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会合




 私は初めての恋と両思いに浮かれていた。とはいえない。ウィリアムが超多忙だったのだ。


 「両思いになってすごく幸せだから、一緒にいて噛みしめていたいのに!」ってウィリアムにふてくされた態度をとったら、「フローラがあまりにもひどいことするから、フローラの魂の所在がどうなるのかの結論を早く知りたくて急いだ」なんて言うから、ちょっとした喧嘩だ。



「私の所在がどうなるか? どういう意味? 私なんて早くいなくなればいいって思ってたの?」

「あれだけのことされたら、そうも思いたくなる。……そう思わせたのはフローラだ」


「私だって酷いことしたとは思ってる。でも謝ったし、蒸し返さなくてもいいじゃん!」

「蒸し返してるのはフローラだろ? それに早くいなくなることが分かれば僕だって諦めがつくと思ったんだ」


「へぇー、諦めようと思ってたんだ。私のことなんか近くにいなかったら、もう全然! 全く! 必要ないんだ!」

「必要ないわけないだろ。でも、いなくなるって分かったら諦めもつくと思ったよ。フローラの気持ちの欠片さえ掴めてないのに。僕にできることは諦めることだけだからね。フローラは帰ることばかりで取り残される側の身にはなってくれなかったしね」


「うわぁー。ウィリアムってそういうこと言うんだー。言っちゃうんだー」

「家に帰りたい気持ちも、家族に会いたい気持ちも分かるよ。だけど、離れたくないの一言もなかったじゃないか。なにを支えに好きで居続けることができるんだ」


「それでも好きでいて欲しかった!」

「なんてわがままなんだ!」


「……なに? ……嫌いになるの? ……さっさと日本に帰れって?」

「そんなこと言ってないだろ? ずっと傍にいてほしいから、今度は一緒にここにいられる方法を探そう?」


「うん……。本当に……嫌いにならない?」

「大好きだって知ってるだろ……?」

「うん」



 ひしっと抱き合って、ウィリアムの胸に頭をぐりぐり押しつけて仲直りした。あはっ。



 こんな浮かれた気持ちで、ここにとどまる方法を考えていいのか、ここにとどまることを決めてしまっていいのか。すごく不安だ。



 友達で、彼氏ができてすごく幸せそうだった子が、二股かけられたって泣いてたのを見たことがある。フラれたって泣いてたのも。そのくらい気持ちってあやふやなものなんだと思う。


 同じ世界の人なら、別れても、その人がいなくなるだけで、友達とか家族はそのまま。だけど、ここでは違う。私がこの世界の人間じゃないから、ウィリアムを失うと全てを失ったことになる。ウィリアムはここでの私の全てだから。



 ウィリアムと一緒にいるってそういうことだ。しかも、この国は一夫多妻制。王族は血を残す使命があるから、貴族や平民よりその強制力が強い。


 ウィリアムが私以外の妻を迎えたとき、私は正気でいられるかな。いつか、ウィリアムを監禁して、ウィリアムの家庭内ストーカーになってしまうかもしれない。



 ……こういうの歴史は繰り返されるっていうんだよね。



 ウィリアムは明日もここにいるか分からない私を想い続けてくれた。ここに居続けることができない情報を集めることで私を諦めようとしてた。私も、もしもの時は諦めないと。


 二人目の奥さんを迎えるまでは楽しく幸せに過ごして、迎えたときには……そう、エヴァンズの一族に仲間に入れてもらおう。ロージーと魔女の森で暮らさせてもらおう。


 私以外を奥さんにするウィリアムを近くでは見ていられないし、この世界では私の考え方がおかしいんだから何も言えない。ウィリアムにはウィリアムの役割があるから。



 何度も何度も自問自答した。だけどその度、私の心はウィリアムと共にいることを望む。だから仕方ない。もしもの時は、魔女の森で生活させてもらって。森の泉の近くで過ごして子供ごと異世界に飛べるように魔女の力を蓄えよう。そんなことが可能かは分からないけど、そのときはそのときだ。



 恋なんてしたことない。誰も好きじゃない。まだ好きになってない。このままだと好きになってたかも知れない。


 いろんな言葉で、今は好きじゃないって自分に言い聞かせても、ウィリアムと会えなくなると途端に溢れて泣きわめいてしまうんだから。私はウィリアムを好きじゃなくなることを諦めようと思う。


 好きなことを諦めようと思ったウィリアムと比べるとウィリアムより私の方が大好きみたいで悔しいけど、こればかりは比べられるものでもないしね。





 なかなか一緒に過ごせない寂しさが不満になって、ちょっとの会えた時間も喧嘩と仲直りを繰り返して数日。会合の日がやってきた。



 既に顔見知りではあるけど、今日は陛下も同席するから、初対面のロージーは初めましての挨拶だ。


「お初にお目にかかり、恐悦至極に存じます。わたくしエヴァンズが一族、ロージーと申します」

「あぁ。話はきいている。楽にせよ」



 警戒心むき出しでくるかと思った陛下は意外にも穏やかな対応だった。



 ……そうだよね。陛下はこうだよね。私が初めて会ったときも穏やかで、優しくて気さくだったよ。


 ウィリアムの話から察するに、敵意を感じない限り穏やかな対応が陛下の基本なんだと思う。今回、幽閉しようとまで息巻いていた私を前に穏やかなのは、私が熱烈にウィリアムを求めたからなのか。



「陛下。まず先にお伝えしたいのはフローラの魂は異世界の日本という国の、小夜という十七歳の女の子だということです。先日もご報告しましたとおり、その経緯については定かではない部分が多いです」


 

 ウィリアムが陛下をじっと見て話を進めていく。今日のホストはもちろんウィリアムだ。


 ただ、シャーロットが眠ることになった原因は、シャーロットの両親に、シャーロットの曾祖母のエマが協力したものによること。その計画さえシャーロットの兄のせいで破綻し、千年もの眠りにつくことになったこと。絶対にエヴァンズから王族への反逆の意図はなかったことについては既に陛下に報告済みだった。


 さすが、ウィリアム。できる。かっこいい。



「あぁ。こちらでも調べさせたところ、エヴァンズの一族は決して王族に反旗を翻すような心持ちの一族ではなかったこと、それどころか、王族のしがらみから逃げたいとさえ思っていたと証言を得ることができた」


 陛下の視線の先にはヴィオラがいて、こくりと頷く。きっとテイラーの一族以外の魔女の一族も聴取されたのだと思う。



「その通りでございます。シャーロットと小夜の魂の入れ替わりが頻繁に起きていることに関しての原因解明はできておりませんが、先日小夜が日本に戻ったとき、家族から聞かされた話が何かのヒントになれば良いかと」


 ウィリアムが私を見て話すよう促す。小夜呼びなのは話が分かりにくくなるからだろう。



「はい。わたくしは幼い頃、数日眠り続けたことがあるそうです。そして目覚めたとき『眠り姫が寝てたよ。とっても悲しそうだった。小夜、代わってあげた方がいいかな?』と語ったそうです。わたくし自身は記憶になかったのですが……」

「眠り姫とは?」



 私は陛下の問いに頷き、答える。日本には、似たような童話があることを伝える。この前日本に帰ったとき、眠り姫の絵本を見つけた。お兄ちゃんが買ってきたと。その本を読むとロージーやヴィオラから聞いた真実とは随分かけ離れたものだし、そもそもタイトルさえ思っていたのと違っていたから、どこまで童話とこの世界が影響し会っているのかも分からないことも付け加える。



「なんと。千年前のこの世界の出来事が其方の世界で物語として語り継がれているのか」

「いえ。類似点は招かれなかった客が怒って姫を眠りにつかせてしまったことだけで。眠り続けた時間も、経緯も違うのです。幼い私がシャーロットを見て眠り姫と言ったのは寝ていたからでしょう」



「そうか。では、その物語を紐解いてもこの事態の解明もできないということか」

「はい。おそらく。日本のわたくしの家族が多くの図書を読み、解明を試みてくれていたのですが、やはり物語とは事象が大きく異なりますので、参考にもならなかったと」

「そうか……其方のご家族はさぞや心配のことだろう」

「お心遣い感謝いたします」


 私は一礼して話を終える。次にウィリアムがロージーに水を向けた。



「小夜様の世界における物語については、わたくしは目を通したことがございませんし、小夜様ご自身が参考にならないと仰っているため、物語との関連については保留にいたします。ただ、小夜様が幼いときに夢の中でシャーロット姫様とお会いになっているというのは気になるところです」

「どういうことだい?」


「その、夢の中でお会いになったことそのものについての理由は分かりかねますが、その出会いが今回の入れ替わりの原点となっているのではないのでしょうか」

「出会いによりシャーロットと小夜の間に道が形成されたということか?」



 気の弱そうなロージーがウィリアムと陛下に代わる代わる質問を受けている。前回会ったロージーなら泣いて逃げ出しそうなものなのに嬉々として答えている。ロージーは謎解きがすきなのかもしれない。



「はい。幼い小夜様に自宅へ招かれ、シャーロット様は手を伸ばされたのではないでしょうか。ですが、体は仮死状態にあり、ぴくりとも動かすことはできません。その手が魔力となり、小夜様の後を追っていたのでは」

「そして、仮死状態から目覚めたとき、その魔力の足跡を辿って、小夜の体に入り込んだと言うことか」



 思わずぶるっと体が震えた。その話が本当なら私は四歳のときからシャーロットの手の中にいたことになる。それが救いを求める手だということは分かりきっているけど、それでも、いい気持ちじゃない。怖いし、寒い。


 私のストーカーがお兄ちゃんとウィリアム以外にもいた件。



 ずどーんと喜んでいいのか嘆いていいのか沈んでいたら、コロコロとした笑い声が聞こえた。


「フローラ姫様は色々な形の愛を一身に受けていらっしゃるのですね」

「色々な形?」

「えぇ。愛には種類があると言われています。情欲的な愛、深い友情、遊びとゲームの愛、無償の愛、永続的な愛、自己愛、家族愛、偏執的な愛。フローラ姫様は、ウィリアム殿下からは情欲的な愛を、ご家族からは家族愛を、シャーロット姫様からは深い友情を」

「……シャーロットからの友情、深すぎない?」



 ヴィオラの慰めるような、おちょくるような言葉に私は目を眇める。



「わたくしのフローラ姫様への愛は先ほどの八つの愛にはあてはまるものがありませんが、敬愛しております」

「ヴィオラさん……」



 私はうっとりとヴィオラを見つめる。その吸い込まれそうな濃い闇の黒に捕らえられて目を離せない。



「ヴィオラ。僕のフローラを誘惑するのはやめてくれ。フローラは見た目通り、人を疑うことを知らない、純粋な娘だ。一度信用した人間に白を黒だと言われれば、信じてしまう。僕のもとから連れて行こうとするのは許さない」

「ちょっとウィリアム? 私、白は白って分かるよ。馬鹿じゃないんだから」


「……だが、ヴィオラに女性同士が愛し合うのも自然な愛の形と教えられ、フローラのヴィオラに対する憧れの気持ちを愛だと諭されれば、ふらふらとついて行ってしまうのではないか?」

「私は、ウィリアムが好きって言ってるでしょ!」


 そこではたと気付く。ということは、ヴィオラは女性も恋愛対象ということか。ヴィオラを見ると妖艶な笑顔でにっこりと笑った。


 ……ウィリアムの言うとおり、あの色っぽい喋り方で、吸い込まれそうな瞳で、私の気持ちを愛だと教え込まれたら。そうかもって思っちゃうかも。



「……ウィリアムとフローラが愛し合っていることは分かった。だが、今は話をすすめよう。エヴァンズには出向いてもらっているのだ。……ウィリアム。私が其方らを信用し、隠密を引かせるまで、先は控えよ」

「承知しております。父上。段階は踏むと既にフローラとも約束しておりますゆえ。その段階にはもちろん、小夜の魂がシャーロットと小夜のどちらの肉体にとどまるかの検証も入っております。……ロージー」



 うわぁぁぁぁぁ。陛下の言う『先』が何か分からなかったけど、うぇぇぇぇぇぇぇぇ。赤ちゃんできるやつじゃん! 恥ずかしいー。こんなところでそんなこと言うなんて!!



 私の動揺はお構いなしに話は進む。ロージーがエヴァンズでの検討結果を話す。


「先に、小夜様の魂がシャーロット姫様の肉体と、小夜様の肉体にいる時間の経ちかたの問題についてです。これまでの話し合いの中、呼称が紛らわしいと感じたので、便宜上、小夜様の魂を小夜様とおよびします。当初、小夜様がこちらにいる時間とあちらにいる時間では、1日こちらの滞在時間が短い。つまり、シャーロット姫様があちらにいる時間の方が長い。次はこちらに二週間ほど、シャーロット姫様はあちらに三日ほど。三度目の往復は小夜様がこちらにいる時間と、シャーロット姫様があちらにいる時間が同じだったと」


 私はロージーの言葉に頷く。時間経過の疑念が解けたのか。



「恐らく、小夜様は当初、こちらの世界に忌避感……というよりは、ご自分の世界に帰りたいと言う気持ちが強かった。二回目は、こちらの世界の滞在も楽しく思えていた。三回目はどちらでも楽しく……」



 たぶん、私の気持ちに配慮して優しい言葉を使ってくれてるんだろうけど、おかげで言葉が幼稚になっていて、どう考えても王族への説明には見合わない。それに気付いただろうロージーが一つ咳払いをした。



「つまり、申し上げたいことは、小夜様は自身の気持ちのまま二つの肉体を彷徨っているのでは、という仮説です」

「え? 私主体? なんで? 私、魔力も魔術もないよ?」


「はい。どちらもお持ちなのはシャーロット姫さまです。ですが、千年の眠りから覚めたシャーロット姫様より、小夜様の自我の方がお強かったのでしょう。魂の移動に関して、無意識下でシャーロット姫様は放棄されたのではないかと……」

「どういうこと?」


 一つの肉体に二つの魂は入れない。一番初めの魂の入れ替わりはソウルストーカーのシャーロットが私の魂を私の体から追い出すことから始まった。私の魂が入れる肉体はシャーロットに乗っ取られているからない。

 


 入れ替わるようにシャーロットの肉体に私の魂が入る。私の魂を乗っ取ったとはいえ、千年の眠りで壊れかけているシャーロットの魂は吹けば飛ぶほどに軽い。私の魂は自分の入れ物を探して自分の体を乗っ取った異世界の姫の元に辿り着くほどに、頑丈だ。シャーロットの作った道をそこで私の魂が知る。あとは簡単。行ったり来たりするだけだ。



 ロージーの説明に一同ぽかんと口が開いたまま固まる。なんということだ。私、強すぎる。



「コホン。だが、フローラはさすが聖女といわれるだけはある。自分の体から魂を追い出されたというのに、律儀に自分の体を奪った肉体を探し当てるとは。そのへんの人間の肉体から魂を追い出して居座ることも可能だったかもしれないというのに。いや、はは、すばらしい」


 陛下が乾いた笑いを乗せて拍手する。それに釣られたようにみんなが乾いた笑いで拍手する。


 それ敬ってないからね。褒めてもないからね? そんなことより。



「では、今後は行ったり来たりを繰り返すことになるということ? 私、今まで一度も行ったり来たりしたいと思ったことはないんだけど」


「あちらの世界との往復の方法は先ほどお話した通りでほぼ間違いはないと思いますが、そうなるきっかけについては分かっておりません。なにぶん、このようなことはエヴァンズでも初めてなので」


「ロージー。エヴァンズは一族内ではテレパシーが使えるのだろう? フローラがシャーロットに直接確認することはできないのか?」



 なんと、エヴァンズは魔力が強く転移魔法が使えるらしい。その亜型がテレパシーだそうだ。だけどテレパシーについては一族内に限られる。シャーロットは確かにエヴァンズの血を引いているけど、エマの娘が公爵家に降嫁されて、そこでシャーロットの母が生まれた。


 その母、ソフィアが王子に嫁いで私が生まれている。エマは子を二人、エマの子のうち息子の方は若くして亡くなっていて、娘はソフィアを。ソフィアはシャーロットを、と子は娘一人ずつだったという。


 話が逸れたけど、とにかく、シャーロットの血はエヴァンズ生粋のものではないうえ、中身が日本人なので、魔法の使い方も知らないから魔法は使えない。テレパシーも使えないそうだ。



「ですが、魂の入れ変わり事態が前代未聞。肉体と魂の入れ替わりは二つの肉体を共有しているとも解釈できますからあるいは……。ですが、そうなる可能性があったとしても、何が根源となるのかは分かりません」



 ロージーが華奢な体で、泣きそうな目尻の下がった瞳でため息をつく。今気付いたけど。この人、素の顔が悲しそうなんだ。儚げというか。切なそうというか。



「そして、小夜様がこちらで定着することができるかという点についてですが、それはおそらく可能かと存じます」

「どちらの世界であってもか? 小夜が小夜ではなくフローラになるとあってもか?」


 ロージーの言葉に期待を膨らませたのが分かるくらいウィリアムは前のめりになる。


 もうっ、本当に私のこと大好きなんだから。……私も好きだけど。こんな風に必死になってくれるのを見ていると愛を実感してキュンてなる。



「えぇ、おそらくは。前代未聞とはいえ、魂の入れ替わりが可能なのです。そのまま数日を過ごすことも。現段階では、おそらくは……としか言いようがありませんが」

「あら、なぜ、そこまで自信があるのかしら? エヴァンズは確かに強力な魔力を継ぐ家計。とはいえ、世界線を越えた状態を維持できるとは思えないわ。……少なくともテイラーの常識では考えられない」




 ロージーの言葉にヴィオラが待ったをかける。魔女の常識としてもおかしいらしい。私の常識としては非常識どころの騒ぎじゃない。



「……シャーロット姫様の肉体に宿る魔力は強大です。正直に申し上げますと、我が一族の長を遙かに上回ります」



 魔女は一族ごとに纏う魔力の色が違う。その魔力の色は一族以外でも見ることができるけど。魔力の濃さや纏う魔力の範囲は一族でないと分からないならしい。シャーロットは王族の血も流れているけど、そもそもウィリアムたち王族は、近親婚をやめてほとんど魔力を持たなくなっており、視る力もないらしい。




「でも、シャーロットは簡単な治癒魔法しか使えなかったと言ってたって」

「そんなはずはありません。……シャーロット姫様の生い立ちは聞いております。その魔力量で簡単な治癒魔法だけしか使えないとは道理があいません。おそらく、お母上がお兄さまより抜きん出ないように、そのように教育されたのだと」



 ロージーの見立てはお母さんと同じだった。うちのお母さんすごい。


「エマ様以下のお子様方はエヴァンズ以外の血が混ざることでその魔力を薄めていきました。ですが、エマ様は当時の長の娘。魔力は膨大です。フローラ姫様の魔力を見る限り、シャーロット姫様の肉体は先祖返りとしか説明がつかないのです」



 エマは、長老の娘として膨大な魔力を持っていた。それこそ国を一つくらい簡単に消すことができる魔力。国の命はエヴァンズが握っているとも言われたからこそ、拡大解釈された魔女、魔法使い全てが人間から一方的に戦を仕掛けられた。その筆頭とも言えるエヴァンズの長よりも魔力が上回るとロージーは言う。



「もはや、フローラ姫様はエヴァンズの歴史を超えています。覚醒すればできないことはないでしょう」



 ロージーの言葉に私は喜び、ウィリアムは微妙な顔をして、陛下は疑惑の目で私を見る。ヴィオラは相も変わらずコロコロと笑っていた。











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