第67話「領主と娘」
「父上、失礼します」
執務室の扉を叩き、私は領主の……父上の部屋へと入る。
クリーム色の髪をオールバックに撫でつけ、メガネの奥に鋭い目を覗かせる細身の男。
私の父だと言ってもあまり信じられない男が、このレイフォード領の領主であり私の父だ。
「領内の経済動向の調査をまとめてきました」
「ご苦労、そこに置いておいてくれ」
「……」
父上が何かと理由をつけて、私に用事を押しつけ自分のしている事に関わらせないようにしているのは気づいている。
他人行儀な態度は、家族だろうと部下だろうと誰にでもいっしょ。
真面目で堅物に見えて、実は俗物の中身。
私はもう、ガマンの限界だった。
「父上。城門の修理はいつになったら始まるのでしょうか」
「今業者に見積もりを取らせ選定している。しばらく待て」
「お言葉ですが遅すぎます。1人目の魔王の幹部に続いて2人目も来たのです。3人目がいつ来るとも限りません」
「ここ2週間は来ていないだろう。この街の冒険者はそれなりに優秀な者達が揃っているとの事。城門がなくとも領民が避難する間の時間稼ぎくらいはできるはずだ」
「彼らに、捨て駒になれと言っているのですか?」
「そのような事は言ってない」
「領民を守るのが領主の役目ではないのですか?」
「それはそうだが災害に犠牲はつきものだ。ある程度の犠牲者は仕方ない」
「仕方ない事などありますか!」
父上の言葉に私は憤り、机を叩く。
その音に兄上が驚き身体を縮こまらせる。
見た目も中身も父上そっくりの小物だ。兄とは言え私を止める気概も根性もない。
「城門があれば、より防衛力を強化できるのです! リューガを倒した男から30億を寄付してもらったでしょう! あの金があれば……!」
「魔王の幹部を倒した男か。セイラ、その男を家に住まわせているらしいな」
「……っ」
「いっしょに暮らしている内に情でも湧いたか? どんな男を好きになろうとお前の自由だが、嫁入り前の貴族の娘が同棲しているというのはいただけないな。傷物にされたらどうする」
「あの男は……、そのような男ではありません」
「仮にそうだとしても、リオン様との婚約話が進んでいる今リスクは潰しておくべきだろう。あの家も手放したらどうだ」
「その話は……! 私はまだ承服しておりません……!」
「残念ですがこれは決定事項だ。お前に拒否権はない」
機械のような態度で、机の上の書類から目を離さず父上は言う。
その表情はずっと、ピクリとも動かぬ無表情のままだ。
「用件が済んだのなら退出しろ。私はまだ仕事が残っている」
「……失礼致しました。では」
どこまでも他人行儀な父上に頭を下げて、私は執務室を退室する。
そして深いため息を吐いた。
母上が亡くなってから、あの人はずっとあの調子だ。
机の上だけで物事を考え、人の話を聞かず、自分の利益ばかりを考える。
大学を出てここに帰ってきて2年目。
ユイト達に話を聞く前から分かっていた。父上が領民から嫌われている事を。
しかしいつまでもこのままではいられない。
私は拳を握りしめ、領主の館を後にした。
・カイルの印象
ユイト「頼りになる」
セイラ「頼りになる。アーチャーとしての腕も中々」
レベッカ「気さくで話しやすい」
アスミ「周りをよく見てる」
ゲイル「軽い性格を直して欲しい」
ノッシュ「頼りになる。ただ時折冷静さを欠く場面がある」
リリー「特にない」
ミア「女遊びに慣れてるようで慣れてない。ムッツリスケベ」
バロン「頼りになる」
マシュー「一見軽いけど実は思い詰めるタイプ。ナンパなフリをしているのは話しかけやすくするため?」




