[1-3]始業式
「始業式を始めます。静粛にお願いいたします」砂川さん、始業式に出席。やっぱり始業式とか思い出ないよねな1話3節。
――[Time]11:00
――[Stage]6号館 ホール
……何とか座れた。早すぎず、遅すぎず……上層の左客席の大体真ん中あたり。欲を云えば、端っこが良かったんだけど、これは仕方無いだろう。
【鞠】「……」
やることがなくなり、取りあえず目を閉じる。人によっては即座に眠ってしまいそうな自滅行為だろうけど、もっと心地の良い椅子やソファを知っている身体な所為か、違和感の風が吹いて睡魔を撃退している。
まあ、違和感なんて数えていたらキリが無いけど。
【???】「――それでは、時間になりましたので、始業式を始めます。静粛にお願いします」
【鞠】「……」
スピーカー越しに、アナウンスがホールに響く。
この数百人を前に怖じ気を感じさせない、流麗とした男子の声だった。
もう始まるらしいので、目を開ける。ステージには一人の男子が端に立ち、スタンドマイクの前で観客席を見渡していた。遠くからでも何となく分かる……流麗、なオーラ? 何を云っているのか自分でも分からないけど、恐らく、彼の声だったのだろう。髪長い。
……静かになっていく会場。随分と利口だな、と思った。空気の変化を感じ……再び男子が、マイクの前で口を開ける。
【流麗な男子】「恐れながら、紫上会書記玖珂四粹が本日の始業式司会を務めいたします。それでは、開式の言葉に移ります。……松井副会長、お願いいたします」
……髪の長い人が素早くマイクの電源を切り、後方へ数歩下がる。そこには数人の学生が、パイプ椅子に座っていた。
そのうちの一人が、司会が自分の椅子に座ったと同時に立ち上がり、今度はステージの一番前に設置されたスタンドマイクの前へと歩いて行く。こっちは……バンダナしてる。短髪か長髪かで比較しそうになってただけに、無駄に面食らう。
【バンダナ男子】「これより平保31年度、紫上学園A等部及びB等部の、4月始業式を開式します!」
ハキハキとした声だ。こっちにも怖じ気とか全然感じられない、どっちかというとこっちが気後れしそうなくらいの自信というか、気合いを感じる。私には絶対無理だやりたくない。
ていうか開式の言葉終わり? 正直、それだけなら司会の人がついでにやればよかったんじゃないのかと思うけど……厳かなのかなこの学園。あの人たちは厳かそうだけど。
何かの副会長らしい男子が座ったところでまた司会が立ち上がり、司会用のマイクで式を進めていく……。
【四粹】「校歌斉唱、起立をお願いいたします――」
……………………。
【四粹】「学園長の言葉――宮坂学園長、お願いいたします」
……………………。
【四粹】「紫上会の言葉――六角会長、お願いいたします」
……………………。
――[Time]12:30
【四粹】「……以上で、始業式のプログラムが全て終了です。各々、自分の新しいクラスの教室に移動してください。混雑の回避のため、退出指示を紫上会が致しますので、今暫くお待ちください――」
【鞠】「……終わった……」
こういう式は長いと相場が決まっているから、覚悟はしていたけど。
……寧ろ、随分平穏に終わったなぁ、とか思ってるけれど、まあコレが普通なんだろう。
【女子】「はぁ~四粹様、今日も素敵だったぁ~……! 毎朝あの声で起こされたいな~……」
【女子】「でも、もう四粹様も引退だよね……はぁぁぁ、辛い……」
【男子】「いよいよ今年は、松井が会長になるかもなあ。楽しみだぜ」
【男子】「いや待て、俺が居るからな! 会長になるのは俺だ!」
【女子】「アンタは全然会長ってオーラ無いからダメー。どうせなら、四粹様が会長になってくれればいいのになー」
【男子】「そうなったら紫上学園最大の歴史の立会人だな俺たち」
【鞠】「…………」
周りが何か、盛り上がってる。
興味は無いけど、普通に今もパーソナルスペースが泣いてる状態だから、早く退出指示来てほしい
【四粹】「上層右側客席のクラスは退出をお願い致します」
多分、退出順は上層の中央席⇒右側席⇒左側席⇒下層……って感じだから、次だ。
あとは何処にあるか全然分からない自分のクラスに、周りの喧しいクラスメイトさん達に附いて行けばいい。
……取りあえず、求めるのは平穏な日々。あの先輩ほどじゃないにしても、私はもう面倒ごとはノーサンキューなのだから。
間違っても、こんな私が、目立ちませんように――
作者は校長のお話で頑張りはするけど結局半ばで寝るタイプです。