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バインドスキルで生き抜くファンタジー世界生活  作者: アブラゼミ
第1章「バインドスキルではじまる男の物語」

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24/204

第24話「こんな事だろうと思った」

「ただいまー! あたしが王都から帰ってきたわよー!」


 玄関から聞こえてきたレベッカの元気な声。

デジャブのような状況に俺達は慌てる。


「(オイ! アイツ王都に行ってるんじゃなかったのか!?)」

「(お、おそらくテレポートのスキルを習得して帰ってきたのだろう!)」

「(そんなに早く習得できるもんなのかよ!?)」

「(私も魔法について詳しくないから分からん! ……オイ貴様! 窓を開けて何をする気だ!)」

「(見て分かるだろ! 逃げるんだよ!)」

「(貴様だけ逃げる気か! そうはさせんぞ!)」

「(ちょっ、やめっ……足を絡ませるな! 1人で説明しろ! 自分で自分を縛ったとでも言えばいいだろ!)」

「(できるか! わ、私はそこまで変態ではない!)」

「セイラー、ユイトー、いないのー? ……まさか!」


 レベッカが足早にこっちに向かってくる足音が聞こえてくる。

俺は窓から逃げだそうとするが、セイラに足を絡められ阻止される。

そうこうしている間に……


「あーっ! やっぱりー! こんな事だろうと思った!!!」


 レベッカが物置の扉を開けた。




****************************




「……ええと、これはどういう状況ですか?」

「……見れば分かるだろ」

「いえ、さっぱり……」


 レベッカが帰ってきてから10数分後。

たまたま近くに来たと言うアスミちゃんが、バインドされているセイラとレベッカを見て困惑の表情を浮かべる。


「詳しい説明は省くけど、セイラはバインドされたいと言ってバインドされた。レベッカは俺に攻撃魔法を放とうとしたからバインドをかけた。つまり依頼されてした事と正当防衛だ。俺は悪くない」

「あんたが悪いわよ!」


 後ろ手に拘束され、足も拘束されて転がってるレベッカが俺に向けて吠える。


「俺は悪くない。バインドされたいと言い出したセイラが悪い。そして予想外に早く帰ってきたお前が悪い」

「あたしは悪くないわよ! 頑張ってテレポートのスキルのレベル上げてきたのよ!」

「それは偉いけどよ……アスミちゃん? 何してるんだ?」


 俺は、突然俺に背を向けて手を後ろに組んで正座したアスミちゃんの姿に困惑する。


「何って、バインドされる用意です。さあ、どうぞ!」

「どうぞって言われても……しないよ?」

「何でですか! セイラさんとレベッカさんだけズルいです! わたしもバインドしてください! な、何でしたらユイトさんの手で縛っていただいても……」

「ちょっと!? アスミちゃん何言ってるのよ! 変態はセイラだけで十分よ!」

「わ、私は変態ではない!」




****************************




「……どうぞ、粗茶だが」

「……ええ、知ってるわよ」

「……」

「……」


 レベッカが帰ってきてから約30分。

バインドが解けたけれども怒りが収まらないレベッカと、気恥ずかしそうなセイラ、自分だけバインドされなかった事にむくれてるアスミちゃんと俺の4人が居間で茶を啜る。

自分で言うのもなんだけど、何だろうこの空間……


「で? 何か言う事は?」

「俺は悪くない」

「この男! 『フレイム・…』」

「おっと攻撃魔法はやめるんだ。俺のバインドはお前が詠唱を唱え終わるより早いぞ」

「……ホント厄介よねあんたのバインド。まあいいわ。それより見て! テレポートのスキル上げてきたのよ!」


 冒険者ブックを広げながら、レベッカが自慢気に言ってくる。

確かにスキル欄のテレポートのレベルが5まで上がっている。


「どうやって上げたんだ? テレポートのスキルだけ上げるなんて事できるのか?」

「魔法系のスキルはそれを上げる専門の訓練があるのよ」

「剣士系やモンクなどの格闘系もそうだな。……シーフは聞いた事ないが」

「そりゃそうだろうな」


 シーフなんて弱い割にレベルが上がりにくいジョブ、選ぶ人間の方が珍しい。

俺みたいに他に選べるジョブがなくて仕方なくなる人間がほとんどだろう。


「一応王都で探してみたけど……バインドスキルを上げてくれる訓練はなかったわ。残念ね、ユイト」

「別に俺はバインドスキルを極めるつもりはねえんだよ。潜伏とか窃盗とか逃走とかのスキルを取りたい」

「それだけ聞くとコソ泥になりたいみたいだが……。まあ、私としてはバインドスキルのレベルが上がったらどうなるのか興味があるな」

「変態のレベルが上がるだけでしょ」

「オイ、一応モンスターの動きを封じたり、木に登ったり、罠を設置する時に使ったり色々使い道はあるんだぞ」


 コイツらの前では人間を拘束するスキルとして使ってばかりだけど、バインドスキルは色々と便利な使い方ができるスキルなのだ。まあ、大したスキルではないけど……

まあバインドスキルの有用性は置いておこう。

俺は気になっていた事をレベッカに尋ねる事にした。


「ところでレベッカ、聞きたい事があるんだが」

「何よ」

「お前は炎魔法以外を使わないのか、使えないのか、どっちなんだ?」


 ドラゴンとの戦いの最中、レベッカは『炎魔法以外、使えない』と言っていた。

魔法使いの中にはこだわりが強く炎魔法を専門にする者、雷魔法を専門にする者などおり、他の魔法のスキルを習得できるのにあえて習得しないという奴もいると前にリリーから聞いた事がある。

 けれども、レベッカは……


「……使えないわ。あたしは炎魔法以外のスキルが習得できないの」

「そうか、分かった」


 うつむいてバツが悪そうに炎魔法以外は使えないと言ったレベッカに、俺はそれ以上聞かない事を宣言する。

レベッカは、目を丸くして俺の顔を見た。


「……何で習得できないのか聞かないの?」

「人には色々あんだろ、俺だってバインド以外のスキルは使えないし」

「そう……」


 しおらしくうつむくレベッカ。普段の自信満々とは真逆の姿に落ち着かない気分になる。


「ま、まあテレポートのレベルが上げられてよかったじゃないか。これでまたあんなピンチに遭っても大丈夫だな」

「あんなピンチには、また遭いたくないがな」

「アハハ……、そうね」


 セイラの下手な励ましにツッコミと苦笑を上げながら、俺達は顔を上げる。

お茶を1口啜ったレベッカが、まだ熱かったのか顔をしかめる。

そして俺に向き直り、頭を下げた。


「……その、ごめんなさい」

「うん?」

「あたしが役立たずだったせいで、アンタが死んだ。あたしが氷魔法を使えるか、テレポートで全員移動できてたら……」

「たらればの話をしても仕方ないだろ。あの時はお前とアスミちゃんとセイラの3人で逃げるのが正解だった」

「それはできないわよ」

「ああ、貴様だけ残して逃げるなんてできん」

「でもそれが正解だったんだよ。あのまま戦ってたら全滅だってありえた。足が竦んで動けなかったアスミちゃんが一番危険だった。お前達の判断ミスで、あの子を死なせる所だったんだぞ」

「「「……」」」

「あの時は俺だけ置いて逃げるのが正解だったんだよ。良心が痛もうともな」

「でも……」

「いや、やはりそれは……」

「この話はもう終わりだ。一応全員無事なんだからいいって事にしようじゃねえか」

「「……」」


 納得行ってなさそうな顔のセイラとレベッカだが、これ以上言うつもりはないようだ。

ただ1人、アスミちゃんは険しい顔をしていた。


「よくありません」

「アスミ様……」

「もう夜も遅くなりつつありますし今日の所はこれ以上言うつもりはありませんが、よくありません。ユイトさん、命を粗末にするような真似は許しません」

「何?」

「アスミちゃん、どういう事?」


 アスミちゃんの言葉に、セイラとレベッカが揃って気になるという顔をする。

しかしアスミちゃんは説明する気はないようで話を打ち切りにかかった。


「言葉通りの意味です。ですがお説教はもう済ませましたし今日はもうおしまいにしましょう。セイラさん、今日はここに泊まらせて頂いてもよろしいでしょうか?」

「あ、ああ……それは構いませんが。布団が……」

「ユイトさんといっしょに寝るので大丈夫です」

「なっ!?」

「そ、それはダメよ! 襲われでもしたらどうするの!」

「大丈夫です。3日前の夜もおとといの夜も、昨日の夜もいっしょに寝ても手を出されませんでしたから」

「……オイユイト、説明を願おうか」

「やっぱあんた、消し炭に……!」

「誤解だ! いや、いっしょに寝たというのは本当だが俺が寝てる間に忍び込まれて……本当だからその剣と杖を降ろせ!」


 その後、誤解は解けなかったし納得してもらえなかったが不問という事になり、アスミちゃんはレベッカといっしょの布団で寝るという事になった。

・テレポートスキルのレベル別できること

 レベル1 自分と触れている相手を3人まで、登録している場所(3カ所まで)に移動させる事ができる(1日3回)

 レベル2 自分と触れている相手を5人まで、登録している場所(5カ所まで)に移動させる事ができる(1日3回)

 レベル3 自分と触れている相手を10人まで、登録している場所(5カ所まで)に移動させる事ができる(1日5回)

 レベル4 自分と触れている相手を20人まで、登録している場所(5カ所まで)に移動させる事ができる(1日10回)

 レベル5 自分と触れている相手を20人まで、登録している場所(5カ所まで)と、目で見える範囲の場所に移動させる事ができる(1日10回)

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