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第2話 幼馴染が親友といい雰囲気になっている

「へえー、それは知らなかったなあ」

「本当ですか? ふふふ、良かったですっ」


 校庭の向こうから、洋一と朱里が楽し気に会話を交わしながら歩いてくる。一方の俺はというと、今日も帰宅のためにとぼとぼと一人寂しく足を動かしていた。


 朱里が洋一に相談した日から一週間が経った。放課後、こうして二人が話しているのを見るのは珍しい光景ではなくなってしまった。陸上部の朱里と、サッカー部の洋一。部活の合間に校庭で会うことはさほど難しくないようだ。


「あっ、しまちゃん!」

「よう、周平!」

「お、おう……」


 すれ違いざま、二人に声を掛けられた。笑顔で話す二人とは対照的に、きっと俺の表情は引きつっているのだろう。自分の好きな幼馴染がイケメンと話しているところなど、平常心で見られるわけがない。


「でね、それでですねっ」

「うんうん」


 俺の横を通り過ぎていった朱里たちは、何事もなかったかのように会話を再開していた。朱里があんなにはきはきと喋っているところなんて、久しぶりに見た。俺と話すときだってあそこまで快活ではない。……それなのに、洋一の前ではあんなに嬉しそうだなんて。信じたくもない。


 頭をぶんぶんと横に振り、今見た光景を忘れようとする。あくまで朱里は洋一に相談してるだけなんだ。別に朱里が洋一を好きとか、洋一と恋人になったとか、洋一とキッスしたとか、そんなことはないんだ――


「あの二人付き合ってるのかなー?」

「えー、どうだろうねー?」


 そんな時、近くの女子陸上部員たちの会話が耳に入ってきた。どうやら朱里たちの様子が気になるようで、二人が歩いていった先をじっと眺めている。そっと通り過ぎるふりをしながら、部員たちの話を聞いてみることにした。


「朱里ちゃんがあんなに菊池くんと仲良くなるなんてねー」

「ねー、なんか意外だよね」

「でもさ、意外とお似合いだと思わない?」

「分かるー! 二人とも背高いしね」


 彼女たちの言葉が心にグサグサと突き刺さる。ちなみに、朱里の身長は170センチメートル弱である。俺はかろうじて170センチを超えているが、洋一に関して言えばなんと185センチだ。そりゃ、朱里の隣を歩くなら洋一の方がよっぽど絵になるというものだ。認めたくはないが。


「でも朱里ちゃんってさ、仲良い男子いなかった?」

「そうだよね、たしか幼馴染の」


 ドキリ。部員たちも、まさか噂話の対象が自分たちを盗み聞きしているとは思わなかったのだろう。うっかり気づかれて彼女たちに気まずい思いをさせても申し訳ないので、そそくさと逃げるようにその場を去っていった俺であった。


 学校を出て、一人で自宅に向かって歩いていく。俺が帰宅部なこともあって、もともと朱里とは一緒に帰ることなどほとんどない。……けど、今日という日に一人で帰るのはなんだか意味合いが違う気がするな。こうしている間にも二人が仲睦まじく過ごしていると考えると、気が狂いそうになる。


 もやもやが加速しているのに、何も行動が起こせない自分に腹が立つ。その感情を咀嚼しきれぬまま――俺は、決定的な場面を目撃することになるのだ。


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