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バインドスキルで生き抜くファンタジー世界生活  作者: アブラゼミ
第3章「男の正体」

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第79話「花」

 朝6時。

いつもより早起きしていたユイトが、鍛錬を終えた後花を手にどこかへ向かう。

あたしは、その後をコッソリつけていた。


「なーんか怪しいと思ってたのよね。庭の花が度々減ってるし、コソコソどこかに出かけてるし」


 まさかとは思うけど、女だろうか。


「……っと、『テレポート』」


 あたしはテレポートで物陰に隠れながらユイトを追う。

なんて魔法の無駄遣いだ。でもアイツに気づかれないために必要な事だ。


「絶対尻尾を掴んでやるんだから……!」


 もしもあのエレナとまだ未練タラタラで会ってるなら、今度こそ目を覚まさせてやる。

そう思いながらユイトをつけている内に、あたしはある場所に近づいている事に気がついた。


「こっちの方向って、共同墓地……?」


 緩やかな丘を登り始めたユイトに、あたしはつい最近アスミちゃんと行った幽霊退治を思い出す。

ユイトが向かっていたのは、案の定公営の共同墓地だった。

ユイトが、先に来てたらしいカイルやゲイル、リリーやミアやマシューやバロンに挨拶する。


「なんでアイツら、こんな所に……?」

「あれ? レベッカさん?」

「にゃわっ!?」


 突然声を掛けられ驚き振り向くと、冒険者ギルドの受付嬢クリスがホウキとバケツを持って立っていた。


「やっぱりレベッカさんだ。おはよう! でもなんでこんな所に?」

「ちょちょちょ、ちょっと待って!」


 ユイト達に気づかれないよう、クリスを物陰に引きずり込む。


「ええと、レベッカさん? ボク女の子とそういう関係になる気はないんだけど……。でもレベッカさんとならいいかも」

「何変な事言ってんの!? 朝から出かけてるユイトをコソコソつけてきたから気づかれたくないのよ! ……皆で集まって何してる訳?」

「見ての通り、掃除だよ」


 クリスの言うとおり、ユイト達が手分けして共同墓地の掃除を始める。

ユイトが持ってきた花は、1本1本お墓に手向けられていた。


「ここにはボク達の知り合いの冒険者達が眠ってるからね。でも身寄りがない人や誰も墓参りに来ない人がほとんどだから、ボク達が定期的に掃除に来たりお線香を上げたりしてるんだ」

「そうなんだ……」

「領主様が予算削減して管理人の仕事をなくしちゃったから、放っておくと荒れ放題だからね。皆で文句言いながら掃除してるって訳だよ」

「そうなんだ……」


 あの領主、ホントロクな事していないみたいね。

セイラのお父さんだけど、嫌われるのも無理ないわ。

街の人達もいつも悪口言ってるし……


「ところでレベッカさん? さっきの話からしてユイトさんの後をつけてきたみたいだけど、人の秘密を暴こうとするなんて悪い子だね?」

「そ、それは……」

「誰にだって人に知られたくない事があるんだよ。ここの事だって、ボク達の大切な思い出だからあまり踏み込まれたくないんだ」

「ゴ、ゴメン……」

「イケナイ子だね、レベッカさんは。ユイトさんにバインドかけてもらってお仕置きしてあげよっか?」


 手でアゴをクイっと引きながら、クリスが整った顔であたしを見つめてくる。

ナニコレ! ドキドキする! クリスはカワイイ女の子だけど、背が高いからドキドキする! イケナイ世界に連れて行かれそう!


「なーんてね。アハハ、冗談だよ。別に秘密にしてる訳じゃないし、ボクやリリーさんの仕事があるから朝早く集まってるだけだからね。ユイトさんも言う必要がないと思ったから言ってないだけだろうしね」

「へ?」

「それじゃボクも掃除に参加するから行ってくるね。レベッカさんも参加する?」

「……ううん、あたしは遠慮しておくわ」

「そう、じゃあまたね」


 クリスが、あたしのアゴから手を引きユイト達の元へと駆け出していく。

危うく初めてを女の子にあげる決意を固めかけそうになっていたあたしは、その場にへたれ込んだ。

ゴメン遅れてー、遅いぞクリスーというやりとりをしながら皆が墓掃除を再開する。


「……『テレポート』」


 それをあたしは、ちょっと後ろめたい気持ちで見ながらテレポートでセイラの家へと帰っていった。

 レイフォード領には5つの街と村があり、ユイトは知りませんがエレナはユイト達が住む街の隣町で何食わぬ顔をして暮らしています。ちなみに就職先はリリーの親が経営する縫製工場。なぜセイラがわざわざ隣町に就職させたか、エレナがわざわざ隣町からユイトの住む街まで来てたかは、ご想像にお任せします。

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