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バインドスキルで生き抜くファンタジー世界生活  作者: アブラゼミ
第3章「男の正体」

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第83話「決死の策」

 すさまじい音がして、ゴーレム達が宙を舞う。


「行くぞ!」

「「「オオー!!!」」」


 セイラを始めとする戦士系の冒険者達が、ゴーレムの大群の真ん中を突っ切り進み始める。

その勢いは洪水のごとく奔流で、セイラが大剣を振るう度にゴーレム達が吹っ飛んでいく。


「『フレイム・インパクト』!」


 そして魔法使いなのに接近戦の方が威力があるレベッカの魔法が派手にゴーレム達を焼く。

突破力のあるセイラと、派手で目立つレベッカ。

その2人を守るようにゲイルとノッシュが脇を固め守りながら進んでいく。

他の戦士系の冒険者達も頑張っているようだ。


「『トルネード・ボンバー』!!!」

「『ママラガン』!!!」


 戦場の左右では、それぞれミアとリリーの最大火力の魔法が猛威を振るい、ゴーレム達を次々派手に倒していく。

もう少しペース配分を考えて欲しいが、あの2人にはそれくらい派手に目立ってもらわないと困る。

なぜなら、


「準備はいいか、マシュー、バロン」

「ああ、任せろ」

「バロン、行ける」


 ゴーレムの大群の背後に回った俺達が、ゴーレム使いに気づかれないようにするためにだ。





****************************




「俺に考えがある」


 俺に向けてセイラの、レベッカの、アスミちゃんの、皆の視線が集まる。


「考え? 何の考えがあるの?」

「アイツらを、いや、あのゴーレムを操っているゴーレム使いを倒す考えだ」


 レベッカの問いかけに、俺が答えるとセイラが眉根を顰めた。


「ゴーレム使い? なんだそれは」

「昔ジンジャーに聞いたんだ。ゴーレムを作って操るモンスター、ゴーレム使いがいるって話を」

「……詳しく聞かせてもらおうか」


 セイラの問いかけに頷き、俺は昔ジンジャーから聞いた話を簡潔にまとめる。


「ゴーレムは本来、誰かの指示で動くモンスターだ。自分を作った奴とか、自分を従わせた奴とかな。あの数のゴーレムをまとめるとなると、ゴーレム使いっていうモンスターがいるらしい。そしてそのゴーレム使いは、あの中にいる」

「あの中……。あのゴーレムの大群の中にか」

「ああ、昔ジンジャーがある村を襲ったゴーレム達を倒した時も、あるゴーレムを倒したら途端にゴーレム達の動きが止まって動かなくなったらしい。そのゴーレムの中に、ゴーレム使いがいたんだってよ」

「そのゴーレム使いってのは、どんな奴なんだ?」

「ジンジャーの話じゃ、小さいモンスターだそうだ。ゴーレムの胸の中に入って、指示を出したりゴーレムを操ってるらしい」


 俺の話を聞いていたゲイルが、嘆きの声を上げる。


「ゴーレムの中って……。あの数のゴーレムの中からゴーレム使いを見つけねえといけないのか!? そんなの無理だろ!」

「全部倒すのは無理だろうな、でも全部倒す必要はないんだ」

「さっきもそんな事言ってたわよね、どういう事?」


 レベッカの問いかけに頷き、俺は皆を見て策を伝える。


「ゴーレム使いはあの大群の真ん中か、後ろの方にいる。そいつを叩くんだ。そしたらゴーレム達の動きは止まる」

「なぜ真ん中か後ろにいると分かるんだ?」

「ジンジャーに聞いたんだ。ゴーレム使いはそういうもんだってな。全体が見渡せる真ん中か、安全な後ろの方にいるらしいんだ」

「……なるほど、司令塔ならそうだろうな」

「ジンジャーが言うんなら間違いねえな。しかし、胸クソ悪い敵だな……」


 セイラが頷き、カイルが顔をしかめる。


「そこで二手に分かれてゴーレム使いを倒す策が有効だと思う。一班はセイラとレベッカを中心に真正面から前に進んで真ん中にいるゴーレムを狙うチーム、もう一班は隠密に長けるバロンとマシュー。それに言い出しっぺだ、責任を取って俺も参加しよう。ゴーレムの背後に回って後ろから襲って後ろにいるゴーレムを狙うチームだ」

「オイオイ、どっちにしろ無茶な作戦だな……。いくらセイラの姉ちゃんの突破力とレベッカの火力があるっていってもあの数のゴーレムを突破するのは無茶だし、お前達だって囲まれたらただじゃ済まねえぞ」

「無茶は承知の上だ。ただ今のところこれくらいしか作戦が思いつかねえ。無理にとは言わねえよ。こんな作戦付き合えねえと思う奴は降りていいし、何か他にいい策があるならそれにしていい」

「……いや、ここはユイトの策に乗ろう」


 セイラが、俺の策に乗る意見を真っ先に表明する。

その視線は、こちらに近づいているゴーレムの大群を向いていた。


「もう時間がない。あれこれ考えている暇はないし、ジンジャー殿の話なら信用できる。私はユイトの策に乗るが皆はどうだ?」

「オレもユイトの策に乗るぜ。おいしい所、頂いちまおうか」

「バロンも、乗る」


 セイラの問いかけに、一番危険なチームに割り振られたマシューとバロンが賛同の意を示す。

それに、冒険者のまとめ役のカイルも頷いた。


「決まりだな。ユイト、俺達遠距離持ちはどうしたらいい?」

「カイルやリリー達はセイラチームの援護と、できれば左右で派手な魔法を使って欲しい。ゴーレム使いの目を、意識を分散させるために」

「りょーかい。セイラの姉ちゃんチームはどうするんだ?」

「セイラの横をゲイルが、レベッカの横をノッシュが固めて守るのが理想だ。やばくなったらレベッカのテレポートで逃げればいい」

「うむ、ゲイルなら安心して背中を任せられる。頼んだぞ」

「あ、ああ!」


 セイラに頼られ、気合いを入れるゲイル。

ゲイルの防御力は一級品だから、ゴーレムの10匹20匹に襲われても崩れないだろう。

しかし……


「ノッシュ?」

「……」


 黙り込んでいるノッシュに、俺はおかしな気配を感じる。

まさか、怖じ気づいている訳じゃ……


「ノッシュの旦那、降りたいなら降りてくれ」


 俺より先に、カイルがノッシュに声をかける。

その顔は、いつもより真剣だった。


「旦那の所は2人目が生まれたばかりだろ? それに前のイゾウとの戦いで死ぬのが怖くなった。違うか?」

「……」


 カイルの言葉に、俺は目を見開く。

一番頼りになるノッシュが抜けるのは誤算だ。

そうなるとレベッカを守れる奴がいなくなる。

セイラとレベッカの二本柱で前へ進めないとなると、作戦の立て直しが……


「……いや、俺も戦う」

「旦那……」

「街を守るのは冒険者の使命だ。アイツらが街を襲ったら俺の家族が無事だって保証はどこにもねえ。それにお前達を残して逃げらんねえよ」

「しかし……」

「心配すんなカイル。あんなゴーレムごときに負けてたまるか。レベッカちゃんの事は、俺が守ってやるよ」

「ええ、よろしく」


 いつもの頼りになる表情を浮かべたノッシュに、レベッカが笑いかける。

どうやら大丈夫そうなようだ。やばくなったらレベッカがテレポートで逃げるだろう。

レベッカはポンコツだが戦闘になると割と冷静に立ち回れるタイプだ。


「では皆の者、よいな」

「「「ああ!」」」


 セイラの呼びかけに、俺達は声を揃えて答える。

かくして俺達はゴーレムの大群退治、もといゴーレム使い退治に挑むのだった。




****************************




「バロン、マシュー、あの辺りからナナメに斬り込むぞ。行けるな?」

「バロン、了解」

「ああ、早くしねえとゲイル達が持たないだろうからな」


 リリーのテレポートでゴーレムの大群の後ろに回り込んでいた俺達は、左ナナメ後ろらへんに移動し準備を整えていた。

バロンが大振りのナイフを、マシューが長い槍を、そして俺は銀の盾と鉄の棍を構えて頷く。

そして、ゴーレムの背後にナナメから斬り込んだ。


「ッ! ッ!」


 ナイフと体術を組み合わせた攻撃で、バロンがゴーレム達を吹っ飛ばしていく。

アサシンらしく気配を消してからの奇襲に、ゴーレム達は対応が遅れ崩れていった。


「オラっ! オラっ! オラオラオラっ!」


 するどい槍の突きを連発し、マシューがゴーレムの頭部を破壊していく。

目にも止まらぬ速さとはこの事だ。頭を失ったゴーレムが次々倒れていく。


「グウっ!? くうっ!」


 俺も銀の盾でゴーレムの攻撃を防ぎ、鉄の棍で1体倒す。

攻撃が重い。

さすがは重量級モンスターだ。ただ、動きは遅い。

それでもこの数の暴力は脅威だ。

次第に俺達はゴーレムに囲まれ始める。


「ユイト!バロン! オレの近くに! 『円月斬り』!」


 槍を横薙ぎに一回転させて、マシューが周りを囲んだゴーレムを一掃する。


「あっちだ!」

「オウ!」


 ゴーレムがいない方へ2人を誘導し、俺はゴーレム使いを探す。

どいつだ。一体どいつがゴーレム使いなんだ。

この辺にいる確率が高いはずなのに見つけられない。


「『フレイム・インパクト』!」


遠くでセイラ達が戦っている音が聞こえてくる。

最初より威勢が落ちているようだ。そろそろ限界近いかもしれない。

こちらに近づいてくるゴーレムの大群。

この中に紛れ込んでいるゴーレム使いを見つけ出すなんて、砂漠に落ちた1マニー硬貨を探すようなもんだ。

俺は、懐に手を入れ銀の箱から爆発玉を取り出した。


「マシュー! バロン! 耳塞いでくれ! ハアッ!」


 虎の子の爆発玉を投げて、ゴーレムを30体ほど一掃する。

全体で見れば大した数ではないかもしれないが、少しでも隙を……

と、思っていた矢先に。

1体のゴーレムが背中を向けて逃げ出そうとしたのを俺は見逃さなかった。


「アイツだ! 今俺達に背中を向けている奴! アイツがゴーレム使いがいるゴーレムだ!」

「マシュー!」

「合点だ!」


 バロンとマシューが駆け出し、背中を向けたゴーレムに襲いかかろうとする。

けれどもすぐに、周りにいたゴーレム達がゴーレム使いのゴーレムを守るように2人を止めに入る。


「邪魔、くせえええええええええ!!!!!」


 マシューが槍を横薙ぎに薙ぎ払って、前を塞ぐゴーレムを一掃する。

けれども後から後からゴーレム達が湧いてきて、その前を塞いでくる。


「邪魔!」


 バロンが大柄な身体を活かした体当たりで、数体を吹っ飛ばす。

けれども次から次へと、ゴーレム達がゴーレム使いとの間に割って入ってくる。


「この……! くだばりやがれええええええ!!!!!」


 マシューが槍を構えて、ゴーレム使いのゴーレムへと放り投げる。

槍は、ゴーレムの背中に突き刺さった。


「ピギィイイイイイイイイ!!!!!?」


 けたたましい叫び声を上げて、ゴーレム使いが飛び出してくる。


「「小せえ!!!」」


 その小ささに、俺とマシューは同時に怒りを露わにする。

ゴブリンを更に小さくしたような、大きさ20cmもないモンスターが地面に降りて逃げ出そうとする。

あんなのに俺達は追い詰められてたのか!


「マシュー! これ使え! アイツは俺が仕留める!」

「オ、オウ!」


 槍を失ったマシューに、鉄の棍を放り投げる。

槍ではないが、同じ長物だ。手練れのマシューなら使いこなせるだろう。

バロンが身体を張って食い止めてるゴーレムに、マシューが鉄の棍で殴りかかる。

その結果を見届ける余裕もなく、俺は逃げるゴーレム使いを追いかけた。

前を塞ぐゴーレムに銀の盾を投げつけ、攻撃を屈んで躱し、間をすり抜ける。

そして手にしていた2つ目の爆発玉のピンを抜いた。


「ハアっ!」


 ぶん投げた爆発玉が、ゴーレム使いに当たり爆発の光が光る。

次の瞬間、俺の後頭部を何か硬い物が襲っていた。




****************************




「終わった、のか……?」


 向こうの方で爆発音が2回ほど轟き、2度目の爆発音が鳴り響いた後ゴーレム達の動きが止まったのを見て、私達はようやく戦いが終わった事を悟る。

私とレベッカ、ゲイルとノッシュの4人だけに分断され、周りをゴーレム達に囲まれてしまい絶体絶命に陥っていただけに互いに目を合わせて無事だった事に安堵する。


「アイツがやってくれたのね。まったく、遅いってのよ」


 レベッカがホッとしたように軽口を叩くのに合わせて、ゲイルやノッシュが笑う。


「ユイト!!! オイ! しっかりしろ! ユイト!!!」


 しかし向こうから聞こえてくるマシューの焦ったような声に、私達は慌てて駆け出す。

動かなくなったゴーレム達を避けながら進んだ先にいたのは、グッタリと横になっているユイトと、あちこち傷だらけのバロンとマシューだった。


「バロン! マシュー! どうした!」


 テレポートで飛んできたらしいカイルが、ミア、アスミ様と共にこちらに近づいてくる。


「ユイトがやられた! ゴーレム使いに爆発玉を投げた後に、ゴーレムに頭をブン殴られたんだ!」

「っ! ユイト! 返事をしろ! ユイト!」


 私はユイトを仰向けにし、その口元に手を当て胸に耳を当てる。

息を、していない。

心臓も、止まっている。


「アスミ様! 蘇生魔法を!」

「落ち着いてくださいセイラさん。蘇生魔法の前に回復魔法が先です。マシューさん、バロンさん達も一緒にかけるのでこちらに来て下さい」

「あ、ああ……」


 怖いくらい落ち着いているアスミ様が、回復魔法の用意を始める。


「『ハイネス・ヒール』」


神聖な光の魔法陣が白く光り輝き、ユイトの傷と私達の傷が癒えていく。

さすがはアスミ様の魔法だ。大なり小なりのケガが、あっという間に治っていく。


「向こうにいる冒険者の皆さんのケガも治してきました。これで皆さんもう大丈夫です」

「ありがとうございますアスミ様。後はユイトを蘇生させるだけですね」

「……」


 アスミ様が私の言葉に頷き、杖を手にユイトへと近づく。

しかし一向に、蘇生魔法の詠唱を始めない。


「アスミちゃん……?」

「アスミ様? どうされたのですか?」


 アスミ様の様子がおかしい事に気づき、レベッカと私がアスミ様に声をかける。


「できません……」


 アスミ様の目から、大粒の涙がこぼれはじめる。

私達は一斉に、困惑の感情を浮かべる。


「アスミちゃん? ど、どうしたんだよ? ユイトに蘇生魔法をかけてくれよ……!」

「そ、そうよ! なんでユイトに蘇生魔法をかけないのよ!」


 マシューやミアが、アスミ様にユイトに蘇生魔法をかけるよう訴える。

けれどもアスミ様は、涙をこぼしながら首を横に振るだけだ。


「で、できませんって……、どういう事なのよ、アスミちゃん……」


 レベッカが、震える声でアスミ様に問いかける。


「アスミ様、どういう事かご説明いただけますか……?」


 私は努めて冷静を装いながら、けれども動揺を隠しきれない声でアスミ様に問いかける。


「ユイトさんにはもう、蘇生魔法をかける事ができません……」

「「「――」」」


 アスミ様の言葉に、私達は言葉を失う。


ユイトに、蘇生魔法を、かけられない。

ユイトは、このまま、死んでしまう。


レベッカが、震える手で縋るようにアスミ様の神官服を掴む。

ミアが、ガックリと膝から崩れ落ちる。

マシューが、呆然と鉄の棍を取り落とす。

そして私は、

私は――――――――――――――


「ユイトさんと約束したんです……。『俺が死んでも、もう蘇生魔法は使わないで欲しい』って……!」




 アスミ様の言葉に、頭が真っ白になった。

 ゴーレム使いを倒すために、セイラ達を真ん中にテレポートすればいいじゃないかと思う方もいるでしょうが、テレポートは周りに人やモンスターがいる場所には飛べません。

無理矢理大人数をテレポートさせようとしても、レベッカ1人だけテレポートする羽目になり「なんでえええ!?」と言いながらゴーレム達に襲われ囚われの身になり、魔王城に連れていかれて魔王軍のモンスター達にものすんごい目に遭わされるだけです。

それはそれで見てみたいというご要望は、受け付けません。

レベッカはモンスターから見ても美人。

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