第36話「王都へGO」
「王都に行くぞ」
「イヤだ」
「イヤだと言っても行くぞ。服も仕立てたじゃないか」
「そうだけどよ……」
旅行用のトランクケースを引っ張ってきたセイラが、渋る俺を玄関から引きずり出そうとする。
トランクケースなんか持ってない俺は、何でも小さくして入る魔法の袋マジック・バックに何でも詰め込んでいるが、王都になんか行きたくない。
「王都って行った事ねえんだよ。人多い所苦手だし、式典なんてどう振る舞えばいいか分からねえしお前達だけで行ってくれよ」
「今更何言ってるのよ。式典なんて立ってりゃいいだけよ、多分」
「すごく不安なんだが」
「いや、お前は立ってるだけでいい。国王陛下から表彰を受けるだけだ」
「そうは言ってもよ……」
「もー、ユイトさん。渋ってないで行きましょうよー。論功行賞ならその後にパーティーもあるでしょうし、滅多に飲めないワインが出るはずですよ!」
「オイ未成年」
キラッキラに目を輝かせるアスミちゃんに、俺は閉口する。
この娘、公の場で飲酒していいのか?
「式典会場は大聖堂だからサレン様の庇護下だ。神官は治外法権になる」
「理不尽な……」
「なんでもいいから早く行きましょ。もうテレポート完成してるのよ」
家の前で、レベッカが完成させたテレポートの魔法陣が光っている。
近くなら短縮詠唱で移動できるが、遠くまで移動するとなると時間と手間がかかるらしい。
仕方ないので魔法陣の上に乗ると、俺の腕を取ったままのセイラとレベッカが手をつなぎ、さらにアスミちゃんも俺の手を握ってくる。
「『テレポート』!」
レベッカがテレポートを発動させる呪文を唱える。
こうして俺達は、式典に出るため王都に移動した。
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「うっ……」
まぶしい光がして、目を細める。
目を開くとそこは、王都の城門前だった。
王都で魔法使いのテレポートで登録できるのはここに限定されているらしく、冒険者らしいパーティーや、運送業者などがあちこちでテレポートで到着している。
そして当然の事ながら、王都に入るには受付審査があるようだ。
「次の者、入れー!」
城門前で、受付審査の門兵がえらそうに声を上げる。
「行くぞ」
セイラに引っ張られ、俺達は受付審査へと進む。
「代表者の名前と王都に来た目的を」
「レイフォード領領主の娘、セイラ・レイフォードだ。論功行賞に出席するため馳せ参じた」
「こ、これは失礼しました! セイラ様、ようこそ王都へ。どうぞ、お進み下さい」
王族からの招待状を見せながらセイラが名乗るのと同時に、兵士の態度が一変する。
貴族の娘の権威は、辺境の領主とはいえ通用するようだ。
セイラ、レベッカ、アスミちゃんに続いて俺も進もうとする。
しかし兵士に肩を掴まれ止められる。
「待て、お前もこの一行に入ってるのか?」
「入ってるぞ。場違いに見えるだろうがな」
「その男は私の部下だ。そして魔王の幹部の1人、剛腕のリューガを討ち取った男でもある」
「あ、あの剛腕のリューガを!? 失礼致しました!」
俺を止めようとした兵士が、慌てて手を引っ込め敬礼をする。
「あの剛腕のリューガをか……。アイツのせいでここも、近くの砦も何度もメチャクチャにされたからな……。ありがとう。よくやってくれた」
「いや、まあ……」
俺は最後に爆発玉を投げただけなんだがというのはおいといて、あの剛腕のリューガにここも襲われたらしい。
よく見ると壁の一部が新しくなっており、ひどく破壊されたのを修繕したらしい。
「ユイトー、行くわよー」
「早く式典会場に急ぎましょう!」
「アスミ様、式典は夜からです。まだ飲めませんよ」
どんな戦いだったかと聞かれたらどうしようかと思ったが、3人に促され俺は王都へ続く城門を潜っていく。
兵士は、姿が見えなくなるまで敬礼を続けていた。




