表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バインドスキルで生き抜くファンタジー世界生活  作者: アブラゼミ
第2章「不穏のはじまり」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/204

第58話「釣り」

「あら? ユイト、どこか行くの?」


 朝。

あたしにしては珍しく早起きしたら朝ご飯を食べ終えたらしいユイトがどこかに出かける準備をしていた。


「バロン達に釣りに誘われたんだよ。昼まで釣りしてくる」

「へー、じゃあ晩ご飯は釣った魚?」

「いや、釣ったその場で焼いて食べるから持って帰らないぞ」

「何それズルい! あたしも焼きたての魚食べたい! あたしも釣りに行く!」

「別に構わねえけどよ……。お前、釣りした事あるのか?」

「ないわ! でも炎は任せて! あたしの魔法で焼いてあげる!」


 ユイトに問いかけられ、あたしは自信満々に胸を張る。

そんなあたしを、ユイトがどこか呆れた顔で見た後ハアっとため息を吐いた。


「じゃあ20分後に出かけるから、それまでに朝飯済ませて準備してこい」

「分かったわ!」


 あたしは焼き魚のために、大急ぎでご飯をかき込んで準備をした。




****************************




「バロン、クリス。おはよう。レベッカも釣りに参加したいって言ってるけどいいか? 道具の準備は俺がするからよ」

「もちろんいいよ」

「バロンも、いい。レベッカも釣り、しよう」


 待ち合わせ場所の湖に行くと、バロンと冒険者ギルドの受付嬢クリスが待っていた。

女の子だけどユイトとあまり変わらないくらい背が高いクリスは、髪が短い事もあり遠目には男の子みたいだ。スラッとした長い足がキレイでうらやましい。


「レベッカさん、今日はよろしく! いっぱい釣っていっぱい食べようね!」

「え、ええ……」


 クリスがにこやかな笑顔で話しかけてくる。

ギルドで受付嬢してるから知ってるし、

何回か話した事あるんだけど、

なんか苦手なのよね、この子……

バロンとクリスがテキパキと釣り竿と仕掛けを用意し始める。かなり手慣れている動きだ。

ユイトの釣り竿とあたしの分の釣り竿2本はユイトが用意してる。


「ねえユイト、あたし手伝わなくていい?」

「いい、お前不器用だから糸とかこんがらがしそうだし」


 そりゃそうだけどもっと言い方考えてくれてもいいのに。

まあ確かにあたしじゃ糸絡ませちゃいそうだしね……


「ユイトさん、レベッカさん。ボク達もう始めちゃっていいかな?」

「おう、いいぞー」

「もちろんよー。あたし達に遠慮しないでー」

「分かった。バロン達、釣り、はじめる」


 ユイトが2本を組み立てている間に、バロンとクリスが釣りを始める。

水面を見つめる表情はどこか楽しげだ。

ユイトを気遣って気分転換に釣りに誘ったのだと思うけど、単純に釣りが趣味なだけかもしれない。


「ホラレベッカ。竿ができたぞ。エサはつけといたから」

「ありがと。……どうやって釣るの?」

「投げるのはできねえだろうから、こうやってパッと離して湖に放り込め。魚の注意を引くようにバロン達がやってるみたいに竿を動かせ。あのウキが沈んで、魚が食いついたら竿を引き上げろ」

「分かったわ」


 ユイトがやったみたいに、エサのついた釣り糸をパッと離して湖に沈める。


「あっ! 来た!」

「バロンも、来た」


 クリスとバロンがさっそく魚を釣り上げている。

ユイトもさっさと1匹釣り上げてた。

よーし、あたしもと思うのだけどまったく釣れる気配がない。


「……ねえユイト、釣れないんだけど」

「そんな簡単には釣れねえよ。魚は頭がいいんだ。もっと頭使ってみろ」

「頭使えって言われても」

「魚の立場になって考えてみるんだ。怪しい罠があったらお前近づかないだろ? どうやって怪しく見えないか考えるんだ」


 ……そんな事言われてもサッパリ分からないんだけど。

あたしはユイトを真似て竿を上下に動かす。

ただ、なんとなく分かったのは。時折早く引いたりゆっくり動かしたり動き方を不規則にしてるって事だ。

規則的に動かしてるだけじゃ魚は食いつかないらしい。


「あっ! 来た!」


 そうしているとウキがピクピクと動いている気配がし、糸が引かれる。


「まだだ。まだ引くな」

「なんで?」

「まだ食いついてない。今引いてもエサだけ取られるだけだ。しっかり食いつくまで待つんだ」


 ユイトのアドバイスに頷いて、しばらく待つ。

けれども次第にウキが動かなくなって、糸の引きもなくなった。

ユイトに言われ引き上げてみると、エサだけ取られていた。


「釣れないんだけど」

「そう焦るな。釣りは魚との真剣勝負だ。待つ楽しみも釣りの醍醐味だよ」


 そう言っているユイトやバロン、クリスは2~3匹釣り上げてるのにあたしだけ0だから面白くない。

ユイトがエサをつけた竿を受け取りながら、あたしはまた湖に糸を垂らす。

どれくらい経っただろう。

諦め半分で気長に竿を動かしてると、ウキがピクピクと動き、沈んだ。


「か、かかった! ユイト! かかったわよ!」

「焦るな! クリス! 手伝ってくれ!」

「分かったよ!」


 こっちの様子を見に来ていたクリスが、あたしの背後に周り、後ろから支えてくる。


「レベッカさん、焦らないで。無理矢理竿を引いたり糸を引いたりすると魚が逃げるんだ。魚を泳がせて疲れさせてから釣り上げるんだよ」

「わ、わかったわ」


 クリスは背が高いしボーイッシュなので男に抱きしめられてるような気分だけど、ちゃんと女性的な部分がしっかりあり女だ。


「いいよレベッカさん。焦らないで、ボクに任せて……そう、そうだよ。いいよ、ゆっくり引いて」


 なんかいかがわしい感じに聞こえるけどしてるのは釣りだ。うん、釣りよね?

クリスといっしょに竿を握り、指示に従って竿を動かす。

やがて糸を引く動きが鈍くなってきた。


「今だよ! 引いて!」

「え、ええ!」


 クリスの指示に従って、竿を引く。

水面に現れた魚を、ユイトが網ですくった。


「やった! やったよレベッカさん! 初フィッシュだね!」

「え、ええ。そうね……」


 クリスに身体を離され、ようやくひと心地つく。

柔らかかったけどドキドキしたし、うん、緊張した……


「よかったなレベッカ、お前が釣った魚だぞ」


魚から針を外したユイトが、魚を渡してきたので両手で受け取る。

口をパクパクさせて、ヌメヌメしてて、気持ち悪いけど何だかうれしい。

でもやっぱりちょっと気持ち悪い! 料理で魚触った事はあるけど生きてるのは初めてだから気持ち悪い!

あたしはユイトに魚を渡して湖で手を洗った。


「それじゃあ俺はバロンといっしょに魚を焼いてくるから、クリスとレベッカはゆっくりしといてくれ」

「うん、分かったよ」

「手伝わなくていいの? あたし、料理スキル持ってるわよ」

「いいっていいって。ちょっと待っててくれ」


 魚を手に、ユイトがバロンの所に向かう。

バロンは魚を捌き始めていて、焼く用意も万端だ。


「レベッカさん、ここ座りなよ」


クリスがレジャーシートを広げて座り込み、ポンポンと隣を叩いてくる。

これを断ってしまうのは印象が悪いだろう。

あたしはクリスの隣に腰掛けた。


「レベッカさん、釣り初めてだったんでしょう? どうだった?」

「楽しかったわ。中々釣れなかったけど、1匹釣れてよかったわ」

「アハハ、ならよかった。どう? ボク達の釣り仲間に入らない?」

「たまにならいいわよ」


 竿を引く感覚や、釣り上げた魚のヌメヌメした感覚を思い出しあたしは湖面を見る。

今までに味わった事のない感覚だった。

魔法使いの里では、女が釣りなんかしちゃいけなかったから……


「そういえばクリスっていくつなの?」

「ボク? 今17歳だよ。9月で18歳」

「えっ!? あたしとタメじゃない!」

「そういえばそうだったね。レベッカさんの誕生日って……」

「8月よ。8月5日」

「1ヶ月だけお姉さんかー。ちぇー、残念。ボクの方がお姉さんだと思ってたのに」


 何やら悔しがってるクリス。その横顔は明るい。

そういえば前に元冒険者だって聞いた事がある気がする。

なのにどうして、今冒険者ギルドで受付嬢してるんだろう。


「ねえクリス。ひとつ聞いていいかしら」

「何?」

「クリスって、元冒険者でしょ?」

「うん、そうだよ」

「なんで今冒険者ギルドで受付嬢してるの?」


 あたしの問いかけに、クリスがうーんと言いながら湖面へと視線を逸らす。

何やら答えにくい事のようだ。


「あ、言いにくい事だったら言わなくていいけど……」

「ううん、いいよ。ボク、槍使いの冒険者で結構実力はあったんだけどね……。モンスターとの戦いの最中に足を大怪我しちゃったんだ」


 そう言ってクリスが、左足を見せる。

そこにはうっすらとだが、傷跡が残っていた。


「ケガ自体は前の神官様に治してもらったんだけど、それからはモンスターと戦おうとしても足が竦んで動けなくなってさ。引退したんだ。で、前の領主様の計らいで冒険者ギルドに拾ってもらって受付嬢してる訳」

「なるほど」


 前の領主様。今は毎日ギルドに来てるセイラのおじいさんが仕事を紹介したって訳ね。


「でもクリスが今17歳よね? 一体いくつの時に引退したの?」

「15歳だよ。13歳の頃から冒険者してたから、2年ちょっとしか冒険できなかったなあ……。まあでも、今の仕事は楽しいし満足してるよ」

「そうなんだ……」


 口ではそう言っているが、未練があるのだろう。

その横顔は、少し寂しそうに見えた。


「オーイ、クリスー、レベッカー。魚焼けたぞー」


 遠くから、ユイトが呼びかけてくる。

炭火で焼いた香ばしい匂いだ。

さっきから鼻が刺激されてお腹ペコペコだった。

あたしは立ち上がってクリスに手を差し出す。


「焼けたみたいよ。行きましょ、クリス」

「あ、うん」


 クリスは素直にあたしの手を掴んで、立ち上がる。

話す前はちょっと苦手だったけど、話してみたらいい子だった。

同い年だし、これから仲良くなれたらいいなと思える。

あたし達は、皆で釣った魚を食べた。

自分で釣った魚は、おいしかった。

元冒険者の受付嬢 クリス・クリストフ


年齢:17歳

身長:167cm

誕生日:9月22日

ジョブ:槍使い

レベル:30

スキル:槍 レベル3

    格闘 レベル3

    回避 レベル1

    跳躍 レベル3

    状態異常耐性 レベル1

好きな食べ物:麺類全般・甘い物

特技:舌でサクランボの茎を結べる

趣味:釣り・ショッピング・ユイトをからかう事

ステータス:こうげき 31

      ぼうぎょ 20

      すばやさ 33

      まほう 0

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ