表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バインドスキルで生き抜くファンタジー世界生活  作者: アブラゼミ
第3章「男の正体」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/204

第81話「聞きたい事」

 朝の庭に木剣同士がぶつかる音が響く。

攻める私に、守るユイト。


「そらそらそら! 攻撃はまだ続いているぞ!」

「くっ……!」


 立て続けの連撃に、ユイトが後ろに下がりながらも右手に握った木剣で受け止める。

意外にも正中線を守る基本はできている。

しかし私から見ればまだまだだ。


「そらっ! 上ばかりに気を取られていると、足元がおろそかだぞ!」

「痛っ! くうっ……! 容赦ねえな……!」

「実戦で敵が容赦してくれるとでも思ったか? さあ、もう1本だ」


 私の木剣で太ももを叩かれたユイトが、今度は左手に剣を握る。

両方の手で使えるようになれというのがジンジャー殿の教えだそうだ。

その分2倍時間はかかるのだが、戦闘中にどちらかの手が使えなくなる事だってあるだろうしその考え方は理に適っている。

……まあただ、いつになったら一人前になれるのやら分からぬがな。


「そらそらそら! 右手の時よりガードが甘いぞ! 敵はお前が右手に剣を持っていようと左手に剣を持っていようと容赦はしてくれないぞ!」

「ふっ……! 分かってるよ……!」


 私の剣を薙ぎ払い、ユイトが荒い息を吐く。

どうして中々、ここ数週間での成長は遅いながらも着実に腕を上げている。

元々左手を使う訓練をしているからだろうか。

この男の積み重ねてきた時間が垣間見えて私は敬服する思いになる。

……だからこそ気になる事がある。

なぜこの男は、弱いとはいえそこそこの実力を有し、機転も利くのにレベル4に留まっていたのか。


「……朝の鍛錬はここまでにしよう。先にシャワーを浴びてくる、待っていてくれ」

「ハア、ハア……! どうぞ……」


 木剣を置いてユイトが、地面にへたり込む。

私は一瞥して、シャワーを浴びに風呂場へと向かっていった。




****************************




「いただきます」

「いただきます」


 ユイトと2人、卓袱台に向かい合って朝食を摂る。

シャワーを浴びたユイトの髪はまだ濡れているが、元の色がくすんでいるのでつややかではない。

食卓に並ぶ炊きたての米の方がつややかだ。

1口食べて、その甘味を堪能する。

この男は中々、米の炊き方がうまい。

『外で炊くのに比べりゃ楽勝だ』とか言ってたから、キャンプなどで炊くのは大変なのだろう。水加減と火加減がうんたらかんたらとか言っていたが、料理をしない私にはサッパリ分からない。

米って、どうやって炊くんだ?

そもそも炊くってなんだ? 煮るのと何が違うんだ?

サッパリ分からないが、世の中には適材適所という言葉がある。

私は私の特技を活かせばいいと開き直るしかあるまい。

ユイトが漬けた漬け物と、味噌汁なるものをおかずにご飯を2杯、3杯と食べていく。

最初の頃は驚いていたが、私がお代わりしてもユイトはもう、何もリアクションを取らなくなっている。慣れてしまったのだろう。

……少しは節制した方がいいだろうか。いやしかしこれが私だ。これで引くような男、こっちから願い下げだ。

私はユイトに習って少し残したご飯にお茶をかけ、お茶漬けなるものにして食事を済ませる。


「ごちそうさまでした。今日もうまかったぞ」

「お粗末さまでした。じゃあ片付けるか」


 ユイトが私の分の食器も下げていき、洗い物を始める。

私はその間、新聞を読み始めた。

この街の冒険者達は新聞を読んでいない事が発覚したため、この家に新聞を取らせるようにし、冒険者ギルドにも予算をつけて新聞を置くようにした。

父上は渋っていたが、魔王の幹部が次々この街を襲った事から、情報の必要性を訴え無理繰り押し通した。その割にあまり読んでいる者は少ないようだが、まあカイル辺りが読んでいるからよいだろう。

 ひと心地ついて、腹も落ち着いてきた所で目を閉じリラックスする。

この家は、やはりいい。

日頃ストレスで疲れた心が、癒やされる。

まあ最近またストレスが溜まってきてるのだが……

カサ、と音がして、

ユイトが新聞を読み始めたのに気づく。


「ユイト、少し手を止めてくれ」

「なんだよ」


 私は目を開き、ユイトに呼びかける。

確証がある訳ではない。

この街の冒険者に尋ねても、はぐらかしたり答えなかったりするばかりで情報も得られた訳ではない。

だが私は、この男の正体というものについて確信に近い仮説を得ていた。


「貴様に聞きたい事がある」

「なんだ?」

「どうして貴様は、10年近く冒険者をやっていてレベル4に留まっていた」

「……」


 私の問いかけに、ユイトが少しだけ目を見開く。

それは、いずれ尋ねられる事と私が自分の正体に感づいている事を覚悟しているようだった。


「貴様は弱い。確かに弱いが、機転も利くし道具もうまく使える。爆発玉を使えば、高レベルモンスターでも倒せるだろう。なのになぜ、貴様はレベル4に留まっていた?」

「それは……」

「正直に答えてくれ」


 何かを言おうとしたユイトの機先を制し、私はまっすぐにユイトの顔を見て問う。

この男というものについて、私は確信に近い仮説を立てている。

おそらくそれは、合っている。

だができれば、この男の口から聞きたかった。

ユイトがハアっと息を吐いて、少し下を向いた後私をまっすぐに見つめ返す。

覚悟を決めた男の顔だ。

その口が息を吸った後――――




『緊急警報発令! 緊急警報発令! 住民の皆様は避難所に避難して下さい! 冒険者の皆様は武装して正門に集合をお願いします! ゴーレムです! 大量のゴーレムがこの街に向かっています!』




 街に、緊急警報が鳴り響いた。

・料理の腕の上手さ

 ユイト>レベッカ>>>アスミ(普通)>リリー>>>>>>>セイラ(壊滅的)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ