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バインドスキルで生き抜くファンタジー世界生活  作者: アブラゼミ
第1章「バインドスキルではじまる男の物語」

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第9話「男の戦い」

「ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハアッ…」


 無様。

男の戦いはその一言に尽きた。


「グルオオオオオ!!!」

「クソッ! ハアッ、ハアッ…!」


 キメラに追いかけ回されながら、走り、転がり、逃げ回る。

男に荒らされて、大地からは土の匂いが漂っていた。


「このっ…! 食らいやがれ! 『バインド』!」

「っ!!?」


 キメラの迫り来る牙を封じるように、ユイトがバインド用のロープを投げる。

ライオンの頭をグルグル巻きにされたキメラが、不快そうに爪でロープを取ろうとする。

これで厄介な牙と爪を封じた。


「シャーーーー!!!」


 けれども尻尾のヘビが、ユイトに噛みつかんとしてきた。


「シッ!」

「シャーーーー!!?」


 ユイトがとっさに煙玉を投げる、煙に視界を封じられ尻尾のヘビが怒ったように暴れ出す。


「あ、危っ!? 危ねえ!?」


 無茶苦茶に暴れるヘビの攻撃を躱し、ユイトはどうにかこうにか生き延びる。

生き延びようと、するんだけど……


「……やっぱ、そうなるか」

「ガオオオオオン!!!」


 人間なら動きを封じられるバインドかもしれないが、パワーが違う高レベルモンスターはバインドを引きちぎってしまう。

怒り心頭の様子でキメラのライオン頭とヘビの尻尾がユイトを睨む。

空も飛べる上に足も速いキメラから逃げ出すのは至難の業だ。

ユイトはやけくそで懐に手を入れて何かを投げようと……


「『インフェルノ!!!』」


 した直前で私が放った獄炎の炎がキメラの身体を包んだ。


「――――――!!?」


 声にならない断末魔を上げて、キメラが一瞬で消し炭になる。

高レベルのモンスターが黒焦げに焼ける匂いはいい匂いだ。

あたしはこの匂いを嗅ぐ度に、冒険者をやっている実感を感じる。


「なーに、キメラなんかに手こずってるのよ」

「……お前にとってはそうだろうけど、俺にとっちゃキメラなんて高レベルモンスターなんだよ。レベル4なんだからな。助けてくれてありがとう」

「別に助けた訳じゃないわよ。倒さないとクエスト失敗になるでしょ」


 あたしの傍らには、すでにこんがり黒焦げのコカトリスが転がっている。

この男の実力がどんなもんかと思い試しにキメラを任せてみたものの、あまりに無様な戦いをしてるから手を出してしまった。

目の前で死なれるのも寝覚めが悪いしね。

それにしても……


「……いいや、きっと気のせいね。それか偶然だわ」

「何がだ?」

「何でもないわよ。それじゃギルドにクエスト達成の報告に行くわよー。報酬は私9:アンタ1でいい?」

「……いいぞ。俺は何もできてないし」


 息も絶え絶えに、ユイトがパンパンとマントについた土を払う。

その身体と服には、傷ひとつ付いていなかった。

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