第5話「仕返しの時間」
風呂上がりのシャンプーの匂い。だけじゃない、いい匂い。
普段とは違う、下ろした髪。
部屋着らしい薄手のピンクの上着に、足首までの丈のズボン。
他の人間じゃ見られないだろう、領主の娘の女騎士のプライベートな姿。
その領主の娘の女騎士が、自分の家の物置でバインドをかけられようとしていた。
「手を後ろに組んでくれ」
「あ、ああ」
「『バインド』!」
「ひゃうん!」
後ろ手に拘束され、セイラが変な声を上げる。
「こ、この感覚……! やはりいい……!」
やっぱりコイツは、どうしようもない変態なんじゃないだろうか?
そんな変態を拘束している縄に縄をつなぎ、天井の太い梁に引っかけた。
「オ、オイ!? 何をする気だ!」
「見りゃ分かるだろ。吊るそうとしてるんだ」
「吊るそうとしてるって……くっ、はあ……♡」
「キツイだろ? キツイのが気持ちいいんだろ?」
セイラを拘束してる縄を梁に固定し、縄を引っ張って身体を吊り上げていく。
「わ、私にこんな事をしてタダで済むと……」
「(グイッ)」
「ひゃうん!? オ、オイ待て! 待ってくれ!」
「待たない」
吊り上げる縄を固定し、セイラの身体を足が付くか付かないかの所に吊り上げると、セイラが身体を震わせる。
「くっ……! ハア……っ♡ き、貴様何を……!?」
「昨日は随分言ってくれたな、セイラ様」
セイラの顎に手を当てクイっと引きながら、俺はその目をジッと見る。
セイラは、一瞬だけ俺と目を合わせた後、すぐに目を逸らす。
コイツ、Mだな。
「しょ、しょれは……」
「『へっぽこ冒険者』だっけ? そのへっぽこ冒険者に縛られ吊される気分はどうだ?」
「き、貴様! バインドが解けたら覚えて……」
「(グイッ)」
「ひゃあっ!? お、おいやめろ! これ以上はやめてくれ!」
吊している縄を引っ張ると、セイラが声を上げる。
「やめてくれ、じゃなくてやめてください、だろ?」
「う、う~……や、やめてください……」
「やめない」
「なっ!? ちょ、ちょっと待て! こ、これ以上は……!」
「これ以上は、なんだ?」
「う、うう~……気持ち、よすぎて、おかしくなるから……!」
「変態」
「はうん!」
吊されたセイラが、身体を大きく震わせる。
その姿を見てると、嗜虐心が刺激される。
俺はセイラの足に縄を……
「ただいまー! セイラー! あたしが冒険から帰ってきたわよー!」
……掛けようとした所で、玄関から元気な女の声が聞こえてきた。
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「あれー? セイラー? いないのー? おかしいわね、靴はあるのに…」
リビングに上がったらしい女が怪訝な声を上げている。
マズい! こんな所を見られたら非常にマズい事になる!
俺は物置の小さな窓を開けてその窓枠に足をかけた。
「(オ、オイ!? 何しようとしている!?)」
「(見て分かんねえのか! 窓から逃げるんだよ!)」
「(私だけ置いて逃げる気か!?)」
「(バインドは時間経たないと解けないんだから仕方ないだろ!)」
「(逃がすものか! 逃がさんぞ! 説明するなら貴様もいっしょだ!)」
「(や、やめろ! 足を絡ませるな! 自分で自分を縛って吊したとでも説明すりゃいいだろ!)」
「(できるか! わ、私はそこまで変態ではない!!!)」
「セイラ? どこなのー?」
窓から逃げようとする俺と、俺を逃がすまいとしてくるセイラ。
俺達が小声で言い争っている間に、風呂場やトイレ、セイラの寝室を開けた女の足音がこっちに近づいてくる。
マ、マズい! 何とか逃げなければ!
しかしセイラが長い足を俺の身体に絡みつけてきていて、逃げ出せない。
そうこうしている内に。
「(ガラッ)あっ」
「あっ」
「ああ~……」
物置を開けた紅い髪の魔法使いらしき女が、俺と、俺に足を絡ませているセイラを見て目を大きく見開く。
「ア、アンタ誰!? セイラに何してんのよー!!!」
そして、ブチギレた様子で俺を指さした。




