第33話「道具屋ムジカ」
「ねえどこ行くの? こんな路地裏に進んで」
「こっちにムジカの道具屋があるんだよ」
「まさか、あたしをどこかに連れ込んで手籠めにする気!? 消し炭にするわよ! バインドされても、最後の最後まで抵抗するわよ!」
「しねえよ。ホントにこっちに店があるんだって」
「……乗ってくれたっていいのに」
何やらブツブツ言っているレベッカを連れて、俺は路地裏の奥の奥へと進んでいく。
つい最近まで俺が副業をしていた怪しい店が建ち並んでいた怪しい通りだ。
今は、領主に取り締まられて店も閉まっているし、客引きもいなくなっている。
「つまんねえ街になっちまったなあ……」
「何? 何か言った?」
「何でもない」
確かにイケナイ店があるというのは治安上よろしくないかもしれないが、副業に誘われた頃ドキドキしながら通った店がなくなってしまったというのは寂しいものがある。
「ユイト? ユイトじゃないか?」
「うん?」
そんな事を考えながら歩いていると、名前を呼ばれ振り返る。
そこに、領主の部下達に摘発された店のオーナーがいた。
「あれ? オーナー? シャバに出てたのか?」
「人聞きの悪い事言うなよ……。罰金払って釈放してもらったんだよ。お前さんは、逃げ切れたのか?」
「逃げ切れたっちゃ逃げ切れたが、逃げ切れなかったといえば逃げ切れなかった」
「なんだそりゃ、まあ、お互い無事で何よりだけどよ……」
レベッカの方をチラッと見て、オーナーが怯えた表情を浮かべる。
見るからに高レベルな魔法使いだから、領主の関係者とでも思ったらしい。
領主の娘の親友だから間違いではないけれど。
「オーナー、今何してるんだ?」
「まっとうに居酒屋商売してるよ。売り上げは下がっちまったけど仕方ねえ。それよりユイト、エレナが今どこにいるか知らないか?」
「エレナちゃん? エレナちゃんがどうかしたのか?」
あの晩領主の部下に取り押さえられていた銀髪の美しい女の子、エレナちゃんの名前に心の臓がどよめく。
「領主の部下に連れて行かれる最中に、お前さんのバインドが解けた隙に逃げ出したんだ。そっから行方不明だとよ」
「行方不明!? エレナちゃんが!?」
「賢い子だから無事だと思うが……。一応気に掛けといてくれ。あの子、お前のお気に入りだろ?」
「まあ……、そうだけどよ……」
「頼んだぞ。じゃあなユイト、達者でやれよ」
それだけ言って、オーナーが店へと引っ込んでいく。
「ユイト? 話は終わった?」
「あ、ああ……」
「それじゃあ行きましょ。ムジカって人の道具屋」
「……ああ」
エレナちゃんの事は気になるものの、レベッカにせっつかれ俺は路地を奥に進みムジカの道具屋に向かった。
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「ムジカー、やってるかー?」
「あ? ああ……なんだユイト、お前さんか。店なら開いてるが閉店してるようなモン……」
店の奥からグレイヘアーでヒゲ面の店主、ムジカがのっそり顔を出す。
その周りからは酒臭い匂いが漂っている。昼間っから飲んでいたようだ。
作務衣の胸をボリボリと掻きながら、ムジカがあくびをする。
その目が、レベッカを見てカッと見開かれた。
「やあお嬢さん、道具屋ムジカにようこそ。何かお探しかね?」
「ねえユイト、この人可愛い子が好きって言ってたわね」
「ああ、お前は可愛い認定されたみたいだぞ、よかったな」
「それは別にいいんだけど、すんごくお酒臭いんだけど」
「ガマンしろ」
ムジカの酒の匂いは鼻がいいレベッカには耐えがたいらしく、顔をおもいっきりしかめている。
そんなレベッカの事など気にせず、ムジカが櫛で髪を整えた後レベッカの手を握る。スケベじじいめ。
「ムジカ、防具を新調したいんだ。あと爆発玉も」
「なんだ? ジンジャーに聞いたが魔王の幹部と戦って壊れたのか?」
「ああ」
「冒険者ブックは持ってるだろうな?」
「ああ」
ムジカに言われ、冒険者ブックを差し出す。
ジンジャーは俺のレベル、ステータスと爆発玉取扱許可証を確認して頷いた。
「待ってろ、お前にちょうどいいのを見繕ってやる。爆発玉は2発でいいか? 金あんのか?」
「お金ならあたしが払うわ。600万あるから大丈夫よ」
1万マニーの硬貨がぎっしり入った袋を出しながら、レベッカが答える。
ムジカは、俺を見ていやらしい笑みを浮かべた。
「なんだユイト? お前いつからヒモになったんだ?」
「ヒモじゃねえよ。コイツにちょっと貸しを作ったからここで返してもらうって事になったんだ」
「もったいねえな、俺なら他のモンで返してもらうのに」
「いいからさっさと防具見繕ってくれ、このスケベじじい」
「へいへい」
ムジカがのれんを潜って店の奥へと引っ込んでいく。
「ねえユイト、この店道具屋なのよね?」
「ああ」
「防具や武器がいっぱい並んでるんだけど」
「防具屋や武器屋もやってるって言っただろ? むしろそっちがメインみたいなもんだよ」
壁にかかってる剣や斧、並んでいる篭手などを見ながらレベッカが興味深そうに頷く。
「剣とか斧とかは分からないけど、防具はいいもの置いてあるわね。軽いし丈夫そう」
「ムジカは腕がいいからな。この街の冒険者はほとんどムジカの武器や防具に世話になってるんだよ」
「……高いんじゃない?」
「それは心配ねえよお嬢さん、ウチは冒険者にやさしい店だからな」
のれんを潜ってムジカが、胸当てやら篭手と爆発玉を持ってきた。
「お前さんのレベルとステータスに合わせた重さと丈夫さの防具を持ってきたぞ。着けてみろ」
「ああ」
ムジカに促され、胸当てやら篭手をつける。
軽い、軽いけれど着けただけで分かる安心感がある。
「こいつでいい。ムジカ、いくらだ?」
「爆発玉2発と合わせて60万マニー……特別価格で55万マニーだ。お嬢さんに感謝しな」
「だってよレベッカ。……なあ、ホントに払ってもらっていいのか?」
「いいわよ別に。それにしても安いわね。王都だったら100万取られてもおかしくないくらいよ」
「ウチは冒険者にやさしい店なんだよ。その代わり大事に手入れしない奴はお断りだし、メンテナンス代はまあまあいただくがな」
レベッカから硬貨を受け取りながらカカカと笑うムジカ。
口じゃこんな事言ってるが、実際道具を大事にしない冒険者には厳しいし昔は俺も怒られた事がある。
ただおかげで武具や防具を大事にする習慣が身についたので、この街の冒険者はムジカに守られ育てられていると言っても過言でないかもしれない。
「そういやユイト、ジンジャーの奴が気になる事を言ってたぞ」
「気になる事?」
「向かいの谷に、オーガ達がいた痕跡があったけど、何か妙だって」
「妙?」
「ああ、オーガ達はどうやって来たんだろうってな」
「どうやってって……歩いて来たんじゃないのか?」
「デカいオーガが細い崖道通ってか? 崩れちまうだろ」
「そういやそうだな……」
谷の奥は、崖道になっていてあそこを通らないと谷には入れない。
それを考えるとオーガがどうやって谷まで来たのか疑問が残る。
「そもそも何でこんな辺境の街に魔王軍の幹部なんかが来たんだ? 今までも魔王軍は来た事があったけど、ちょっと様子見ぐらいですぐ帰ってただろ?」
「……分からん。あの魔王の幹部は言ってなかったし、話が通じるタイプでもなかったからな」
リューガの事を思い出して苦い思いがする。
アイツに聞いても話が通じなさそうだったし、ただ暴れる事しか頭になさそうな奴だったしで分かりそうもない。
街をメチャクチャにするのが目的だったとか?
でもこんな防衛上の役割が薄い辺境の街をメチャクチャにした所で、魔王軍に得があるとは思えないけど……
「ユイトー、用事は終わったでしょー? もう帰りましょー」
「お待ちなさいお嬢さん。お嬢さんのキュートなバストを守る防具を特別価格で作ってあげるよ。さあ、おじさんに採寸させてくれたまえ!」
セクハラまがいの事を言っているムジカを無視し、レベッカが俺の手を引いて店を出て行く。
鼻がいいだけに酒の匂いが耐えられなかったらしく、外に出た途端レベッカが大きく息を吐いて吸う。
「悪かったな、払ってもらって」
「いいわよ、助けてもらったお礼にしては安いもんだわ。これで貸し借りなしね」
「ああ」
「それじゃ帰りましょ。お昼ご飯よろしくね」
「あれ? お前アスミちゃんの教会に泊まるんじゃなかったのか?」
「アスミちゃんももうこの街に慣れたでしょ。今日からまたあっちで暮らすわ。……気になる事もあるしね」
「うん?」
「何でもない。まあ、アスミちゃんも1人じゃ寂しいだろうし、たまには教会に泊まってあげようとは思うけどね」
「はあ……」
「何その顔? そんなにあたしが帰ってくるのはイヤ?」
「別にイヤじゃねえけどよ」
「ならいいでしょ。さーて、夕方まで本でも読もうかしらね」
そんな事を言いながら、レベッカが鼻歌交じりに歩き始める。
俺はレベッカがなんでそんな上機嫌なのか分からず、首をひねりながら後ろをついて歩いた。
冒険者 ミア・セイドー
年齢:18歳
身長:152cm
誕生日:1月3日
ジョブ:魔法使い
レベル:32
スキル:炎魔法 レベル2
雷魔法 レベル2
氷魔法 レベル2
風魔法 レベル3
念話 レベル1
魔法威力増強 レベル3
テレポート レベル4
天気占い レベル5
格闘 レベル1
楽器演奏 レベル5
好きな食べ物:ハンバーガー
特技:楽器演奏
趣味:作詞作曲・ストリートライブ
ステータス:こうげき 18
ぼうぎょ 16
すばやさ 17
まほう 40




