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ワン・アイデア・ストーリーズ  作者: 八雲 辰毘古
半径5メートルの非日常
16/26

幸運確率

    ※一人目



 ──本日の幸運確率は0パーセントです。


「えー、サイアク」


 そういえば今朝も目覚ましが鳴らなかったっけ。

 もー、おかげで朝ごはん食べるヒマもなかったし、登校時間もギリギリだったし、おまけに宿題忘れたしで、さんざん。


 おまけにそんなカッコ悪いところをぜんぶあの子に見られてた。

 恥ずかしいったらありゃしない。

 授業中は予習してないところに指名が当たるし、答えられないし、先生の虫の居所が悪かったのか怒られるしで……


 あーあ、ママが好物ばかり詰めたお昼ご飯のお弁当も、心なしか味気ない。


 そのくせいっぱい食べちゃって、午後の授業は寝てばっかり。最近眠かったっけ、て自問自答しちゃうくらい。いびきもかいちゃってたみたいで、もうやだやだ、やだ。

 そんな日に、あの子からお声がかかる。やめてよ。今日めっちゃ恥ずいんだから。生き恥晒さられた気分。話しかけないでよ!


 下校時間。イライラを持ち帰る。

 相変わらず重要なプリントを忘れる。


 提出期限あしただっけ……もういいよ。わたしは投げやりな気分でそのまま帰った。途中で犬のウンコを踏み、鳩のフンが降り注いだ。こんなやなこと、連続するの? もー、ほんとにサイアク。

 おまけに風呂上がりにタンスの角に小指をぶつける。もう二度とごめんだこんな一日! あしたはせめて幸運確率が1パーでも上がってくれますように!



     ※二人目



 ──本日の幸運確率は50パーセントです。


「うわっ、中途半端やん」


 今朝目覚ましが鳴らなかったのはどっちに取れば良いんだろう? よく眠れたから良しとするか、それとも……

 いかんいかん。遅刻する。


 道路を走って校舎まで駆け抜ける。うれしいことに道中すべて青信号。ギリギリの登校だったけれども、運良く遅刻は免れた。今日の50パーセントはコインの表と裏。悪いことがあったかと思えば、良いこともある。

 ところが、かばんを開くと宿題を忘れていた。しまった。やれやれ。こういう日もあるもんだなあ。


 そういう一部始終を、全部あの子に見られていたらしい。

 くすっと笑われる。意外なことに、見られてたんだと思う。自分の片思いとばかり思ってたけど、まんざらでもなさそう。


 って、うかれてたら先生に指名された! しかも予習してないところじゃん。案の定、怒られる。結構キツめに叱られた。気にすんなよ、先生きょうは機嫌悪かったぜ、とあとから友達が言ってくれたのが救いだった。


 お昼ご飯の弁当は、母がいつも通り好物ばかり詰め込んでくれていた。美味しいけれども、幸せというにはなんというか。


 ただ、たらふく食べたせいか、午後は眠かった。だから母さん、いつも多いって言ってんだろ。だったら食べなきゃいいだけの話だけども、食べてしまったからにはしょうがない。

 あとで聞いた話だけど、授業中にいびきをかいてたらしい。おかげでみんなの笑い物だ。放課後にあの子に心配そうに声をかけられたのは良かったけれども、恥ずかしくて喜ぶどころじゃなかった。


 あーあ。やっちまった。

 下校時間はユーウツだった。


 途中でプリントを忘れたことに気がついたが、戻らないことにした。期限は明日だけども。イマドキ紙でお知らせ配ってんじゃねーよスマホでやれっての。

 と、考え事をしていると犬のフンを踏み、鳩の廃棄物が降り注ぐ。こんなことって滅多にない。おかげで臭いことになったが、明日学校で笑い話にはできるだろう。


 帰宅して、勉強して、風呂に入る。気持ちもからだもリフレッシュ。こころもリセットして、さて明日ぐらいはもうちょっとましな一日であってほしい。

 と、思ってたらタンスの角に小指をぶつけた。超痛い。あーあー、こんな様子じゃ明日の幸運確率もたかが知れてるよ。



     ※三人目



 ──本日の幸運確率は90パーセントです。


「えっ、微妙」


 今朝目覚ましアラームが鳴ってくれなかったのは、ほんとに疲れてたせいだろう。むしろ無理矢理起きるぐらいなら寝過ごした方が健康だったに違いない。そう思っておけばきっと幸先が良い。

 お陰で遅刻しそうだったが、幸いにして行く先々で青信号、青信号、青信号。おかげでギリギリ間に合った。ちょっと息切れするぐらいには走ったけど、運動不足だったかもしれないなと反省するきっかけにはなった。


 ところが宿題を家に忘れてきた。10パーセントの不幸はここだったのか。ツイてない。おかげで授業中に指名食らっても答えられない。けれどもぜんぶ気になるあの人に見られて面白そうに微笑んでいたので、ぜんぶオーケーってことでいいのかな?

 

 よくわからないままお昼の弁当。好物ばかり。さすがは90パーセント。たいがいのことはラッキーでハッピー。

 けれども10パーセントはアンラッキーでアンハッピー。そのまま午後の授業は夢の世界に旅立って、よだれも垂らすという大失態。あとから聞く限り、いびきもかいてたらしい。恥ずかしいったらありゃしない。


 下校時刻の途中でプリントを忘れていたことに気づく。ここで気づけるのは良いことかもわからない。ただ、破れかぶれでもういいや、と言いたくなる気分だった。最初の不幸が尾を引いて、うまくいってるはずなのに何かが噛み合わない。

 何が90パーセント。残りの10パーセントがあやふやすぎて、あれかこれかと不幸探しにやっきになってる自分がいる。


 と、そんなとき、鳥のフンが落ちて犬のフンを踏む。

 あー、もう、ホントにこれってない。珍しいから、なおさらに。


 悶々とした気持ちを引きずって、勉強。いつも通りにやってはいるが、着々と明日の分の予習を終わらせる。思い残すこともなく風呂に入る。暑い湯に浸かって、今日の苛立ちもムカつきも全部洗い流せば、きっと明日はいい日になる……

 そう思ってたのだが、部屋を出る時思い切り角に小指をぶつける。痛い痛い痛い……ほんとに運がないってこういうことなのか。


 予報士さん、100パーセントでないのなら、せめて不幸探しにならない程度に低くて良いです。



     ※四人目



 ──本日の幸運確率は10パーセントです。


「うわ、ついてねー」


 あたし、よくよく思い出せば目覚まし設定忘れてたじゃん。もーまじ大変だった。朝ごはんもろくに食べられないし、走んなきゃだったし、遅刻ギリギリで大慌てでさー、ほんとろくでもない朝だったよね。

 おまけに舐められたくないあいつに全部見られてて、なんだよ、「また遅刻かよ」ってうっさいわっての。


 しかも今日はやってたはずの宿題忘れたし、いきなりセンコーに指名されるしで、メチャクチャだ。気まずいし、言いにくいし、怒鳴られるし。頑張ってんだよ、こっちだって。そんなに目くじら立てんじゃねって。

 辛い午前の悔しさは、好物だらけの昼飯でカバーする。お母さんいつもありがとう。


 でも、がっついて食べ過ぎたみたいで、午後はゴーゴーいびきかいて寝てたらしい。あとで友達に聞いたら、もーすごいのなんのって、あいつも見ててゲラゲラ笑ってたってんだからふざけんなって感じ。

 それもこれも今朝の予報がひどいってわかってるからなんとかやり過ごしている。だって10パーだよ? 十回やって一回あるかないかってぐらいじゃん。そんなんめったにあるわけないって、ホント。


 だからせめて、十に一つもあればめっけもんだと思うしかない。

 とにかくサイアクなのには変わりないけどさ、まあ。


 ……あ。


 ヨケーな考えごとしてたら、プリント忘れた。提出期限明日だっけ。まあでも、いいや。どーせ明日の予報もろくなもんじゃないだろーし。

 そんなヨカンが当たったみたいに、上から白いのが降ってきて、慌てて避けたら変なの踏んだ。どっちもクソ。ファック。臭いがくっついて離れねーじゃん。


 帰宅して、着替える。ここまで踏んだり蹴ったりだと、さっさと明日の準備でもしたほうが身のためかもしんない。そう思っていつもはやらないベンキョーというやつをやってみた。小難しいこと書いてあってクソ眠かったけど、やれば案外できるもんだった。

 やることはやった。宿題もカバンにしまった。よしよし。これで明日はもう少しマシになるはずだ。そのまま風呂上がって寝ればもうカンペキ。


 の、はずだったけど。


 がつんと足の小指を角にぶつけた。クソ痛え。マジでサイアク。ま、でもそんなもんだと思うしかない。だって、今日の幸運確率はたったの10パー。十回なんかすれば九回はうまくいかない。そんな日だから。

 そういや、今日の十回に一回ってなんだったんだろ……


 マ、どうでもいいや。寝よ寝よ。



     ※あなた



 ──本日の幸運確率は……

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[良い点] これは有りそうで無かったアイデア!オムニバスが面白い。 [気になる点] 期限悪い [一言] 行け行けー。
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