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バインドスキルで生き抜くファンタジー世界生活  作者: アブラゼミ
第4章「動き出す運命」

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第95話「サレン様祭り 2日目午前」

 サレン様祭り2日目。

2日目からは水かけは禁止のため普通の仮装祭りになる。

その2日目に、俺はアスミちゃんと出店を回る約束をしていたのだが……


「……なんでいるんですか、サレン様」

「アスミに身体を借りたのです。かなり渋られたので午前中までの限定ですが」


 頭にフードをすっぽりと被ったサレン様が、チロっとイタズラっぽく舌を出す。可愛い。サレン様マジ女神。

どうやらアスミちゃんの身体を借りてこの世界に顕現しているらしい。


「アスミはわたくしの僕の中でも特別ですからね。身体を借りる事ができるのです」

「アスミちゃんはどうしてるんですか?」

「『死者の部屋』で待ってもらってます。今頃あそこから私達を見ているんじゃないでしょうか」


 あの白い部屋でサレン様の椅子に座っているアスミちゃんの姿を想像するとシュールだが、本人はお祭りを楽しみにしてただけに複雑だろう。

まあサレン様は午前中の間だけって事だから、午後から楽しませてあげる事で勘弁願おう。


「どうですか冒険者ユイト、似合いますか?」


今日のアスミちゃん、もといサレン様は猫娘の仮装をしているのか、上は猫耳の着いた白いフード付きパーカーをすっぽり被り、下は白い短パンを履いている。お尻にはしっぽもついている。可愛い。


「世界一、いや宇宙一可愛いです」

「まあ、お世辞が上手なんですから」


 いや、お世辞じゃなく可愛い。

本当に可愛い。サレン様マジ女神。


「それにしても、相手が俺でいいんですか?」

「よいのです。あなたはわたくしのお気に入りですからね。一緒にお祭りを楽しませてください」


 お祭り好きらしいサレン様が出店などを見て目を輝かせている。

しかし周りの人間はサレン様に気づいていない。

どういう仕組みかは分からないが、神の力か何かで注目されないようだ。

誰もサレン様の顔を見ている様子がないし、自然に避けていっている。


「サレン様」

「はい、何ですか?」

「サレン様って、昔この街に来た事があるって本当ですか?」

「本当ですよ。アスミの前の神官の身体を借りて顕現しました。祭りの2日目でしたね。最後は大きな花火を上げて帰りました」


 どうやら伝説は本当だったらしい。そしてサレン様本当に花火上げてた。

サレン様が、チロっと舌を出す。


「さすがに今日は午前中だけですので花火は上げませんけどね。最後に何かやろうと思ってるのでお付き合いください」


 どうやら何かしでかす気のようだ。この女神様は本当にお祭り好きらしい。

ならば信徒として付き合おう。


「分かりました、サレン様。まずは何をしますか?」

「とりあえず……屋台で色々おごってください♡」


 所持金ゼロのようだ。でも可愛いから許そう。




****************************




「サレン様、次はどこに行きますか?」

「そうですね……。あちらで大道芸をしてますよ。見ていきましょう」


 俺のおごりで色々食べて楽しんだサレン様が、街の広場を指さす。

ちょうど今はピエロが大道芸をしているようだ。

大玉に乗りながらのジャグリングに拍手が湧き上がる。

しかし思ったより反応が薄い。


「冒険者ユイト? なぜこの街の人達はあの芸を見ても反応が薄いのですか?」

「それはですね、この街にとびきりのお祭り娘がいるからですよ。……あっ、出てきた出てきた」


 ピエロと入れ替わりで、露出の多いサキュバスの仮装をしたミアがギターをかき鳴らしながら出てきた。


「お祭り2日目ー! 盛り上がり足んないんじゃないのー!? もっと盛り上がっていきましょー!!!」


 風の魔法の応用で声を大きく響かせたミアの呼びかけに、街の皆が歓声を上げる。

普段から度々ストリートライブをしているミアは街の人気者だ。

炎の魔法の応用だという魔法の文字や絵が浮かび上がり、ミアがギターをかき鳴らし始めると、観衆の声援が大きくなる。


「行くわよー! ウォイ! ウォイ! ウォイ! ウォイ!」


 曲調はハードロックなのに、歌詞は甘々の恋愛ソングに観衆達が沸き立つ。

サキュバスの仮装が受けているのもあるだろう。年々過激になってる気がするが、ミアはああ見えて身持ちが固いタイプなので羽目を外しすぎる事はないだろう。

すさまじい勢いで、ギターをかき鳴らしながらミアが3曲演奏を終える。

アンコールが湧き上がるが、持ち時間が決められてるせいか次の演者が出てきてミアは引っ込む。まあこの後またステージに立つんだろうけど。


「すごいステージでしたね。あの者にあんな才能があるなんて知りませんでした」


 サレン様も大興奮の様子で、手を振りながらステージを降りていくミアに拍手を送る。


「ミアは元々音楽一家の出らしいですからね。本人は魔法が好きだから冒険者になったけど、音楽でも食っていけるんじゃないでしょうか」

「そうですね。むしろ音楽で食べていった方がいいんじゃないでしょうか?」

「……それは言っちゃいけない事ですよ、サレン様」


 天才魔法使いとしてチヤホヤされてたせいか、魔法の鍛錬を怠っていたミアは今じゃすっかり影の薄い元・天才魔法使いだ。まあ色々器用だし普通に優秀な魔法使いなんだけど……


「これは負けていられませんね。ここはわたくしも……」

「えっ? サレン様?」


 サレン様が猫耳の着いたフードを外し、おもむろにステージへと上がる。

突然の闖入者に周囲がざわつくが、その白い髪と美しい顔を見てどよめきが上がる。


「みなさーん! 盛り上がってますかー!?」


 サレン様の問いかけに一瞬静かになり、大きな声が上がった。


「サ、サレン様!?」

「サレン様似の別人じゃないか!?」

「いや! あれはサレン様だ!」

「で、伝説は本当だったんだ!? ありがたや! ありがたや!」


 後光のように白い光を輝かせ、笑みを浮かべるサレン様に観衆達も本物のサレン様だと気づき拝んだり、涙を流したりして感激しだす。


「わたくしのお祭り、楽しんで下さってますかー!」

「もちろんですー!」

「サレン様ー!」

「生きててよかった……! ああ、ありがたや! ありがたや!」

「サレン様! 握手を!」

「ズルい! 俺が先だ!」

「私が先よ!」

「ワシじゃ!」


 ステージに向けて、観衆達が殺到する。

いかん、このままじゃサレン様がもみくちゃにされて押しつぶされる。


「『サンクチュアリ』」


と、思った矢先にサレン様が、アスミちゃんが使う聖域魔法を唱えて押し寄せる観衆達を止めた。


「そんなにいっぺんに来ないで下さい。順番に、列を作って並んで、ですよ? わたくしの僕達ならできますよね?」

「はい! サレン様!」

「オイ皆! 並べ並べ! 1人ずつ順番にだ!」


 サレン様の言葉に、観衆達が一列に並び出す。

カイルやミア、ノッシュの家族達も並んでた。

俺も並ぼうかと思ったけど、この人数に付き合わされるサレン様に気が引けて並ぶのはやめた。

サレン様は1人1人と握手を交わし、祝福を与え続けた。

30分くらい経っただろうか。

お昼の鐘が鳴り響き、握手を仕切れなかった人達に詫びた後、サレン様が手を空に掲げた。


「最後にわたくしからとっておきのプレゼントです! ……『ディバイン・ホーリーライト』!」


 サレン様が白い光を両手に掲げ、振り下ろす。

アスミちゃんの『ホーリー・レイ』を強化したような魔法だ。

辺り一帯に白くあたたかな光が広がり、しあわせな気分に包まれる。


「冒険者ユイト、今日はありがとうございました」


 耳元で声がする。

サレン様がいつの間にかこっちに来ていた。

そして、


「……」


 む~っとした顔のアスミちゃんに姿が変わった。

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