


 猫耳パーカーを着けたアスミちゃんが、俺の目をジッと覗き込んでくる。

天使のように可愛いアスミちゃんに猫耳がついた事で、その破壊力は抜群だ。


「アスミちゃんもサレン様に負けないくらい可愛いよ」

「そこはわたしの方が可愛いと言って欲しい所ですが、お相手はサレン様ですからね。まあよしとしましょう」


 ご不満な様子だが、少しだけ機嫌を持ち直したようなアスミちゃんが俺の手を取る。


「ユイトさん! あっちに屋台がありますよ! 食べ物系以外で楽しみましょう!」


アスミちゃんが、天使のような笑顔を浮かべて俺の手を引く。

俺は、アスミちゃんに引っ張られるままついて行った。




****************************




「えいっ! あ~……また外しちゃいました」


 アスミちゃんが射的の銃を下ろし残念そうな顔をする。

5発撃って5発とも外れだ。500マニーで6回だから後1回しかない。


「アスミちゃん、最後の1回は俺が撃つよ。どれが欲しい?」

「え? では、あのクマさんを……」

「りょーかい」


 アスミちゃんから射的の銃を受け取り、俺は台の上に膝を乗せてクマのぬいぐるみに向けて手を伸ばして銃が少しでも近くになるように構える。


「……それって、いいんですか?」

「いいんだよ。これが正しい射的の作法だ」


 アスミちゃんは疑問を呈すが、屋台のおっちゃんも止めないしこれが正しい射的のやり方だ。俺は狙いを定めて銃を放つ。

弾は見事にクマのぬいぐるみに当たり、ぬいぐるみは仰向けに倒れた。


「ほい、アスミちゃん」

「あ、ありがとうございます……! わあ……!」


 屋台のおっちゃんからもらったクマのぬいぐるみを手渡すと、アスミちゃんが天使のような顔を輝かせる。

安物のパチモンだと思うんだけど、喜んでもらえてなによりだ。

普段は1人で神官の仕事をこなしているしっかり者の彼女なだけに、そのギャップにキュンと来てしまう。

正直、異性として意識している子なので2人きりになるとドキドキする相手だ。

ファーストキスの相手でもあるし……


「? どうかしましたか?」

「いや、何でもないよ」


 つややかな桜色の唇に目が行ってしまい、慌ててごまかす。

あの感触を思い出すと、未だにドギマギする。

そしてうぬぼれでなければこの子は俺に好意があるだろうし、どうしても意識してしまう。

まあ最近はセイラの胸も意識してしまうんだけど……


「アスミちゃん、楽しいかい?」

「はい! とっても! 去年までは魔法学校と修道院で修行の日々でしたから。お祭りの日もバザーの手伝いに駆り出されてたんです」

「今は? 何もしなくていいのか?」

「それが司祭の仕事は特にないんです。昨日でもう終わっちゃいました」


 アスミちゃんがクマのぬいぐるみを抱えながら鼻歌交じりに歩く。

耳がいいからか、アスミちゃんは歌が上手い。

しかし15歳のこの子が世間一般の大学にあたる魔法学校を卒業しているとは改めて恐れいる。


「ユイトさんは? 楽しいですか?」

「ああ、楽しいよ」


 去年まではサレン様祭りにあまり参加しなかっただけに今年は楽しい。

領主への水かけには参加したが、皆に迷惑をかけていた引け目もあって心から楽しめなかった。

でも今は、ちゃんと楽しめている。

それはきっと、隣にいるこの子の存在が大きいわけで……


「♪~」


 鼻歌を歌いながら歩くアスミちゃんを見ながら、俺は改めて彼女への感謝を抱く。

彼女があの時、俺の命を救ってくれたから。俺の事を叱ってくれたから俺は今こうして生きている。

アスミちゃんは俺にとって、命の恩人だ。

第一王子の件で助けたとはいえ、彼女には一生かかっても返しきれない恩がある。


「アスミちゃん、次は何する?」

「そうですね、次はあそこにしましょう!」


 意識を変えるように問いかけると、アスミちゃんがヨーヨー釣りの屋台を指さす。

この子は案外子供っぽい所もあるのかもしれない。子供の頃孤児だったというし、子供らしい体験をあまりさせてもらえなかったんじゃないだろうか。

そんなアスミちゃんとヨーヨー釣りの屋台に向かおうとすると、

突然辺りに大きな破壊音と悲鳴が響いた。


「なんだ!?」

「ユイトさん! あそこです!」


 耳のいいアスミちゃんが指さす方を見ると、倒れている男女と謎の影が見える。

砂煙でよく見えないが人のようだ。いや? 人にしてはシルエットがおかしいような?

目をこらして謎の影をよく見ようとするが、その姿が一瞬にして消えた。


「うわあっ!?」

「きゃーっ!?」


 手をつないでいた男女が吹っ飛ばされ、派手に宙を舞う。

謎の影は人を襲っているようだ。

先に倒れていた男女も血まみれでケガをしている。


「なにもんだ! 『バインド』!」


 俺はマジックバックから縄を取り出し謎の影に投げつける。

しかし縄は躱され、屋台の柱を縛り付けた。

すさまじい速さだ。

すさまじい速さで謎の影が動き回っている。


「『サンクチュアリ』!」


 しかしアスミちゃんの聖域魔法が謎の影を捉える。


「……どんなに速くても、わたしの魔法は狙った者を逃がしません。あなたは一体誰ですか! お祭りを台無しにして何がしたいんですか!」


 アスミちゃんが怒りながら謎の影に問いかける。

しかし謎の影は問いに答えず、聖域魔法を壊そうと暴れている。

その姿が鮮明になってくる。

赤い肌に、くすんだ紫の髪。頭には2本の小さな角。モンクが身につけるような黒い道着を着た魔人だ。

格闘家らしく、拳や蹴りで聖域魔法を壊そうと暴れている。

その胸には、何やら黒い玉のようなものが埋め込まれていた。

問題はその、道着の背中に描かれているものだった。


「魔王の、幹部の紋章……!」


 リューガやイゾウ、ゴーレム使いがつけていた魔王の幹部の紋章に俺は驚く。

けれどもその魔人の顔を見て、俺は更に驚く事になった。


「お前……っ!?」

「……っ!」


 俺の顔を見て、そいつがチッと舌を鳴らす。

そしてひときわ力を溜めたような正拳突きで、アスミちゃんの聖域魔法を壊して脱出した。


「オイ! 待て! 待て!!!」


 街の外へと逃げようとするそいつを、俺は慌てて追いかける。

すさまじい速さだ。

でも逃がすわけには行かない。


「待て! 逃げるな! オイっ!!!」

「っ!」


走り、物を投げ、ショートカットで回り込みそいつを捕まえようとする。

けれどもそいつは、俺を軽々飛び越え、城壁も飛び越えて街の外へと逃げていった。

逃げられて、しまった。


「……ハアッ、ハアッ! クソッ! クソクソクソ! なんてこった!」

「ユイトさん!」


 怪我人を治療してきたのか、アスミちゃんがかなり遅れて息を切らしながら俺に追いついてくる。

しかし俺は、そんなアスミちゃんを気遣う余裕もなく拳を地面に振り下ろした。


「なんてこった……! あの野郎……!」

「ユイトさん……? 一体どうしたんですか?」


 アスミちゃんが、心配そうな目で俺を覗き込んでくる。

俺の様子に何かあると気づいたのだろう。

実際、大アリだ。

なぜならあの魔人は……


「クソ! なんでなんでなんで! なんでアイツが魔人なんかに! なんでアイツが魔王の幹部なんかに!」

「ユイトさん! 落ち着いて下さい! あの魔人がどうかしたんですか!」


 俺は、地面を一発強く殴ってからあの魔人が誰なのかアスミちゃんに伝えた。


「あの魔人は……! あの野郎は……! 俺の兄貴だ……!」

 魔法が使える者には、杖がなくても魔法が使える者と、

杖がないと魔法が使えない者がいます。

アスミとミアは杖がなくても魔法が使える。

リリーとレベッカは杖がないと魔法が使えません。

杖なしで魔法が使える方が少ないです。

ミアはなんだかんだ言って優秀な魔法使い。

ただし、杖があった方が効果が大きい。

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