第31話「懸賞金」
「ユイトさん、お手柄だったね! 魔王の幹部の1人を倒すなんて!」
「あ、ああ……倒したのはほとんどジンジャーだけどな」
ブロンドの髪をショートボブにした元冒険者の受付嬢クリスの喜色満面の笑みに、苦笑いを返す。
実際倒したのは俺の師匠のジンジャーで、俺は最後に爆発玉を投げただけだ。
けれども魔王の幹部、剛腕のリューガを倒したのは俺という事になっていて、懸賞金が俺に出るという。
「ユイトさん……魔王の幹部剛腕のリューガの懸賞金なんですが、30億マニー出ています」
「「「30億!!?」」」
クリスの口から告げられた剛腕のリューガの懸賞金に、俺だけじゃなくカイルやゲイル、ノッシュ達の冒険者仲間も驚いた声を上げる。
ウソだろ!? アイツ、そんな高額賞金首だったのか!?
「剛腕のリューガはここ数年で魔王の幹部になったらしいけど、王都近くの砦やら街を壊しまくってて、すごい被害を出してたんだよ。だから高額賞金首になってたみたい」
「まあ、確かになあ……」
「アイツ、すごい力だったもんなあ」
「正門もアイツが壊したんだろ? 武器持ってたオーガ達が十数匹よってたかっても壊せてなかったのに……」
リューガを相手に戦ったゲイルやノッシュ達が、しみじみ感想を漏らす。
「そんな事より30億だ! 30億! ユイト! 奢ってくれや!」
「王都行こうぜ王都! 王都で遊びまくるんだ!」
「アタシも頑張ったわよね! ユイト! 新しい杖買って! 高いヤツ!」
金に目が眩んだカイルやマシューやミア達が、調子よく俺にたかりにくる。
まあ、命がけで戦ったんだしそのくらいは……
「ええと、ユイトさん達。言いにくいんだけど領主様から伝言があって」
しかしクリスの言葉に皆一斉に凍り付く。
あの領主からの伝言。
もうイヤな予感しかしない……
「……クリス、領主からの伝言って、何だ?」
俺が尋ねると、クリスがすごく申し訳なさそうな顔でその伝言を口にする。
「『懸賞金30億マニーを、全額寄付して欲しい』と……」
「「「……」」」
「『壊された正門を建て直す代金に、全額寄付して欲しい』そうです……」
「「「……」」」
クリスから伝えられた領主の言葉に、皆言葉を失う。
命がけで戦ったのに、全額寄付しろだって?
確かに壊された正門は、モンスターやまた魔王軍が来た時のために建て直さないといけないだろうが、全額寄付しろだって?
クリスが申し訳なさそうに、領主から預かってる伝言を続ける。
「『断ってもいいけど、その際は冒険者にかかる税金が上がる事になるだろう』って……」
「「「フッザけんなよあのクソ領主!!!」」」
これまでにもう何度も冒険者にかかる税金を上げられただけに、カイル達がいきり立つ。
「こっちは命がけで戦ってるのに何様だ! ちょくちょくちょくちょく税金上げやがって!」
「アタシ達に払うお金はケチるくせに、使い道は明らかにしないし、舐められてるわよねえ」
「オイユイト、従う必要ねえぞ。こんな街、皆で出て行ってやろうぜ!」
「……いや、全額寄付しよう」
カイルやミア、マシューが怒ってくれているが、俺は全額寄付する事を決める。
「ユイト! でもよう……!」
「俺達が出て行ったら誰がこの街を守るんだ? 正門を建て直さなかったらモンスターだって入ってくるし、また魔王軍が攻めてきた時の防衛にも必要だ。それにサレン様がおっしゃってるだろ? 『お金は自分のためだけじゃなく、他人のためにも使いなさい』って」
「「「……」」」
サレン様信者でもある冒険者達が、サレン様の教義を持ち出され押し黙る。
不満そうにしてるが、押し黙る。
そんな中、大柄なアサシンのバロンが前に出て、俺の肩をポンと叩いた。
「バロン、ユイト、支持する。お金、他人のために使う、いい事」
「ありがとう、バロン」
バロンの言葉に、不満そうにしていたカイル達も仕方ないという表情になる。
ところがただ1人、納得していない奴がいた。
俺達の会話を聞いていたセイラが、クリーム色の髪にハーッと疲れた息を吐きながら
手を当てる。
「父上の所に抗議に行ってくる」
「よせ、セイラ」
「しかし……」
「お前の言う事でも、あの領主は聞く耳持たねえよ」
「……」
「それに何だかんだ言ってこの街には世話になってきた。今度は俺が恩返しする番だ。サレン様だって喜んでくれるさ」
「ユイトさん……はい! サレン様もお喜びになると思います!」
「……」
水色の髪の天使のような外見の神官のアスミちゃんも支持してくれているが、セイラが苦虫を潰したような表情になる。
そのセイラの肩を、紅い髪を三つ編みにして左肩に流している女魔法使いレベッカがポンと叩く。
「まあいいじゃない。コイツに30億なんて大金持たせてもロクな事に使わないだろうし」
「いや、自分のために少しだけ取っといて、サレン様の教会に寄付するつもりだった」
「どんだけサレン様好きなのよ。ハア、まあでも確かに正門の修理はしないといけないだろうし、そのくらいお金がいるだろうから、領主も困ってるんだろうしね」
レベッカの言葉に、セイラも渋々ではあるが理解したらしく俺に頭を下げる。
納得はしてないみたいだけど。
そんな話をしていた俺達の気を引くように、クリスがパンと手を叩く。
「でもユイトさん、それにカイルさん達に別の懸賞金が出ています」
「「「何?」」」
「オーガです。魔王の幹部の部下のオーガ達を退治した懸賞金が1匹100万マニー出ています!」
「「「えっ!!?」」」
「領主様に魔王の幹部の懸賞金の話はしないといけませんでしたが……オーガにかけられてる懸賞金の方は黙っておきました! こっちは領主様も知りません! ユイトさんは3匹倒してるから、300万マニーゲットです!」
クリスの言葉にギルドの中にオオオオオッという歓声が沸く。
「よくやったぞクリス!」
「さすが元冒険者!」
「こっちの気持ちが分かってるわね!」
「クリス可愛いよクリス!」
「やだもー、当たり前じゃないですかー。ボクはユイトさん達の味方だよ!」
カイルやミア達にもみくちゃにされながら、クリスが笑みを浮かべる。
他のギルドの職員達も黙認するようだ。命がけで戦っている俺達に思う所があるらしい。
そして魔王の幹部の懸賞金を全額取られる事にご不満の領主の娘様も見逃す気らしい。
そっぽを向いて聞こえないフリをしている。
いつもの席にいるクエスト爺さんはニコニコ笑い、いつも冒険者ギルドにいるワシ鼻でスキンヘッドの小男は興味なさそうに魔道具の手入れをしていた。
もみくちゃから逃れたクリスが、俺の前に出てきて微笑む。
「ユイトさん、はい、オーガ3匹退治の報奨金」
「おう、ありがとよクリス」
300万マニー分の硬貨が入った袋を俺に手渡しながら、クリスがイタズラな笑みを浮かべてペロリと舌を出す。
「これが領主様にバレちゃったら受付嬢クビになっちゃうかもね。ユイトさん、その時は養ってー」
「おういいぞ、ペットにしてやる」
「えー、お嫁さんがいいなー」
バカなやりとりをして笑う俺とクリス。
「……ねえ2人とも、どう思う?」
「……受付嬢にしては、距離感が近すぎるような」
「……いっそ我が家の権力で」
そんな俺達を、セイラ、アスミちゃん、レベッカが何やらこっちを見ながらこそこそ話している。何話してんだ?
「……ユイト!」
冒険者ギルドの入り口から俺の名前を呼ぶ声がする。
振り返ってみると、パッツンに切りそろえた前髪を振り乱したリリーがいた。
仕事先から駆けつけてきたのか、スーツ姿のリリーが息を切らしながらギルドに来ていた。
冒険者 ゲイル・クオンタント
年齢:27歳
身長:175cm
誕生日:3月10日
ジョブ:戦士
レベル:35
スキル:盾術 レベル5
片手剣 レベル4
格闘 レベル4
状態異常耐性 レベル1
好きな食べ物:ステーキ
特技:腕相撲・レスリング
趣味:筋トレ・温泉巡り
ステータス:こうげき 31
ぼうぎょ 46
すばやさ 23
まほう 0




