第93話「夏野菜カレー」
7月に入り、朝でも気温が高くなっている。
収穫用の鋏を動かしながら、俺は滴る汗を拭った。
「ユイト、これも食べ頃なのではないか?」
「そっちの苗はまだだ。まだ水を抜いて甘味を引き出してるからな。こっちの苗の赤く実ってる奴を採ってくれ」
「分かった」
いっしょに手伝っているセイラは、麦わら帽子を被りどこか楽しそうだ。
2人でトマトやナス、キュウリやニンニク、トウモロコシを収穫していく。
今日は春から植えていた夏野菜の収穫の日。
夜にはレベッカとアスミちゃんが夏野菜を使った料理を食べに来る。
「フウ、たくさん採れたな。どれもよい出来だ。これならアスミ様もお喜びになるだろう」
「ああ、そうだな」
みずみずしい実を光らせているカゴいっぱいの野菜達を満足げに眺めながら、俺達は頷く。
「して、これで何を作るのだ? 私には全然想像つかないが……」
料理が一切できないセイラが、俺に問いかけてくる。
俺は、昨日決めていたメニューを発表した。
「トマト、ナス、ニンニクとくれば……カレーだろ」
セイラが、ゴクリと生唾を飲んだ。
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「お待たせ」
「おお……、おお? ドライカレーか?」
「違う、キーマカレーとキュウリとコーンのサラダだ」
「違いが分からんが……頂きます」
昼になって、俺の作ったキーマカレーをセイラが1口食べる。
「……うむ、普通にうまい」
「そりゃそうだ。普通に作ったからな」
「……いや、普通にうまい。うまいぞ」
セイラがスプーンを次々動かして、カレーとサラダを食べていく。すごい勢いだ。
俺もカレーを1口食べる。
トマトの酸味とひき肉の旨味。大きめに切ったニンニクの香りとパンチ。ナスの食感もいいアクセントになっている。
うむ、我ながらいい出来だ。
「お代わり」
「あいよ」
一応大盛りに盛ったのだが、あっという間に空にされお代わりを注ぎに行く。
「お代わり」
「あいよ」
お代わりも大盛りに盛ったのに、あっという間に空にされお代わりを注ぎに行く。
「お代わり」
「……あいよ」
また大盛りに盛ったのに、あっという間に空にされお代わりを注ぎに行く。
もっと味わって食えばいいのに……
「お代わり」
「……」
マジかコイツ。
どんだけ食うんだ。仕方ないのでお代わりを注ぎに行く。
そして……
「フウ、ごちそうさまでした」
「もういいのか?」
「ああ、昼だし軽めにしとかないとな」
「……」
マジかコイツ。
これで軽めとかふざけてんのか。いや前から食う奴だとは思ってたけど、その分どこに行ってんだ。
念のために多めに作ってご飯も炊いておいたけど、ここまで食われるとは思っていなかった。
「……? どうした?」
「いや、そこまでおいしそうに食べて貰えたら野菜達も本望だろう。本望だろうけどよ……」
「なんだ?」
「レベッカとアスミちゃんの分、なくなっちまったな……」
「……」
この後、夕方来たレベッカとアスミちゃんはセイラにブチギレ。
翌週収穫した夏野菜でまたカレーを作ったけれど、
セイラは物置にバインドで吊して食べさせなかった。
セイラ「ご褒美だ!」




