第82話「数の暴力」
「な、なんだありゃあ……!?」
こっちに近づいているゴーレムの大群に、城壁の上から見る俺達は息を呑む。
距離はまだ500mほどあるだろうか、
ゴーレムの足が遅い事もありまだこちらに来るには時間がありそうだ。
ただその数がヤバイ。
隊列を組んで歩くゴーレムが地平を埋め尽くしている。
「数千……、いや、万はくだらないか」
「あんなのが街に押し寄せたら大変だぞ!」
「ていうかなんでまだ城門が修理されてないんだよ! あのクソ領主!」
集まった冒険者達が混乱と恐慌に陥る。
当たり前だ。
一体でも手強いゴーレムが、あれだけの数いるんだ。
いくら手練れの冒険者でも、限界はある。
数の暴力に押し切られて死ぬ未来しか見えないだろう。
「落ち着け! 皆、落ち着いてくれ」
比較的冷静なカイルが、手をパンと叩いて皆に呼びかける。
「あの数を見てビビるのは分かる。領主の野郎に言いたい事があるのも分かる。でもあの足の遅さだ。まだ時間はある、皆、冷静になるんだ」
「冷静にって、言われても……」
「あの数を相手に戦うのはさすがに無茶だぜ?」
ミアとマシューが、渋面を作ってカイルに言う。
他の冒険者も皆同じ気持ちのようだ。
皆不安と諦めに満ちた顔をしている。
1人でも避難したいと言い出したら雪崩を打ってこの場を逃げ出すだろう。
「皆、スマナイ」
そんな皆に向けて、セイラが深々と頭を下げる。
「父上には、何度も城門の修理を急ぐよう言ったのだが、聞く耳をもってくれなかった。城門の修理ができていないのは、領主の娘である私の責任だ。ゴーレムとの戦いは私が引き受ける。避難したい者は避難してくれ」
「「「……」」」
頭を下げるセイラを見ながら、皆が一応に押し黙る。
互いに顔を見合わせ、どうするか悩む様子の中、カイルが一歩前に踏み出してセイラの肩を叩いた。
「セイラの姉ちゃん、頭上げろよ。姉ちゃん1人を戦わせるなんて真似、させる訳には行かねえぜ。領主の野郎には後で皆でヤキ入れる事にして、この街を皆で守ろうや」
「そうだな! 俺達でこの街を守るんだ!」
「バロン、頑張る」
「仕方ないわねえ! やってやろうじゃないの!」
「領主の野郎は後で吊していたぶって炙ってやろうぜ!」
一部物騒なのもいるが、カイルの檄に戦う事を決めたらしい。
不満がある者もいるようだが、この場では飲み込む事にしたらしい。
街を守るのは、冒険者の役目だ。
「でもセイラの姉ちゃん、どうやってあのゴーレムの大群を相手にするんだ?」
「ああ……。私を含めた戦士系の冒険者で城門の前を固めて、魔法使いなどの遠距離持ちが城壁の上から攻撃して全部倒すしか……」
「いや、全部倒す必要はない」
「ユイト?」
作戦というには脳筋すぎる作戦を提案するセイラの言葉を遮った俺に、皆の視線が集まる。
俺は皆の顔を見て、あの数の暴力への対抗策を話し出した。
「俺に考えがある」




