第26話「VSオーガ軍団①」
オーガ達との戦いは膠着状態に陥っていました。
最初はセイラさんやレベッカさん達が押している展開でしたが、残り10匹ほどになったオーガが連帯し、セイラさん相手に2~3匹で相手するようになり、レベッカさんも残りの魔力を考えてかセイラさんに一旦退くよう言われこちらの城壁の上に上ってきました。
こちらの城壁にいる魔法使い達やアーチャーの人も頑張っていますが、オーガが手に持った石のこん棒や剣などで遠距離攻撃を防がれ戦いは膠着状態に陥りました。
「『ヒール』! 『ヒール』! 『ヒール』!」
前線で身体を張っている戦士系の冒険者達もダメージを受けているため、わたしの飛ばす回復魔法で何とか持ちこたえている状況です。
そんな中、ツンツン頭の槍使いの男の人や、大柄なアサシンの男の人が頑張って2人で1体のオーガを倒します。
この街の冒険者も中々やるようです。
「ミア! 手前のオーガにパラライズを! バロン! ゲイルを助けに行ってくれ! ノッシュ! もう少し持ちこたえろ! マシューがそっちに行っている!」
アーチャーの人が出している指示がいいからでしょうか?
弓矢の腕もかなりのものです。王都の冒険者にも引けを取ってないかもしれません。
しかし戦況は膠着状態に陥ってしまいました。
こちらにいる遠距離攻撃持ちでオーガを一撃で仕留められる冒険者は1人もいません。
レベッカさんの炎魔法は近くでしか威力を発揮しないため、壁の上からだとよほど近くに来たオーガでもない限り倒せません。
いざという時のテレポート要員も兼ねているため、魔力も温存しないといけないのでレベッカさんを下がらせたセイラさんの判断は間違ってはいないでしょう。
ただセイラさんの大剣は数匹のオーガに封じられ、他の冒険者達も疲労からか動きは鈍ってきています。
「『サンクチュアリ』!」
オーガに押し切られそうになった戦士の人に、聖域の魔法を張ってオーガの攻撃を防ぎます。
その間に槍使いの人が駆けつけてオーガを攻撃しますが、石の剣で反撃されて押し返されます。
アーチャーの人が矢をつがえようとしますが、矢が切れてしまっているため援護できません。アーチャーの人が舌打ちをします。
全員がギリギリで持ちこたえている状態。
そんな中、ユイトさんは……
「危っ! 危なっ!? 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ! 死ぬわこんなの!?」
無様に逃げ回っていました。
オーガに目潰しの煙玉を投げ、地面を転がって攻撃を躱し、逃げ惑う。
なぜセイラさんは、ユイトさんを下に降りさせたのでしょう?
ユイトさんが持っているダガーでオーガに攻撃します。しかしちっとも効いてません。
けれどもすぐ死にそうに見えて、ユイトさんはギリギリでオーガの攻撃を躱し、生き延びています。
「『トータル・エンチャント』!」
援護のためにわたしは、ユイトさんも含め全員に支援魔法をかけます。
一時的にではありますが身体能力などが向上する支援魔法。それにより押し切られそうになっていた冒険者達が息を吹き返します。
けれども押されている状況には変わりません。
「くっ……」
既に重傷者も出ている中、戦いが終わった後に使う回復魔法の事を考えると、わたしの魔力も温存しておきたい所です。
温存しておきたい所ですが、ここはわたしも攻撃魔法で……
「待って、アスミちゃん」
ユイトさんを追いかけている3匹ほどのオーガに向けて攻撃魔法を放とうとしますが、レベッカさんに止められます。
「もう少し様子を見ましょう。アイツ、何か狙ってる」
レベッカさんに言われ、わたしはユイトさんに注目します。
ユイトさんは追いかけてくるオーガ達から逃げ惑いながら、矢を拾っています。
「カイル! これ使え!」
「オ、オウ! スマン!」
バインド用の縄で矢をひとつにまとめ、ユイトさんがアーチャーの人に放り投げます。
矢を受け取ったアーチャーの人が、矢を放ち下にいるセイラさんや冒険者の人を援護します。
多分この中で一番レベルが低いあの人が、オーガ3匹を引きつけながらそんな事をしている。
それに驚いていると、レベッカさんがやっぱりね、と小さくつぶやきます。
「レベッカさん? 何がやっぱりねなんですか?」
「アスミちゃん、この前ドラゴンと戦った時の事覚えてる?」
「ええ、はい……」
「ドラゴンがアスミちゃんに迫った時にセイラとアイツが助けに行こうとしたじゃない?」
「え、ええ……」
「あの時、ドラゴンが尻尾でセイラを吹っ飛ばしたんだけど、アイツは吹っ飛ばされてなかったでしょ?」
「は、はい……」
ドラゴンに襲われそうになったわたしを助けようと、セイラさんとユイトさんが駆け寄ろうとした時の事を思い出す。
ドラゴンは尻尾を振り回してセイラさんを弾き飛ばしたんだけど、あの人は弾き飛ばされていなかった。
「あの時アイツ何したと思う? ドラゴンの尻尾を、地面に伏せて躱したのよ」
「!!!」
どうやって避けたんだろうと思ったけど、そんな方法で躱していたなんて。
「動き自体は大した事なかったけどね。でもセイラも防げなかったドラゴンの尻尾攻撃を避けたのはあたしも驚いたわ」
あの時、セイラさんとユイトさんの斜め後ろにいて一部始終を見えていただろうレベッカさんが唇を下で舐める。
「それだけじゃないの。前にキメラとグリフォン退治のクエストにアイツを連れて行ったんだけど、試しにアイツ1人にキメラを任せてみたんだけど、アイツ、キメラ相手に逃げ延びててたのよ」
「そ、そんな無茶な!」
「面白半分でさせたのは反省してるわ。でもアイツはキメラ相手に無傷で生き延びてた。攻撃は全然通じてなかったけどね。レベル30はないと戦えないキメラ相手によ」
「……」
「アイツは弱いわ。弱いし頭も切れる訳でもないし、ジョブもステータスが低いシーフだし、特別なスキルもない。けれども冒険者生活を10年も続けてる。死亡率が高い冒険者生活を、10年もね」
「……」
「アイツ、絶対何か隠してるわ。セイラもそう思って下に降ろしたんだと思うの」
「それって……」
「待って、アスミちゃん。アイツ、何かしようとしてる」
レベッカさんに言われ、わたしは再度ユイトさんを注視します。
ユイトさんが、城壁に沿って走ります。
その後ろを追って3匹ほどのオーガがついてきます。
わたしは疑問に思います。
なぜ他の冒険者達がいる場所に走らないのでしょう。
ユイトさんは主戦場から離れるようにオーガ達を引き連れて走ります。
そして突然反転し、懐から何かを取り出します。
銀色の、箱? でしょうか。
頑丈そうな箱から何か黒い玉を取り出します。
「あの臭い……! まさか……!? アスミちゃん! 耳を塞いで!」
レベッカさんが、鼻を鳴らして何やら険しい顔をします。
わたしはとっさに耳を塞ぎます。
3匹のオーガに向けて黒い玉を投げつけるユイトさん。
黒い玉が真ん中にいるオーガにぶつかります。
そして、
3匹のオーガを巻き込んで、小規模な爆発が起きたのです。
冒険者 カイル・クオンタント
年齢:29歳
身長:175cm
誕生日:10月10日
ジョブ:アーチャー
レベル:39
スキル:弓矢 レベル5
投擲 レベル3
格闘 レベル3
参謀 レベル3
千里眼 レベル3
状態異常耐性 レベル2
敵感知 レベル1
好きな食べ物:酒
特技:カードゲーム
趣味:居酒屋めぐり
ステータス:こうげき 41
ぼうぎょ 36
すばやさ 36
まほう 0




