第32話「来られなかった理由」
息を切らしながら、リリーがギルドの入り口から俺に近づいてくる。
「リリー、久しぶりだな」
「……ん、久しぶり。ユイト、大丈夫だった?」
「ああ、見ての通り大丈夫だよ」
「……ん、よかった」
リリーが、無表情ながらも安堵したように息を吐く。
そして何かを確認するように俺の手を触ってきた。どうしたんだ?
「リリー、仕事はどうしたんだ?」
「……ん。休みを取ってきた。昨日は、ごめんなさい。戦いに参加できなくて」
「そういやいなかったな」
昨日すっかり存在を忘れていたが、リリーがオーガの戦いに参加していなかった事を思い出す。
「お前の事だから何か理由があると思うだろうけど、どうしたんだ?」
「……ん。職場の人の避難誘導に当たったり、お年寄りや身体が不自由な人をテレポートで避難所に運んでたりしてた」
リリーの言葉に、俺もカイル達も納得する。
ベテラン冒険者のリリーだが、普段は勤め人でもあるし困っている人間をほっとけない性分だからそうしていたのだろう。
「……ある程度運んだ後、私も戦場に行こうとしたんだけど、領主の人につかまった」
「……なんだって?」
しかし突然出てきた領主の名前に、皆が顔をしかめる。
「……領主の人に言われた。『君はここに残れ、そして何かあった時に私を守れ』って」
「「「……」」」
「私のテレポートの残りの回数が、後1回しか残ってないって聞いたら『私と息子を連れて王都に逃げられないか?』って……」
「「「フッザけんなあのクソ領主!!!」」」
リリーの話に、皆がいきり立つ。
あのおっさん! 領主のくせにこの街を守る気ねえのかよ!
「……逃げる事は断って、絶対安全な教会に連れてったんだけど、それからも離してくれなくて。……ん、戦いが終わったって聞くまで離してくれなかった」
ゴン!とすさまじい音が響く。
セイラだ。
セイラが怒り満面の表情で、テーブルをブン殴っていた。
おかげでこっちが怒る気が削がれたけど……
「リリーさん、その話詳しく聞かせてもらえないだろうか。私はセイラ・レイフォード。領主の娘で……」
「……ん、知ってる。レベッカから聞いた」
「なら話が早い。ここでは何だから、どこか2人きりになれる場所で……」
リリーを連れて、セイラがどこかへ向かう。
それに何か言う冒険者はいない。
セイラが俺達側で、昨日もリューガ達相手に命がけで身体を張って戦った事を知っているからだ。
「なあユイト、やっぱこの街出ていかねえか?」
「ちょっとだけ考えるよなあ、あんな話聞いちまうと」
カイルとゲイルの兄弟がそんな事言ってくるが、首を振る。
「そんな話よそうぜ。それよりオーガの懸賞金でパーッとやろうや」
「でもよ……」
「あの領主はどうしようもねえよ。どうしようもねえけどこの街にはこれまで世話になってきただろ? 憂さ晴らしにパーッとやろうぜ」
「まあ、そうだな……。仕方ねえ、パーッとやるか。お前酒飲めねえけど」
「その前に装備を買い換えねえとな。防具は壊されちまったし、ジンジャーにも買い換えろって言われたし、爆発玉も使っちまったし」
「ムジカの所に行くのか?」
「ああ」
「ムジカ? 誰それ?」
「道具屋の主だよ。武器屋と防具屋もやってるけどな」
「腕はいいけど飲んだくれな爺さんよ。でも可愛い子好きだから、レベッカさんやセイラさん、アスミ様なら気に入られるかもね」
レベッカの問いかけに、マシューやミアが答える。
言い方はどうかと思うが、事実だから仕方ない。
しかし何が琴線に触れたのか、レベッカが興味深そうに鼻を鳴らした。
「ふうん、興味あるわね。ユイト、アンタの新しい防具と爆発玉買ってあげるから連れてって」
「オイ、爆発玉一発20万するんだぞ。そんな簡単に……」
「あたしを誰だと思ってるの? それくらい余裕よ、オーガ退治で600万入ったし」
まあまあの大きさの胸を張るレベッカ。そういやコイツ、結構な数のオーガを消し炭にしてたもんな……
「命を助けてもらったお礼よ。それくらいさせなさい。アスミちゃんも来る?」
「う~ん、行きたいですがわたしは今から教会に戻らないといけません」
「じゃああたしとユイトで行きましょ、いいわね?」
「ああ」
こうして俺は、レベッカを連れてムジカの店に行く事になった。
冒険者 ノッシュ・グラン
年齢:35歳
身長:182cm
誕生日:7月22日
ジョブ:戦士
レベル:41
スキル:盾術 レベル5
片手斧 レベル5
両手斧 レベル1
格闘 レベル4
状態異常耐性 レベル2
好きな食べ物:妻の手料理
特技:模型作り
趣味:掃除・洗濯・娘と遊ぶ事・妻とお酒を飲む事
ステータス:こうげき 45
ぼうぎょ 51
すばやさ 24
まほう 0




