第47話「畑」
王都から帰ってきて数日が経った。
俺は庭の畑の手入れに汗を流していた。
王都に行く前から植えていた苗は、順調に茎と葉を伸ばしていた。
「ねえ、これ何の植物なの?」
昼過ぎまで寝てたレベッカが、帽子をかぶってのんびり近寄ってくる。
「そりゃトマトだよ」
「これは?」
「ナスだ」
「これとこれは?」
「トウモロコシとニンニクだ。……お前、野菜がどんな植物になってるのか見た事ないのか」
「魔法使いの里じゃ魔法で野菜に水をあげたり、収穫したりしてるから野菜がどんな姿してるか知らないわね」
「……」
「で? これいつ採れるの? 1週間後?」
いかにもな解答に俺が閉口するのもつゆ知らず、レベッカが呑気にそんな事をのたまう。
「そんなに早く育つ訳ないだろ。全部夏野菜なんだから実をつけて収穫できるのは2,3ヶ月後だ。夏まで待て」
「まどろっこしいわね。魔法使いの里なら1年中なんでも採れるし、魔法で成長を早められるわよ」
「そんなインチキな農業、農業じゃねえ」
レベッカに答えながら、俺は苗の周りに生えている雑草を根っこから抜く。
「ねーユイト、こっちは何?」
「そっちは花だ。花」
「花? 何の花?」
「色々だ。早咲きのものから遅咲きのものまで色々植えてみた」
「ふーん……」
レベッカが、何やらジトっとした目を向けてくる。
「女の子にプレゼントする用?」
「違う。花を植えておくと虫が寄ってくる。その虫が野菜に受粉させたりするのに必要なんだ」
「虫ねえ……。あんまり好きじゃないんだけど」
「ワガママ言うな。虫がいないと作物は育たないんだぞ」
レベッカが、イヤそうな顔をするが無視する。虫だけに。
「畑いじりに熱心なのもいいけど、ほどほどにしときなさいよ。夕方から冒険者ギルドに集まるように言われてるんだから」
「ああ」
「それとあたしは今夜アスミちゃんの所に泊まるから。夕飯はいらないわよ」
「分かった」
「……」
何やら言いたげな目で、レベッカが俺の手を見てくる。
コイツ、前々から俺の手元を見てくるけどなんなんだ? 手フェチなのか?
俺はレベッカの視線に居心地が悪い物を感じながら、鍬を動かした。




