[1-2]紫上学園
「……変な形」砂川さん、新たな学園に辿り着きます。入学の時の高揚感を描こうと思ったら、主役が砂川さんなので失敗しました1話2節。
――[Time]10:30
――[Stage]紫上学園
――紫上学園。
世界の中心、中央大陸には数多く学園が存在するけど、この学園はその内の、中の上くらいの規模らしい。微妙。
*児育園*からA等部まで保有し、大きなホールや体育館も所持している、まぁ不便にはあまり見舞われないのかなってイメージを持つ……ってそれなら上の下くらいには入れるのではと思ったりするが、まあそれだけこの大陸は何もかもが凄いってことなんだろう。
そして私は、この紫上学園で、これから過ごしていくことになる。
【鞠】「……変な形」
流石に学園のビジュアルは写真で拝見していた。その時と同じことを、正門を通りながら呟いた。
建物なんて、教室を詰め込んだ四角いものと体育館ぐらいでいいじゃん、とか私は思う。目的地によってはわざわざ建物から出て別の建物に入らなきゃいけないだなんて、疲れるじゃないかと。
なのにこの学園は中心に円柱型の建物×1,その周りに花弁をイメージしたとかいう変な形の建物×6、計7軒の校舎とそれらを更に囲むグラウンド等お外の設備で形づくられていた。アーティスティック、というやつだろうか。
お陰で私は正門を越えた時点でもう迷子の心境だった。本日は9時くらいに入学式が執り行われ、11時に始業式。当然1年生以外は後者の方に参加しなければならない。
その2つの式の場所は学園の自慢の一つ・コンサートホールとのこと。何で体育館じゃダメなんだろう。M教主義の学校でもないのにホールとか要るのだろうか。
【鞠】「えっと、ホールは……4号館、とのことだけど……」
その4号館がどれなの、という話だ。花弁型の建物のどれか……あ、あれかな。多分あれだ。沢山の学生が一つの建物に集中して入っていく光景が見える。この正門から一番近そうな建物。
……人波が無かったら分からないんだけど。流石にもう少し下調べをしておいた方が良かったかもしれない。あとで園内地図やら見分け方やら、探しておこう。
……さて、問題は一つ解決したけど。私には次の憂鬱が待っている。
【鞠】「……はぁぁぁ……」
建物の中に入って――
――[Stage]4号館 フロント
【教師】「混雑回避のため、自分の学籍番号を見つけたら即移動をお願いしまーす」
【鞠】「ぅ……」
案の定、推定していた憂鬱とエンカウント。
【キャバい女子】「あっ、あったあった、そっちは~」
【サンダル女子】「えっ、はやーい! 待って今探してるー……あっ、見つけた! 同じクラスじゃね?!」
【キャバい女子】「いえぇええいい同じクラスー♪ 2連チャン2連チャン!!」
おっきな紙が数枚張り出されてて、そこにはずらーーーーっと7桁の文字列が並んでいた。学籍番号というやつだ。学年・クラス毎に紙は用意されているようだ。
つまり、ここで自分のクラスを確認し、ついでに始業式での自分の着席位置も確認すると……まあ、それは別にいいんだけれど。
問題はこの人口密度。
このフロントは決して広いわけじゃない。そんな場所を、数百人が通る。しかもそのまま通るのではなく、一旦自分の新しいクラスを確認しなければならず当然止まる。止まると当然、混雑する。
他人との物理的距離が、どうしても小さくなる。それはお互いのパーソナルスペースの侵害にも繋がる。
……私は1人で来ているので、会話する相手はいない。盛り上がる要素がない。すると周りに意識がいく。
【鞠】「……早く、見つけたい……」
自分の見慣れない7桁の番号を、まともに歩くことすらできない人混みの中探す。一方で心は、ニュースとかで満員電車で誰かが電話してる光景を思い出していた。
周りはそれに対して何かイライラしたりするのだけど、電話してる本人は全然気にしてなかったりするのだ。
まあ此処は電車じゃなくて学園。新学期の自分のクラス探しの現場なわけだが。皆さん随分と楽しそうだ。私にはどうしてそんな、7文字見つけるゲームで燥げるのかが分からない。そんなことより本当、見つけたなら早く移動してほしい。満員電車は御免だ。
っと……
【鞠】「見つけた……」
けど、ホールへと繋がる廊下に出れない。廊下は空いてるけど此処だけ人溜まりしていて……
【鞠】「そもそも、何で紙で掲示……?」
そんな、混雑して当たり前の形式じゃなくて、前もって個別にメールとかで情報公開するとかすれば、遙かにスムーズなのに。この学園、ガバガバなのかな。
……なんて愚痴を考えながら、自分の道が開けるのを少し待った。
*児育園*
まあ日本社会における「幼稚園」をイメージしてくだされば問題ありません。但しこれは4大陸共通ってわけじゃなくて、「児育園学級→C等学級→B等学級→A等学級」という大半の流れは中央と大輪だけのシステムです。但しコレだって大まかな流れでしかないですが、そこはあんまり気にしなくて大丈夫な物語です。
作者は入学式で制服を間違えました。