プロローグ 100回目のプロポーズ。
新作です(*'▽')
「俺と付き合ってくだ――」
「は……? アンタ、誰」
俺が告白を口にし切る前に、目の前の女学生は冷めた声で答える。
誰もが和気藹々と食事を口に運ぶ昼休み。意を決して相手を呼び出した俺の心は、もう完全にズタズタにされてしまっていた。うな垂れ、両膝をつく。
すると女学生は思い出したように、俺に向かってこう言うのだった。
「あー……もしかして、アンタが噂の告白魔? 誰彼構わず、初対面でも関係なしに『付き合ってください』って声かけまくってるとか」
「………………」
その指摘に対して、俺は反論の言葉を持たない。
何故なら、事実に他ならないからだ。そして俺の反応で諸々を察したらしく、女学生は呆れたようにため息をついてから語る。
「あのさー……アタシが言うことじゃないかもだけど、もう少し自分を客観視した方が良いよ? 高校生みたいなガキでもないんだし、少しは大学生らしく遊びなって」
「………………」
「それじゃ、もうこんな馬鹿なことやめなよ?」
名も知らぬ女学生は、去ってしまう。
俺はしょんぼりとうつむいたまま、トボトボと帰路に就くのだった。
◆
――大学生になれば、彼女なんて勝手にできるものだと思っていた。
それこそ、椀子そば感覚で。俗にいうがり勉だった俺――若草尊、高校時代唯一の励みは、そんな夢のようなキャンパスライフだった。本当に死に物狂いで勉学に励んだ。しかし蓋を開けてみれば、そこにあったのは悪夢のような現実。
「……誰とも会話しないまま、気付けば半年が経過してた」
いいや、正確には教授と一言二言……って、そんな誤差はどうでもいい。
とにもかくにも、俺はいわゆるボッチ街道一直線だった、というわけである。しかし、このまま泣き寝入りする俺ではなかった。そんじょそこらの陰キャと一緒にされては困るのだ。
そう考えて、手当たり次第に告白すること100回目。
「今回のは、効いたなぁ……」
一人暮らしをしているアパートに戻り、ベッドにうつ伏せに倒れた。
まさか、大学生としての在り方を説かれるとは思いもしない。結果として、俺はどうにも鬱々とした気持ちになっていた。
それでも、俺は止まらない。
一つの案が駄目なら、次の案を練るまでだ。
「できないのなら、そう……作ればいい!」
そう口にして、俺はノートパソコンを起動した。
そして、入学当初から作成しているプログラムを開く。ちなみに俺は文学部なので、このプログラミングは見様見真似でしかない。それでも何かウルトラCが起これと思いつつ、必死に人工知能を生み出そうとしているのだった。
「さて、と。今日はここから、どうするか――ん?」
頑張った甲斐あって、簡単な受け答えが可能になった我が人工知能。
しかし、今日に限っては見覚えのない文言があって――。
『扉を開きますか? YES NO』
画面の中央に、そんな選択肢。
俺は首を傾げて少し、腕を組んで考えてみた。
「なんか、ウイルスでも感染したか……?」
思いつくのはそんな程度、だが……。
「……まぁ、いっか」
疲労によるものもあったのか。
俺は深く考えずに『YES』をクリックするのだった。すると――。
「え……!?」
その直後だ。
画面から凄まじい光が放たれ、思わず目を瞑ってしまう。
そして次に目を開いた時、そこにあったのは――。
「ふむ……ここが噂に聞く『神の国』か」
「だ、誰だ……!?」
見目麗しい金髪の少女。
身にまとうのは、妙に露出の多い民族的な衣服。
均整の取れた顔立ちに赤の瞳をした彼女は、俺を見て何度か頷いた。
「誰とは失礼な。私はお前のよく知る存在――」
そして、こちらのノートパソコンを指し示しながら言う。
「人工知能の『ALICE』だ」――と。
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