[1-1]新天地
「……風景が、違う」砂川さん、新天地にて登校します。モブと云っておきながらいきなりモブじゃない登校の仕方をしております1話1節。
――[day]4/1
――[Time]10:00
――[Stage]蛙盤区
【鞠】「……風景が、違う」
何を云っているんだ、当然だろって話ではある。
此処は*大輪大陸*ですらないのだから。
……まあ。
【鞠】「新学期、か」
今まで新学期というものを大して意識したことはなかった筈だけれど。
確かに今までで一番、新学期っぽいのかな、とは思う。
よくあるのが、気持ちの切り替えだとか、新しい自分になろう、とか、そんなキャッチコピー。
此処に着いたのは数日前だけど、人々は兎も角、至る商業施設で「新生活」を盛り上げていた。
……ただ、私にある、感想は。
【鞠】「違うな……」
通学路――蛙盤の町並みはこの大陸では比較的田舎だとされている。町のブランド・アバンガエルが一年中河川敷でハーモニーを響かせる。
車窓越しに蛙盤の風景を眺める。暫くして……
――[Stage]霧草区
目的の地区――霧草の光景に移っていく。
ここは一転して、都会と呼ぶに相応しい、人々の声と気配、あと大きい建物ばかりに包まれる場所。
当然ながら、これまで私が見慣れてきたものとは全然違う。
【鞠】「……メイド、この辺りで、いいです。後は自分の足で、歩きます」
【メイド】「畏まりましたー。ではこの車で危険要素の推定および排除をしたら――」
【鞠】「それもいいです。ていうか目立ちたくないんで派手なことやらかさないでください」
……車を降りる。
すると、都市の香りとでも呼ぶべきものにまで包まれ……遅れて、広さを改めて感じる。
歩こうと思っているのに、何故か思わず足が止まる……途方無さ。
青空を見上げる。
……その空は世界共通。なれば私の記憶している空の光景と変わらない筈だというのに、それさえも私は異質に感じていた。
そう。
ここはもう、違う世界なのだ。
【鞠】「……………………」
私に在る感情は、それだけ。
軈《やが》て足は歩き出す。理由は明確、今私は登校中だから。
下見とか全然していないけれど、*アルス*で地図を広げているから、困らない。このまま霧草の北西に向かって歩いて行けば、自ずと見えてくるだろう。或いは自分と同じ制服を着ている人の流れに入るか。
【鞠】「……騒がしい……」
喧騒。何の喧騒か分からない、まぁ楽しい話で盛り上がってるのだろう、そんな朝のBGMを意識からハズそうと試みながら……
ただひたすらコンクリートが続く道を真っ直ぐ、時に曲がって、私は進むのだった。
*アルス*
本作品でたびたび活躍する、割り箸型の携帯端末。スマホの代わりと捉えていただければ取りあえずは大丈夫です。(この世界においては既にスマホは過去の端末と位置づけられています)
BLSという光を縦横無尽に利用したシステムで瞬く間に好きなサイズで画面を構築したり他デバイスとの拡張したりできます。『Δ』本編ならではの独特な概念の註釈は今後も挟んでおこうと思います。
*大輪大陸*
この世界の地理の大枠はざっくり4大陸となります。厳密には他にも存在しますが、中央大陸、毘華大陸、彩解大陸、そして大輪大陸です。以下4大陸ざっくり紹介。
・中央大陸:その名の通り地理的および社会的に世界の中央に位置する、エクセルで表そうものならほぼ正方形の本作品メイン舞台。25区で形成している大都市「スカブリ」とほぼ同意義。25区総てが登場することはありませんが、登場するエリアは必要そうならまた註釈します。
・毘華大陸:中央大陸から西の海を越えた先にある大陸。「国家」という概念で古くからそれぞれの文明が独自に築き上げられた為、地域間のギャップが激しく中には「閉鎖国家」なんてものも。
・彩解大陸:中央から東側にある、他3大陸に比べて圧倒的に全容が分かっていない、都市的にはフロンティアに近い自然世界。空飛ぶクジラもいればサメの形状を併せ持つ恐竜もいたり、RPGだったら終盤じゃないと話にならないって感じのモンスターで溢れてます。
・大輪大陸:中央の南に存在する、大陸単位で測れば1番治安が安定している世界。毘華との性格の違いは世界の秩序を保つ「天王」と極めて繋がりの深い歴史がある故、とか話し始めたら長いので割愛します。
筆者は既にこのあたりで心が折れかけています。