第71話「第一王子邸潜入作戦」
「……そいつはブシンだな。かつては名うての冒険者だった男だよ。どういう訳だか今はあのバカ王子に仕えてるがな」
「バカ王子?」
「第一王子フアンの事さ、性格も人格もクソとしか言えねえ。気にいった女を見かければ、力尽くで物にして飽きたらポイしてるとよ」
「あのいかにもな感じの王子か……!」
どこの街にも情報屋というのはいる。
王都の冒険者に聞いてたどり着いた路地裏の情報屋に、俺は金を払って欲しい情報を手に入れていた。
そういえば論功行賞の時、第一王子の後ろにあんな男がいた気がする。
「なんで国王陛下や他の王女と王子は動かないんだ? ジーナ様やリオン様は、そういうの許さなそうだが……」
「国王陛下は目をつむっているようだが、第一王女と第二王子は動いてるさ。証拠を押さえようとしたり被害者捜しをしているが、上手くいかねえ。あのブシンがうまく後始末をしてるんだろうよ。第三王女の耳にはそういう話が行かないようにお付きの人間がしているようだ」
あの第三王女にそういう話はまだ刺激が強すぎるだろう。クロカゲが配慮してるのも分かる。
しかし王族が相手となると動きにくい。
セイラやレベッカを巻き込む訳にもいかないし、リオンやクロカゲの力を借りるのも難しそうだ。下手するとアスミちゃんが始末されてしまう恐れもある。そもそも俺1人が行った所で門前払いを食らうだろう。
「それにしてもブシンか……。どこかで聞いた事ある名前だな?」
「『鉄拳のブシン』と言えば聞き覚えがあるんじゃないか?」
「ああ、そういえば聞いた事あるな。確か、素手でドラゴンを屠ったとかいう」
「正確には拳で、だな。拳だけで里を荒らしていたドラゴンを退治したんだよ」
「ヤベエ奴だな……」
「武勇伝なら他にもあるぞ。どれもハッタリじゃない本当の話だ」
「そんな奴が、なんで第一王子なんかに仕えてるんだ?」
「さあな、金に釣られるような男とは思えないが……。何にせよあのブシンがいるおかげで第一王子は安泰って訳だ」
確かにあんなのが護衛についていれば第一王子は安泰だろう。
あんなのに挑むのは無謀だろうが……、俺は覚悟を決めた。
そんな俺の気配を察したらしい情報屋が、首を振った。
「悪い事は言わねえ。攫われた娘が帰ってくるまで大人しくしときな。フアンは不健康体で男としての機能もしょうもないって評判だ。1回やったらすぐ飽きてポイだとよ」
「……忠告だけ、ありがたく受け取っておくよ」
俺は、情報屋に礼を言って引き上げようとする。
けれども情報屋は俺を呼び止め何かの紙を手渡した。
「コイツを持って行きな」
「なんだ?」
「第一王子の屋敷の見取り図だ。警備は正面しかいないから裏から入るんだな。もっとも、あのブシンがいるんじゃ侵入しても返り討ちだろうがな」
「……それでも、やらないといけねえんだよ」
時刻はもう夕方近く。
あの王子が何時まで王城で働いてるか知らないが、帰ってきたらアスミちゃんに手を出されてしまうだろう。
その前にアスミちゃんを取り返す。
俺は、覚悟を決めて第一王子の屋敷の見取り図を握りしめた。
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第一王子のお屋敷はご立派な事に閑静な町外れにあった。
他の王子王女は王城近くに暮らしているというのにワガママ言って静かな所に屋敷を建てさせたらしい。
あるいは……初めからそのつもりで家を建てたのかもしれない。
「どこまでも胸クソ悪い野郎だぜ、コンチクショウ」
裏の森から塀を越え敷地に侵入し、俺は身を隠しながら屋敷へと近づく。
見張りは正面しかいないし、人も少なそうだ。
屋敷はムダに立派な3階建てで、離れがついている。
離れは従業員用の宿舎だそうだ。
そしてバカと煙はなんとやらという言葉通り、第一王子の部屋は3階にある。
「アスミちゃんは……、3階だろうな」
屋敷の3階部分を眺めながら、俺は結論づける。
1階は食堂やダンスホールなどでそういう事をする部屋はないし、あのブシンがついているのに小細工する必要はないだろう。見取り図にも隠し部屋や地下室のたぐいは載ってない。
俺は黒いターバンで顔を隠し、マントで身体を隠しながら1階の端の部屋の裏手に近づく。
窓から中を窺う、人はいない。
俺はダガーを取り出して柄の部分で窓ガラスを割ろうとして、窓の鍵が開いている事に気がついた。
換気した後にかけ忘れたのだろうか。何にせよチャンスだ。
俺は窓を開けて中に侵入し――
「……えっ?」
「……あっ」
ちょうどドアを開けて部屋に入ってきたメイドと目が合った。
「『バインド』!」
俺は縄を放り投げてメイドをバインドで拘束した。
「……キャー!? 誰かー!? 侵入者……」
後ろ手に縛られ転がったメイドの女に大声を上げられる。
すぐに手で口を塞いだが、時既に遅く廊下から人が駆けてくる音が聞こえる。
「なんだ! どうし……」
「シッ!」
「うわあっ!? ゲホッ! ゴホッ! なんだこれは!? グボッ」
「『バインド』!」
駆けつけてきた男に煙玉を投げ、バインドをかけ動きを封じたが遅すぎた。
廊下に何人かのメイドや執事らしい男が俺を見て驚いた顔をしている。
「チクショウ! シッ!」
俺は煙玉を投げて連中の視界を塞ぎ、3階へと続く階段を駆け上がった。
もっとスマートに忍び込むつもりだったのに、どうしてこうなった!
・ミアの印象
ユイト「器用で色々できる。でもプライドが高すぎる」
セイラ「あれ? いたっけ?というくらい印象がない」
レベッカ「器用だけど器用貧乏」
アスミ「色々こじらせてる」
カイル「褒めないと動かない。めんどくさい」
ゲイル「機嫌を取らないと動いてくれない。めんどくさい」
ノッシュ「音楽で食べていけばいいのに」
リリー「特にない」
バロン「歌がうまい」
マシュー「遊んでそうに見えて身持ちが固い。遊ぶ度胸もない」




