第37話「迷子」
「さて、式典まで時間があるが……。これからどうする?」
「自由行動にしましょ。あたしは魔法学校に行ってくるわ」
「わたしは修道院に顔を出します」
「フム、なら私は買い物に行くとするか」
宿に受付を済ませ荷物を置いたセイラ達の視線が、一斉に俺を向く。
「「「ユイト(さん)、いっしょに行こう(わよ)(きましょう!)」」」
そして3人一斉に、そんな事を言い出した。
セイラ・レベッカ・アスミちゃんの3人が、キッとお互いを見合う。
「魔法学校にしましょうよ。色々面白い物もあるわよ」
「修道院に行きましょう! ユイトさんはサレン様教徒でしょう?」
「買い物に行くぞ。ユイト、雇用主命令だ。荷物持ちに来てもらおう」
そんな事を言う3人。
3人の視線がバチッと交錯する。俺はそんな3人を取りなすように、セイラについていく意を表明した。
「雇用主命令なら仕方ない、セイラについていく事にするよ。俺は魔法使えないから魔法学校に行っても仕方ないし、それに修道院は男子禁制だろ?」
本当は部屋でゴロゴロしていたいが、断ると面倒な事になりそうだし、王都も見てみたい。人混みは苦手だが……
「と、いうことだそうだ。レベッカ・アスミ様、すまないな」
「むう、仕方ありませんね」
「集合は何時にするの?」
「午後4時にしよう。3時までにはこの宿に戻ってくるように。よいな?」
「「分かりました(分かったわ)」」
「それじゃあ行くぞ。ユイト、ついてこい」
「分かった」
俺はセイラの後をついて王都を歩いた。
****************************
王都を歩くセイラをついていきながら、俺は人の多さにクラクラする。
セイラの足取りは迷いがない。まるでこの街を歩き慣れているようだ。
「随分詳しいみたいだな」
「私は中学からこっちの学校に入って暮らしていたからな。そして大学生の頃はレベッカやアスミ様に知り合っていっしょにクエストを受けたりしてた」
「ああ、そういやそんな事レベッカが言ってたな」
前にそんな話を聞いた事を思い出し、ぼんやりと頷く。
「なあ、お前はレベッカやアスミちゃんとどんな風に知り合ったんだ?」
「それは……なんだ? 私に興味でも出てきたのか?」
「そんな所だ。そういや俺の話はしたけどお前の話ってあんまり聞いた事なかったと思ってな」
「そういえばそうだな。でもそれはまた今度話そう」
「何でだ?」
「話せば長くなる話だからだ。それより買い物だ。レイフォード領では買えない服を買いたい」
「分かった。じゃあまた今度聞かせてくれ」
「ああ」
頷いたセイラが、ある店に入る。
俺も続いてその店に入り……すぐ外に出た。
「なぜ外に出る」
「出るだろ! 男の俺には気まずいわ! 下着屋に入るならそう言ってくれ!」
「下着屋ではない、ランジェリーショップだ」
「知らねえよ!」
入り口から顔を出したセイラが不服そうな顔をしているが、俺はじりじりと後ろに下がる。
「なぜ後ろに下がる。いっしょに中に入ればいいだろう」
「気まずいよ! 男が入れる店じゃねえ!」
「そういうものか?」
「そういうもんだ! ……前々から思ってたけどお前、男心に疎すぎだろ。さては男と付き合った事ないな」
「……では私は買い物をしてくる。お前は終わるまで外で待ってろ」
「オイ」
俺の問いかけを無視して店に入っていくセイラ。図星のようだ。
まあ貴族の娘は身持ちが固いっていうしな。俺も誰かと付き合った事ないし……
俺はセイラに言われた通り外で大人しく待つ事にする。
王都の街は人が多く店も多くて賑やかだ。
そんな中、俺は気になる物を見つける。
向かいにある路地裏の細い道だ。
「へえ、いい雰囲気じゃねえか」
レイフォード領では領主に潰された怪しい雰囲気満載の店が建ち並ぶ路地だ。
ずっとそういう店に通っていた事もあり懐かしい雰囲気を感じる。
「……ちょっとだけ、ちょっとだけならいいよな」
セイラの買い物が終わるまでちょっと見て回るくらいならいいだろう。
俺は怪しい路地へと進んでいった。
………
……
…
「迷った」
怪しい客引きを無視しながら、ちょっと見て回るくらいのつもりだったがいつの間にか迷子になってしまった。
さっきから同じ所しかグルグルしていない。
「参ったな……。誰かに道でも聞くか?」
いかがわしい雰囲気の店ばかりなので金でも要求されそうだが、セイラを待たせる訳にはいかない。
俺は手近な居酒屋っぽい所に入ろうとして……
「うわあああああああ!!? そこの方あああああ! どいてくださあああああああい!!!!!」
「えっ? ……うぎゃあああああああああ!!!!?」
突然空から降ってきた少女に押しつぶされた。




