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バインドスキルで生き抜くファンタジー世界生活  作者: アブラゼミ
第3章「男の正体」

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第80話「カイルとノッシュ/バレてた」

 昼飯を済ませ街をブラブラ歩く。

昔と比べ、街に活気がなくなってきた。

人が減っているのもあるだろうが、領主の政策がマズいせいだ。

遊べる場所もなくなっちまったし、これから益々つまらない街になるだろう。


「ハ~ア」


 ゲイルと一緒にこの街に来た時は、冒険者が大勢いて賑わっていた。

前の領主が冒険者に好意的だった事もあり、手厚い保障やクエスト報酬上乗せもあっていい街だった。

それが今の領主に変わってから冒険者への締め付けが厳しくなり、この街から冒険者が出て行ったり引退していった。


「セイラの姉ちゃんは不思議がってるだろうな。この街の冒険者の数と書類上の数が合わない事に」


 引退した冒険者の数を今の冒険者の数に水増しして王都に報告する事で、補助金を受け取ってるらしい領主の悪行には苦笑しか出ない。

堅物みたいな顔してやる事があくどいというか、汚いというか……もう救いようがないとしか言いようがない。


「こんな街、出て行ってやりたい所だがな」


 街を守って死んでいった仲間達や、今この街で頑張ってる連中の事を思うとそうもできない。家族ができた奴もいる事だし。


「おっ?」


 その家族がいる冒険者、ノッシュの旦那を見かける。

生まれたばかりの2人目の赤ん坊を抱え、買い物の途中のようだ。


「よう旦那、久しぶりだな」

「カ、カイル!? 久しぶり……」

「最近冒険者ギルドで見ねえな。どうしたんだ?」

「ま、まあちょっとな……」


 歯切れの悪い返事をするノッシュの旦那。

俺はその様子にピンと来てこれ以上話すのをやめる事にした。


「まあ顔出すだけでもいいから来てくれや。旦那がいないと締まらねえからよ」

「お、おう」

「じゃあまたな」


 それだけ言って、俺はノッシュの旦那を残し去って行く。

旦那の気持ちは、大体想像できた。

ただ、これからの事を考えると正直胃が痛くなる。


「せめて、前の領主の時の半分でも冒険者がいればな……」


 俺は叶いもしない願望を口にしながら、つまらねえ街を歩いた。




****************************




「ただいまー! あたしがお土産買って帰ってきたわよー!」


 王都でも評判のお店のスイーツを手に、あたしはセイラの家の玄関を開ける。


「お前がお土産? 珍しい事もあるもんだな」


 ちょうど居間にいたらしいユイトが、開けっぱなしのガラス戸から顔を出してくる。


「ま、まあたまにはそういう事もあるわよ」


 背中に冷や汗をかきながら、あたしは答える。

こないだコイツの事を疑って後をつけた罪悪感を減らすためにお土産を買ってきたんだけど、当然そんな事言えない。

しかしユイトが、眉間にしわを寄せた。


「なあレベッカ、お前俺に何か隠してないか?」

「な、何かって何よ」

「お前何かやましい事がある時とか、ウソ吐く時目を逸らす癖があるんだよ。普通は目を逸らさないけどな。お前は根が正直なんだろうな」


 ムダに鋭いユイトがあたしに詰め寄ってくる。

コイツのたまに見せる人間の機微に関する鋭さは何なんだろう。

ジンジャーさんに教わったのか、働いていたいかがわしい所で学んだのか。

セイラやクリス達の気持ちには気づかないニブチンのくせに。


「う、うー……ゴメンナサイ! こないだあんたの事疑って後をつけちゃって……」

「こないだ? ああ、共同墓地までつけてきてたアレか」

「え?」

「気づいてないとでも思ってたのかよ。お前バレバレだったぞ」

「……」


 バレてた。

自分では結構完璧に尾行できてたと思ってたのにバレてた。


「クリスと話してたみたいだし大体聞いてるんだろ? 領主の奴が管理人の仕事なくしちまったから俺達が代わりに掃除してるんだよ。言い出しっぺはカイルだったな」

「な、なんであたしに言わなかったのよ」

「だってお前関係ないし、いつも昼近くまで寝てるし」

「……」


 ぐうの音も出ない。

そりゃあいつも朝寝坊してるあたしに言う必要ないわ。


「それにしても、それだけじゃないだろ? お前が隠してる事」

「えっ?」

「まさかバレてないとでも思ったのか? 俺のハチミツをこっそりつまみ食いしてる事とか」

「……」


 バレてた。

コイツのハチミツをこっそりパンに塗ったり、飲み物に入れたりしてるのバレてた。


「俺が後で食べようと楽しみに取っておいたプリンを食べた事とか」

「……」


 バレてた。

セイラとアスミちゃんもいた日だったからバレてないと思ってたけどバレてた。

そりゃ誰だってあたしが犯人だと分かるわ。


「魔法の練習中に干してた俺のシャツを黒焦げにしたのを、庭に埋めて隠した事とか」

「……」


 バレてた。

この前庭で魔法を練習してたらうっかり洗濯物に引火させてしまい、コイツのシャツを焦がしちゃって庭に埋めて隠してたのバレてた。


「俺がいない間に2階の屋根裏部屋に忍び込んで部屋を漁った事とか」

「……」


 バレてた。

コイツがいない間にコイツが何を隠してるか調べるために屋根裏部屋を漁ったのバレてた。何も見つからなかったけど。


「セイラの部屋のカーテンレール壊して、こっそり直そうとしたけど無理だったのほったらかしにしてた事とか。まあセイラが気づいて俺が直したんだけどな」

「……」


 バレてた。

うっかりカーテンに足を引っかけちゃってセイラの部屋のカーテンレール壊してたのバレてた。

色々頑張って直そうとしたけど不器用なあたしじゃダメで、結局ほったらかしにしてたのバレてた。いつもカーテン引いて隠してたけどそりゃバレるわ。いつの間にか直ってたけどやっぱりコイツが直してたのね。


「俺に何か言う事は?」


 バインド用の縄を取り出してきたユイト。あ、これガチで怒ってるわ。


「……スミマセンでした」


あたしは反省の意を込めて頭を下げた後、お縄をちょうだいするため両手を前に差し出した。

……このあとメチャクチャバインドかけられて、物置に小一時間ほど吊された。

色々な弁償代は、ちゃんと後で支払ったわよ!

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