第38話「謎の少女①」
「うわあああああああ!!? そこの方あああああ! どいてくださあああああああい!!!!!」
「えっ? ……うぎゃあああああああああ!!!!?」
突然空から、謎の少女が降ってくる。
俺は受け止めるか避けるか迷って受け止める事を選んだが、勢いがすごく受け止めきれず押しつぶされる。
「あいたたた……」
「痛え……、あと重くはねえけど、どいてくれ……」
「ああっ!? スミマセン!」
謎の女が俺の身体から飛び降りペコペコ頭を下げる。
立ち上がって見ると、やっぱり女というより少女という感じだ。
俺より頭ひとつ低い背丈150cmくらい、青い髪を1つにくくった、整った顔立ちの美少女のクリっとした目が俺の目と合う。
細身だが鍛えられている感じがする15歳くらいの少女だ。
その身体はフード付きのローブに包まれており、冒険者か、高貴な身分の者が正体を隠すために着ていると思われるが……
「受け止めきれなくて悪かったな、ケガはないか? それじゃ俺はこれで」
「お待ちください! ぶつかったのは私の方です! おケガはございませんか!」
しゃべり口調からローブを着ている理由を後者だと悟り、厄介事を避けるために逃げだそうとするが少女に回り込まれて押し止められる。
素早い動きだ。高レベルの冒険者級らしい。うげえ、厄介な事になりそうだ。
「いや、ケガはない。それじゃ俺はこれで」
「お待ちください! ケガはなくともご迷惑をおかけしたお詫びをさせてください! あそこの塀をジャンプで越えてきたのですが、人がいる事を想像できませんでした!」
「あそこの塀を、って……」
遠くにある、高さ3mはありそうな塀を指さす少女を見て俺は唖然とする。
あれをこんな少女が飛び越えただって? セイラクラスか、それ以上の身体能力の持ち主なのか?
「っ! マズいです! スミマセン! 匿ってください!」
「匿ってって……、あ、オイ」
俺の背中に隠れた少女に聞く前に、足音を立てて男達がやってくる。
「オイキサマ! こっちにこのくらいの背丈の御方が来なかったか! ローブを着た青い髪の御方だ!」
男達の中でもリーダーらしい強面の男が、俺に問いかけてくる。
マントの下は、仕立てのよさそうな服だ。そして俺の後ろに隠れてる少女の事を「御方」と呼んでいるって事は……やはりこの少女は相当高貴な身分らしい。
俺のマントの後ろに身を隠した少女が身体を縮こまらせる。
人身売買とか、誘拐犯とかそういう感じじゃなさそうだが……
さて、どうしたものか。
「……青い髪かどうかは分からなかったけど、ローブを着た奴があっちに走って行ったぞ。ものすごい足の速さだったな」
「聞いたか! お前達、追うぞ!」
男達が、大急ぎで俺が適当に指さした方へと走って行く。
「フン、礼ぐらい言えってんだ。常識のない連中だな」
「あのう……」
「やれやれ、サレン様の教えにウソはいけねえって書いてあるのにウソ吐いちまった。今度懺悔室で謝らねえとな」
片目を閉じて後ろに隠れてた少女に言うと、少女がパアっと顔を輝かせる。
「私も謝ります! いっしょに謝ればサレン様も許してくれる事でしょう! ありがとうございました!」
「いいって事よ。それじゃ俺はこれで……」
「お待ちください!」
そのまま立ち去ろうとしたが、少女に腕を掴まれ止められる。
「これも何かのご縁です! いっしょに行きましょう!」
「いや俺、連れを待たせてるから……」
「ならお連れさんもごいっしょしましょう!」
「君といっしょにいる所をさっきの連中に見つかったら……」
「大丈夫です! 私が言えば許してくださいますから!」
「……」
どうやらあの連中は、この子の部下かお付きの連中らしい。
よほどの大貴族の子女とかか? 面倒事になるのは御免なんだが……
「普段自由がないから、たまには自由に街を歩いて回りたいのです……」
「……」
そう言われてしまうと、同情してしまう。
このくらいの子なら、遊びたい盛りだろう。
謎の少女が、眉を下げて困った表情をする。
「それに今、大変困った状況なんです」
「何?」
「実は私、逃げ回っている間に道に迷ってしまいまして……」
「……」
こうして、迷子がもう1人増えてしまった。
どうしてこうなった!




